ゾンビ或いは浮遊霊と化したコイズミ自民党


 そろそろ、平成16年7月参院選の総括をしましょう。
1、ゾンビ或いは浮遊霊と化したコイズミ自民党

 まず最初に断っておきますが、選挙とはどんな民主主義国家でも、ハンデなし正々堂々のマジ勝負では無い、ということです。選挙制度そのもが政権党にとって、有利なようにできているし、選挙のタイミングも、政権党の都合が良いように設定出来る。何よりも、選挙直前に、政権党に有利になる・・・国民を甘い幻想に誘う・・・政策を乱発できるのが強みである。従って、選挙では、政権党が勝って当たり前、引き分けでは、負けたと同然と見なされるのです。では、今回の参院選で、政権党である自由民主党が、どれだけのハンデを手に入れたかを整理してみましょう。
1)一週間前の当落予測
 投票一週間前、マスコミ各紙は、一斉に自民不利、或いは自民惨敗という当落予測を報道しました。この当落予測は、結構投票行動に影響を与えます。私の経験では、与党不利という予測が出ると、残り一週間に巻き返しをはかり、逆転するケースが多かったように思います。この報道が投票二日前だったら、どうにもならなかったかもしれない。一人区では、14勝どころか、一桁に転落し、比例区では200万票位は失ったかもしれない。しかし、一週間と、いう時間は、体制を立て直すには十分な余裕です。これを利用して、自公共闘が強化され、自民票の公明へのバーターなど、議会制民主主義ではあってはならないことが、堂々と行われたのです。日本では、TVは親政府、新聞は反政府という傾向があります(理由は、TVは放送免許権で、政府に首根っこを押さえられているから)。この件は、新聞が与党に対し、大きな支援を行ったと同等の価値があります。
2)曽我ファミリー報道
 某新聞は、07/09曽我ファミリー面会を、露骨な選挙利用と非難した。しかし、そう言った本人が、9日から11日まで、連日曽我ファミリー報道を繰り返していたのだから、説得力はない。この例のように、9日から11日までのマスコミ各紙及びTVのニュース・ワイドショーは曽我ファミリー報道一遍道だった。この宣伝効果に比べれば、コイズミ主演の自民党コマーシャルは屁のようなモノ。100万は稼げたはず。自民党は、自分に有利なハンデを演出し、それをマスコミから与えられたのです。
3)選挙報道
 新聞もTVも選挙中は、各党首脳の行動・言動を逐一報道します。それを見ていると、ある方式があることに気がつきました。先ず、報道の順序は、自民が最初で、次いで、民主・公明・共産・社民の順になる。報道対象も、自民以外は、党首だけに限定されるが、自民に関しては、安部やその他が現れることもある。新聞でも、報道は上の順序で、報道スペースも自民が最大で、以下順次小さくなる。こういうことは、別に法律にも規定されているわけはなく、各社が勝手に気を遣っているだけのことです。つまり、ここでも自民党は、有利なハンデを与えられている。
4)社会保険庁民営化
 投票の間際になって、うすら馬鹿(頭の外見だけじゃなく、中身も)の坂口が、社会保険庁の民営化を唐突に言い出した。社会保険庁といえば、年金を預かる役所。その積悪によって、最近極めて評判の悪い役所です。これを廃止して、全く別の役所(例えば、社会保障省のような)を作るなら話は判るが、これは単に頭をすげ替えるだけで、中身は何にも変わらない。道路公団改革と全く同じ。これも投票間際になって、今一支持が伸び悩むので、コイズミに頼まれて、出してきた猿知恵だろう。これもハンデを自分に有利に出来るテクニック。
5)橋本1億円献金疑惑
 日本歯科医師会連盟から、橋本龍太郎の一億円の小切手が渡った、という疑惑です。ここでは渡ったかどうか、橋龍がそれを知っていたかどうかは検討しません。但し、橋龍は知っていたに違いない。それはさておき、問題は、これが選挙後の07/14に、明らかになったということです。検察もマスコミも、何故ここまで黙っていたのでしょうか。もし、これが、投票前に報道されて居れば、これはコイズミに直接関係は無いとしても、自民党にとっては大きな痛手で、いくら自公共闘とトップが騒いでも、創価学会の末端が動かなくなる可能性が大きい。そうなれば、選挙結果はどうなっていたか判らない。コイズミは検察にも助けられている。但し、対応如何によっては、今後の内閣支持率に影響する可能性はある。

