基礎工法色々

技術士(応用理学) 横井和夫


 

 事業拡大のため盛土をしようとしたが軟弱地盤のため工事中断の茨城県龍ヶ崎市の「道の駅」。背景は牛久沼。このあたりの埋め立ては利根川改修工事に伴って江戸時代からこな割れており様々な軟弱地盤対策工法が用いられている。中には「人柱」という物凄いのもある。
 ことの発端は、ネット情報によれば、竜ケ崎市が「道の駅」の拡張を諮って沼側にコンクリート矢板(コンクリート擁壁の間違いと思われる)を設置したところ上手くいかず、そこで盛土をするために大型土嚢を積んだところ不等沈下をおこしたので、工事中断」に追い込まれたということらしい。要するに軟弱地盤対策を怠ったため生じた行政上のチョンボである。
 こういう問題を作った原因は事業者(行政、コンサルタント、ゼネコン」)に
 1、地盤に関する基本的知識がなかった
 2、軟弱地盤対策に関する見識、基礎的知識がなかった。
 3、それにも関わらず工法だけに過大な期待をもっていた。
1、当該地の地盤について
 千葉県北部から茨城県南部にかけての利根川流域一帯は、日本有数の軟弱地盤地帯ということはいわば世間の常識である。竜ケ崎市と牛久沼がどういうところかを見てみよう。下図左はYaphooMapによる牛久沼の位置である。写真から見て、「道の駅」予定地は概ね、図の×印のあたりでしょう。これでは地形がよくわからないので、空中写真で見たのが右の図です。牛久沼の右岸から何と南東に台地(図のPll)が広がり、そn南西には平野(Al)になっています。前者は鮮新~最新世の台地、いわゆる関東ロームや洪積世の地層からなります。後者は沖積平野ですが、これの出来方を分かっていないと、今回のようなチョンボをおかします。

   
図1-a  図1-b 

 この平野は、約2万年前の氷河期に、形成された深い谷を埋めて出来たいわゆる「溺れ谷」と云われるものです。2万年前の氷期には海水準が世界平均で約200m低下したとされます。そうすると海岸沿いには深い谷が形成される。その後の温暖化で海水面が上昇し、谷に様々な土砂が堆積し、谷が埋め立てられるこれが「溺れ谷」です。では溺れ谷の地盤はどうなっているでしょうか?図-2はその典型的な断面です。


図ー2

 

 これらの内、いわゆる軟弱地盤とされるものは上位の河成層+海成層で、その厚さは日本では概ね20~30m程度です。更にその最上部に分布する「河成層」は特に軟弱なので注意が必要になります。図-2の河成層の中央を形成するのは現在の河川の氾濫に伴う自然堤防の堆積物で、主に緩い礫や砂から構成されます。その周囲には洪水による泥が堆積します。主に粘土やシルトからなります。そして関東や東北裏日本、北海道などの地域では、最も新しい寒冷期の影響でその中に未分解の有機質土(俗に泥炭と呼ぶ)が分布することがあります。これは含水比が数100%に及ぶ・・・・言い換えれば土の中で土の実質部は数分の一しかなく、他は水・・・ものもあります。こんなところに大型土嚢を載せれば、そのままずぶずぶと沈んでしまうのは当たり前。
 江戸時代、関東平野では利根川や荒川等の改修にともなう河道付け替え工事で、新規の堤防が沢山作られた。その中にこういう泥炭土への盛土も行われたが、ある日盛土をして翌日行くと盛土が泥の下に沈んでしまっている。こういうのを「お化け丁場」という。これに対して考案されたのが下図に示す「粗朶敷」や木杭である。


 

現代ではそれらを現代化したものが多い。たとえばソダ敷きにかわるジオテキスタイルとか、木杭に代わるCCPなどの地盤改良工法である。

   

あるいは発泡スチロールやヒューム管を利用した軽量盛土というのもある。要するにいくらでも対応法はあるということだ。茨城県にはそんなことを提案できる人材もいないということか?これでは「地方創生」が思いやられる。
(19/05/26)

   大分前から我が家の近所で家の解体・整地工事をやっていたので何かと思っていたら、本日基礎工事が始まりました。CCPによる地盤改良です。マシンはクローラータイプのオーガーモール。
 このあたり軟弱地盤(沖積層)が20~25mほどありますが、地下5~6m程に砂層が分布している。戸建て住宅の場合それを支持層として、鋼管杭とか写真のようなCCPによる改良杭で基礎を作る。昨年の大阪北部地震でもこのあたりで被害が出た例はないので、多分これで大丈夫なのでしょう。
 なお高槻市ではこれが標準工法。地域によってはこれもやらないところが多いのではないか?一戸建てでも、軟弱地盤ではこの程度はやるように。
(19/01/25)
  昨年新名神で起こった橋桁落下事故直後の写真。このほどやっと施工した横河Bの現場所長を在宅起訴。理由は中央の架台基礎の不等沈下と架台の傾斜への対策を怠ったというもの。
 現在の仮設工事では架台には傾斜計が設置され、傾斜は基準値を超えると、コンピューターと連動して警告音が出たりする。それに従ってジャッキを操作して姿勢を修正するのが普通。
 おそらく前日には警告が出ていたのだろう。ところが、桁はすでに併合直前に達しており、工期も迫っているので、「エイこのまま行け「ということになったのだろう。この場面を支配するのは、科学的データではなく、昔ながらの職人的3K(カン、ケイケン、キアイ)である。これではいくら事前に地盤調査をしても、精密な計測を行っても何にもならない。現在テレビで流行っている日本ホメ番組で、やたら職人のカンを持ち上げるのも、この傾向を助長しているのではないか?
(18/07/27) 
    これはある展示会場に現れたサイレントパイラー。油圧で鋼矢板を圧入する装置。ネット(アホのサンケイ)では、これを国土を守る切り札だと、ベタ褒め。大方メーカーから幾らか貰っているんだろう。
 どんな機械にも適用範囲というものがあって、これも例外ではない。細かい理屈は省略するが、圧入力を大きくしても、地盤の圧入抵抗力がそれ以上あれば、肝心のクイが座屈する。こんな大型機でも、粘性土でN値10以上、砂質土で20から30以上は、施工が著しく困難か無理。抵抗力を弱めようと、振動やジェット噴射などを併用すれば、周辺地盤を緩めてしまう。
 問題は工事を発注する役所がアホで、メーカーの宣伝をそのまま受け取ってしまい、不適格な設計をやってしまうことである。サンケイはまさにその愚行を、自ら行っているのである。
(18/05/15)