テールアルメの安定計算
 

 これは、控訴審が始まって当初、D社があまりに簡単に、「もともと地耐力はあった」とか、「降雨で地耐力が減少した」とか、云うので、彼らは一体「地耐力」というものを、どうやって求めるのか知っているのか、疑問に感じたのである。そこで、改めてテールアルメの安定計算を行い、地耐力をどうして求めるかを示す。なお、最近はコンピューターで全て計算してしまうのだが、コンピューターで出来るのは、設計基準が想定しているモデルのみであって、それを外れると手計算で行わなくてはならない。
 なお、本テールアルメの設計そのものは、平成3年頃に実施しているはずなので、それに合わせて、単位は慣用単位系としている。


1、断面・形状

1.1)設計条件
               H=14.000m
               B=12.000m
               q=1.0t/u
1.2)土質条件
               テールアルメ      ρ=1.8t/m3      ρsat=2.0t/m3
                             C=0.0t/u       φ=30゜
               上載盛土        ρ=1.9t/m3      ρsat=2.0t/m3
                             C=0.0t/u       φ=30゜
               背面土          ρ=1.8t/m3      ρsat=1.9t/m3
                             C=0.0t/u       φ=30゜

1.3)土圧係数
               テールアルメ背面にクーロン土圧を作用させる。(道路橋示方書)
               

                               φ=30゜、θ=0゜、δ=φ=30゜、α=0
                              KA=0.297 (電算より)
               


2、検討ケース
(水圧、土圧)

ケース @ A
模式図
摘要 地下水位 無し 中間(鑑定で想定したケース)


(基礎地盤の条件)    @無処理
                A砕石置き換え


3、検討内容
                    1)転倒
                    2)滑動
                    3)支持


4、外力算定
4.1)重量及び水圧
1)ケース1
  @  A@=2.0×14.0=28.0u                     W1=1.9×28.0=53.2t/m 
  A  AA=1.978×(14.0+15.099)/2=28.78u           W2=1.9×28.78=54.68t/m 
  B  AB=8.022×(14.0+1.099)=121.128u            W3=1.9×121.12=230.14t/m

2)ケース2

(重量)
@  A@=2.0×(11.8+10.55)/2=22.35u                  W@=1.9×22.35=42.465t/m
@´ A@´=28.0-22.35=5.65u                        W@´=2.0×5.65=11.30t/m
                                        計 W1=53.765t/m

A  AA=1.978×(10.55+10.639)/2=20.96u              WA=1.9×20.96=39.82t/m
A´ AA´=28.78-20.96=7.82u                       WA´=2.0×7.82=15.640t/m
                                        計 W2=55.46t/m

B  AB=8.022×(10.639+6.099)/2=67.14u              WB=1.9×67.14=127.56t/m
A´ AB´=121.12-67.14=53.98u                     WB´=2.0×53.98=107.96t/m
                                        計 W3=235.52t/m

(水圧)
    〇背面水圧         ua=ρw・(h2/2)2/2=1.0×(9.0/2)2/2=10.125t/m
    〇底面水圧         ub=B・ρw・(h1+h2)/2=12.0×1.0×(2.2+9.0/2)/2=67.2t/m

4-2)地盤反力の算定

(1)ケース1
    ○土圧
                    PH=ρ・Ka・H2/2+q・Ka・H
                      =1.9×0.297×(14.0+1.099)2/2+1.0×0.297×(14.0+1.099)
                      =64.325+4.484=68.81t/m
    ○荷重集計

NO W(t/m) x(m) Mr(t・m/m) PH(t/m) r(m) Mo(t・m/m)
上載荷重 1.0×8.022=8.022 3.978+8.022/2=7.989 64.09
@ 53.2 2.0/2=1.0 53.2
A 54.68 2.0+1.978/2=2.989 163.44
B 230.14 3.978+8.022/2=7.989 1838.59
土圧 68.81 (14.0+1.099)/3=5.03 346.32
346.04 2119.30 68.81 346.32

                     之=346.04t/m        熱r=2119.30t・m/m

                     禰=68.81t/m         熱o=346.32t・m/m

    ○合力の作用点
                     d=(熱r+熱o)/之=(2119.30+346.32)/346.04=7.13m              

(2)ケース2

    〇土圧
      ・A〜B
                    PA1=ρ・Ka・H2/2+q・Ka・H
                       =1.9×0.297×(6.099)2/2+1.0×0.297×6.099
                       =12.276t/m

     ・B〜C
                    pa1=ρ・Ka・H1+q・Ka
                      =1.9×0.297×6.099+1.0×0.297=3.739t/m
                    pa2=pa1+ρ・Ka・H2
                      =3.739+(2.0-1.0)×0.297×9.000=6.412t/m

                    PA2=H2・(pa1+pa2)/2=9.0×(3.739+6.412)/2=45.68t/m

   〇水圧
                    ua=10.125t/m

   〇荷重集計

NO W(t/m) x(m) Mr(t・m/m) PH r(m) Mo(t・m/m)
上載荷重 1.0×8.022=8.022 3.978+8.022/2=7.989 64.09
@ 53.715 1.0 53.715
A 55.46 2.989 165.79
B 235.52 7.981 1879.69
PH1 12.276 9.0+6.099/3=11.033 135.44
PH2 45.68 9.0/2=4.5 205.56
水圧 10.125 4.5 45.56
352.73 2163.29 68.08 386.56