 以上挙げたように、コイズミ自民党は、様々なポジテブハンデを自ら作り出したり、まわりから与えられたのです。にも拘わらず、民主党に1議席差を付けられてしまった。事実上の敗北です。なお、全議席数で上回っているから、敗北ではない、などととぼけた事をいっとるが、三年前の選挙など何の意味もない。何なら、全議席改選をやってみればどうなるか?コイズミの首は一度に吹き飛ぶよ。もし、本気で負けていない、と思っているなら、自民党は当にゾンビ又は浮遊霊と化したのだ。何故、こんなことになったのか。巷間云われているように、自民党の下部組織が機能しなくなったのだろう。三年もの改革・・・つまり公共事業費の削減・・・で地方ゼネコンや建設関連業はガタガタ。動きたくても動けない。自民党議員も、公認を受けたいから、コイズミ改革支持のポーズを採るが、内心はもう改革は御免、というのが本音だろう。これが選挙活動に現れて、一週間前の選挙結果予測に繋がったのだ。最早、自民党内部でも民心はコイズミから離れている、と見るべき。それが判らないのは、本人とタケナカ、安部ぐらいじゃないのか。タケナカも、あるいはゾンビ人間かもしれない。彼は、最早時代遅れのマネタリスト。世界の趨勢は急速にグローバリズムから遠ざかっている。アメリカでも、秋の大統領選挙で、ブッシュ当選の芽は小さくなっている。ケリーが当選すれば、彼はこれまでの経済政策をあらため、保護貿易主義を採るだろう。イギリスもそれに習う可能性は大きい。その結果、中国の経済成長は急停止。この時、一周遅れで、グローバリズムに参加した日本は、ノーガード。ドウするんでしょうね。

2、辻本清美について
 辻本清美は何だかんだ謂われながら、72万票を取った。彼女の選挙報道で特徴的なのは、マスコミのバッシングである。よく見られたのは、天王寺の駅前で、彼女にイチャもんを付けるオッサン、オバハンである。おそらく、自民・公明の秘密工作員だろう。これまでイロイロ批判があっても、立候補する候補者に対し、あのような光景まで報道する例は無かった、と記憶している。そもそも、辻本は衆議院が大阪10区だったから、北大阪の摂津で強い。南の政治的後進国である河内・和泉では弱いのだ(なにせ、河内・和泉は自民・公明の支持母体である同和の本拠地、大阪府議の半分は同和だ)。自民・公明・マスコミを動員してのキヨミバッシングにも拘わらず72万票。河内・和泉でもっと得票出来れば、可能性は十分あった。もし、彼女が比例区で立候補しておれば、単純得票数だけで云えば、タケナカを抑えてのトップ級当選もあり得たのだ。

 さて、今後の展開だが、自民党では現執行部の責任論を必死で押さえているが、早くも首相のお膝元の森派内部で、若手から責任論が出始めている。九月の党・政府人事、秋のアメリカ大統領選挙の結果、それと先に挙げた橋本1億円闇献金問題の対応を誤れば、秋から年末にかけて、内閣支持率が急低下する可能性が大。現在、衆参両院で、連立与党は多数派を占めており、今後3年間は国政選挙の予定はない。だから、コイズミ政権は安泰だ、と云えそうだが、本当にそうでしょうか。
 日本は、憲法上2院制だが、実は3院制なのだ。もう1院は何かというと、マスコミである。マスコミによる世論調査の結果が、結構内閣の運命を握っている。内閣が任期満了までに潰れるケースはよくあるが、選挙で負けて退陣したのは、1998の橋本内閣ぐらいで、後は党内の政争か、内閣支持率の低下が原因である。後者の最近の例は、竹下・宮沢・宇野・森がそうである。大体、内閣支持率が20%前後になると、内閣総辞職は秒読み段階、20%を切ると、内閣を維持出来ない。上に挙げた各内閣は、経世会の全面バックアップを受けている。それでも駄目なのだ。コイズミ内閣の支持率は10数%位が公明による支持だろう。そう考えると、概ね内閣支持率が40%を切ると危険ラインであり、30数%が限界ラインと見られる。この場合、何をするか予測出来ない首相のことだから、年末或いは、来年あたり解散総選挙の芽もないとは云えない。


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