続発する建設災害

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 大阪府守口市水道管敷設工事での出水事故。当初直径1.2mの管というので。多分推進でやって、地下水が流入したのだろう、原因は帯水層に薬注をやらなかったか手抜き、と思っていた。ところが続報を見ると、管の長さは1㎞、深さは24mということだ。これは推進ではない、多分ミニシールドだろうと思ったら、案の定某報道でシールドでやっていたことが分かった。
 ミニシールドというのは何10年か前には流行ったが、今ではあまりやらない工法。そもそも労働衛生安全上問題のある工法なのである。掘削径が1m前後なら他に推進工法があるが、これは1スパンの推進長はせいぜい数10m、深さもせいぜい数m。立て坑と立て坑の間を繋いでいくものだから、何かあっても対策はしやすい。
 一方ミニシールドは内部空間は推進と同程度だが、シールド機能を備えているから、より深い深度や長区間推進を可能にする、というのがメーカーの売り。しかし推進工法並みの狭い空間で長いトンネル。日常の監理も大変だが、坑内で何か起こったとき、直ぐ駆けつけることもできないし、簡単に退避もできない。そのため次第に流行らなくなったのだろう。
 それが突然、大阪でゾンビのように復活した。水道管だから、管径はせいぜい400mm。通常のシールドなら最低でも直径は2m。そんな贅沢はできん、と誰かが云ったのではあるまいか?その結果ミニシールドのようなゾンビ工法が復活したのである。こういう事故を防ぐには、厚労省が人間が入るトンネルの最小径は2m以上とし、それ以下は労災協議は受け付けないとか、自治省が救急隊員が入れる空間を確保するよう各自治体に通達を出すとかしなければ直らない。
 なお今回の事故はシールドシステムのどこかに欠陥が発生し、被圧地下水の流入を押さえられなくなったのだろうと考えられる。大阪は地下水くみ上げ規制以来、地下の被圧水圧は上昇している。その点を守口市もゼネコンも見逃していたのだろう。今回の事故も、工事個所の地盤の特性を無視したために起こった、誤った工法過信の一例である。
 大阪府守口という沖積軟弱地盤化下のトンネル工事だから、地盤調査は少なくとも30m級のボーリングを少なくとも10 箇所程度はやらなくてはならない。無論土質試験や被圧水圧測定は必須。地層の連続が不確かな箇所があれば更に追加する。この結果で適正なトンネル位置(深さ)を設定し、その上でトンネル工法を検討する。要する費用はざっと1000数100万。地盤調査に1000万!などと、アホな土木屋は腰を抜かすだろうが、今回の事故は業務災害だから後から請求書が消防署から回ってくる。それだけでなく労基や警察の聞き取り、事故再発防止計画書の作成・協議、工事再開までの時間ロスを考えれば、1000万円など安いものだ。
(21/12/17)

 12/1に岩手県宮古での国道工事で発生したトンネル崩落事故。NHK始め大手のマスコミは殆ど報じていません。ゼネコンか、あるいは国交省からストップがかかったのか?
 それはともかく、筆者が小学生ぐらいの頃、トンネル落盤事故はしょっちゅうあった。それが40年代後半あたりからめっきり減って、トンネル工事の安全性は大きく向上した。ところが最近再び事故が増加する傾向が見受けられる。これはなぜか?
 最近日本鉄鋼業会が、最近頻発する製鉄所内死亡事故原因にかんする調査報告書をまとめた。挙げられた原因の一つに(過去に行われたリストラにより)、技術の継承が失われた、というものがある。
 これは土木の世界にも共通する。中でもトンネル工事というのは過度の職人的性格を有する。そこにリストラが導入されれば、結果は鉄鋼業界と同じである。
(16/12/04)