  

                     之=352.73t/m        熱r=2163.29t・m/m

                     禰=68.08t/m         熱o=386.56t・m/m

    ○合力の作用点
                     d=(熱r+熱o)/之=((2163.29+386.56)/352.73=7.23m      


5、安定度照査
 5-1)転倒について
   (1)ケース1
                    e=B/2-d=12.0/2-7.13=-1.13m
                        B/6=2.0>|e|=1.13m                                ・・・・・・・OK
   (2)ケース2
                    e=B/2-d=12.0/2-7.23=-1.23m
                        B/6=2.0>|e|=1.23m                                ・・・・・・・OK
                   

 5-2)滑動について
                    Fs={C・B+(V-U)tanφ}/禰        
                        ここで Fs;安全率(常時 1.50、地震時 1.20)
   (1)ケース1          之=346.04t/m         廼=0.0t/m           禰=68.81t/m
        ○無処理      
                    C=1.0t/u  、  φ=27゜   、   B=12.0m
                    Fs={1.0×12.0+(346.04-0.0)tan(27゜)}/68.81=2.74>1.5             ・・・・・・・・OK
        ○砕石置換     
                    C=0.0t/u  、  φ=40゜   、   B=12.0m
                    Fs=(346.04-0.0)tan(40゜)}/68.81=4.22>1.5                     ・・・・・・・・OK      
   (2)ケース2           之=352.73t/m         廼=67.2t/m           禰=68.08t/m
        ○無処理      
                    C=1.0t/u  、  φ=27゜   、   B=12.0m
                    Fs={1.0×12.0+(352.73-67.2)tan(27゜)}/68.08=2.313>1.2            ・・・・・・・・OK
        ○砕石置換     
                    C=0.0t/u  、  φ=40゜   、   B=12.0m
                    Fs=(352.73-67.2)tan(40゜)}/68.81=3.481>1.2                    ・・・・・・・・OK   

 5-3)支持について
 5-3-1)地盤反力
                    qmax
                           }= (V/B)・(1±(6e/B)
                    qmin     

   (1)ケース1
                    qmax                                     45.13t/u
                           }= (346.04/12.0)×(1±(6×1.13/12.0) =  {
                    qmin                                     12.54t/u
   (2)ケース2
                    qmax                                     47.47t/u
                           }= (352.73/12.0)×(1±(6×1.23/12.0) =  {
                    qmin                                     11.32t/u

5-3-2)地盤の鉛直支持力

 (1)計算モデル
   無処理の場合についてのみ求める。

                                    図5-1
(注)砕石置換の場合は、傾斜地盤で、水平方向の複合地盤についての古典解はない。RBSM、BEMのような離散化解によらなければならない。

 (2)計算式
  傾斜地盤上の基礎故、Meyerhof式による。              
                   Qd=C・Ncq+ρ・B・Nγq/2                           ・・・・・・・・・・・(5・1)
                     ここで   Qd;傾斜地盤上基礎の極限支持力度(t/u)
                            C;地盤の粘着力(t/u)
                            φ;地盤の内部摩擦角(゜)
                            ρ;地盤の密度(t/m3
                            H;斜面高(m)
                            β;斜面傾斜角(゜)
                            Df;基礎の根入れ深さ(m)
                            B;基礎幅(m)
                            Ncq、Nγq;支持力係数

 (3)初期物性値、計算条件の設定
   図5-1のとおりとする。地盤の強度(C、φ)は土塊強度を与えるべきであるが、これは今回求められていない。鑑定安定計算で逆算した値は、あくまですべり面強度であり、土塊   強度よいは小さい。しかし、今回は安全側に考えて逆算強度を用いる。

 (4)支持力係数の設定
   Meyerhofによれば、斜面上基礎の支持力係数は図5-2のように与えられる。

                                    図5-2
     (4-1)Ncqの設定
            安定数      Ns=ρ・H/C=1.8×6/1.0=10.8>5
            従って図5-2(a)より、最低値として
                      Ncq=5.53

     (4-2)Nγqの設定
        NγqはDf/B、φ、βの関数である。図5-2(b)でDf/Bの2種類、φ〜Nγqの関係は3種類しか示されていないので、これらを内挿、外 挿して求める。
        β=25゜について
        図5-3はDf/B=0、1に対する、φ〜Nγqの関係を示したものである。

                                    図5-3

         φ=27゜について
         図5-3より      Df/B=0で      Nγq=3
                     Df/B=1で      Nγq=20
         これより図5-4の関係を得る。

                                      図5-4

            根入れ比         Df/B=3.0/12=0.25
            図5-4より         Nγq=7.4

 (5)極限支持力の計算
   (ケース1)地下水位無視
         ρ=1.8t/m3として式(5・1)より
         Qd=1.0×5.53+1.8×12.0×7.4/2=85.45t/u

   (ケース2)地下水位考慮
         ρ´=1.8-1.0=0.8t/m3
         Qd=1.0×5.53+0.8×12.0×7.4/2=41.05t/u


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