基礎工法色々

技術士(応用理学) 横井和夫


 旧海軍呉工廠の発掘調査で現れた機械工場基礎。基礎形式は所謂「ラップル基礎」と呼ばれるもの。支持層が直接基礎とするには深く、クイ基礎を用いるには浅いという中途半端なケースに用いられる。最近では基礎の施工法も発達して、あまり用いられなくなったので、珍しいからコピーしておきました。建築オンリーで土木では使わない。だから土木屋にラップル基礎と云っても「何ですか?それ」と聞き返される。
 ラップル基礎といえば、今から40年程昔、姫路獨協大学開発工事の件で、大林組本社(当時は御茶ノ水の「龍明館」)に行ったとき、建築の構造設計していたのが、建築課長でロンドン大学留学経験者という人物。相当の切れ者らしく、周りはみんなピリピリしていたが、何故か筆者はそういうコワモテ人間と馬が合うらしく、話があってしまった。そしてオッサンは「独協大本館基礎はラップル」でやるんだ」と息まいていた。ラップル基礎というとそれを思い出す。
(23/10/25)

 昨日福岡県桂川町の国道に落下した鋼管(報道では「土管」などと云っているのもいたが、最近のマスコミは土と鉄の区別も出来ないのか)。これはCD工法に使うケーシングです。CD(ケーシングドライバー)工法とは、大口径の鉄筋コンクリートクイを造成する工法の一つ。大規模構造物の基礎クイとか地すべり抑止クイに用いられます。
 CD工法は上のような鋼製ケーシングを大型油圧ジャッキで地中に押し込み、その中の土をハンマーグラブという掘削機で排除する。これを繰り返して大口径の立て坑を掘って、その中を「鉄筋コンクリートで充填してクイを作る工法。ケーシングは側面の土砂崩壊を防止する。
 大口径の現場造成杭には他にベノト工法とかアースドリル工法等がありますが、これらは直径が1~1.5m.。今回の落下物の直径は3m、全然スケールが違う。
(23/04/29)

    大分前から何かやっているなと思っていたJR高槻駅裏の再開発現場。写真は大口径ボーリングマシン(BH工法)による現場造成グイ用の削孔。写真右中央はボーリングマシン本体。利根のTHLマシンか?。右下に杭用の鉄筋籠が見えます。杭径は1.5m程度。削孔はトリコンタイプのローラービットで、ユニックの向うにそれが見えます。杭長は分からないが、この辺りなら20から25m位でしょう。
 ここには以前駅から商店街に下る階段があった。これを潰して何かをしようというのだろう。周辺を取り壊したので、筆者が昔から行っていた蕎麦屋がなくなってしまった。
(22/04/26)
 


 昨日夜半の地震で脱線が生じた東北新幹線、新白石ー蔵王間の高架橋。この区間の新幹線は比較的古く、昭和50年代の施工ではないかと思はれる。阪神淡路大震災で新幹線だけでなく鉄道高架橋にも被害が出、その後耐震補強が行われた。但しその補強は主に水平動に対するもの。他の映像を見ると、高架橋軌道が上下に波打っていたり、柱の根元で破損し鉄筋がむき出しになっているなど、阪神淡路大震災とよく似た現象が見られる。
 それとこの区間、ひょっとすると、蔵王トンネル手前の「国見高架橋」*ではあるまいか?だとすると、あのあたりの地盤は、火山礫からなる薄い砂礫層と、腐植質の粘性土の不規則な互層(どっちみち蔵王火山の火砕流堆積物)が延々と続き、まともな支持層がない。高架橋基礎は40mほどのベノト杭**を打っているが、支持層が薄いもので殆ど摩擦グイのようなもの。静的鉛直支持力は筆者が計算し、杭の載荷試験もやっているので間違いはない。震源が比較的近いことから設計想定以上の強い鉛直動(又は衝撃波)が働いたと思われる。
*筆者が仙台に転勤したとき、最初に係わった土質調査物件。国鉄の担当助役が面白い奴で、元請けゼネコンはしょっちゅう怒鳴られてびくびくしていたが、筆者とは妙に気が合った。
**この施工に使ったのがKATO50THという国内最大級のベノトマシーン。リース料が一日1千万とか言っていた。
(22/03/18)
 その後調べてみると、この高架橋は「国見高架橋」ではなく、仙台側のようです。どんな基礎をやっていたかは私は関知しません。「国見高架橋」でも、たまたま新幹線列車が走っていなかっただけで、列車が走っていたら同じようなことになっていたでしょう。
(22/03/20)


 これは中国山東省の金鉱山で起こった落盤事故で、閉じ込められた抗夫救出作業。三軸のボーリングマシン(日本でいえばSMWのような)で600mの立て坑を掘って、抗夫を引き上げようとするもの。
 それはそうと山東省に金が出るとは知らなかった。母岩は多分花崗岩。山東省に花崗山という山がある。そこが花崗岩のタイプになる。
(21/01/20)



 先日我が家の近所で見かけた、ある基礎工事。この辺りは地下5~6mぐらいまでが淀川の氾濫による泥土.その下に2~3mの砂層があり、更にMa13海成粘土が20mぐらいまで続く。
 この工法は上の泥土を対象に、オーガーで掘削し砕石で埋め戻し砕石パイルを作っている。イメージとしてがグラベルドレーン工法である。転圧していないから複合地盤にはならない。当然建物加重で沈下する。グラベルドレーンは、もともと液状化防止が目的だが、この地層は液状化しない。砕石パイルは剛性が小さいから、地震の揺れの抑止には寄与しない。一体何のためにやったのでしょうか?アホな建築士が、いい加減な業者に騙されただけではあるまいか?

(16/07/18)