コロンビアの金鉱山
14/05/02

横井技術士事務所
技術士 横井和夫


 昨日南米コロンビアの違法金鉱山で崩壊事故が起こり、30人ほどが生き埋めになったという報道。南米金鉱山とはどういう状況か、とネット(Jiji.com)でみてみました。


これは救出状況を不安げに眺める鉱山関係者でしょう。写真の上半分は赤いラテライトの様な土壌(火山灰質土の可能性もある)が堆積し、その下は黒灰色の地層になっています。この地層の中には点々と礫状の様なものが見えます。両者の境界には何か異質な地層が見えますが、これが何かは写真からでは判りません。群衆がいる台地の下は尖った出っ張りになって、その左右に凹状の窪地が見られます。これが崩壊跡でしょう。

 斜面下部で働くバックホウ。おそらく遺体捜索をやっているのでしょう。周囲に見られるのは未固結の砂礫層。

 斜面の低地と思われます。男が一人いますが遭難者でしょうか?テントがあるので、一人で砂金掘りをやっていたのかも知れません。見たとおり、この鉱山の地山は未固結の砂礫、それも河床礫です。それは礫がみんな丸みを帯びていることから判ります。丸みを帯びると言うことは、運搬の過程で衝突を繰り返し、角が摩耗した証拠です。又、礫径が不揃いなことから、この礫層は中下流ではなく、上流の扇状地堆積物と考えられます。なお礫を詳しく見ると、殆どは掘削によって破壊されていますが、写真左上の礫の配列を見ると、僅かにインブリケーションが残っている箇所もあるようです。山勘的に云うと、この礫層を作った古水流の方向は、写真左から右方向と思われます。河床の年代は具体的な資料はありませんが、日本の類似地層と比較すると、せいぜい数万年といったところです。

 金(金属)鉱床には概ね次のようなタイプがあります。
1、岩脈型の接触交替鉱床(スカルン型);地下の岩盤に岩脈が貫入してきて、両者の接触部に重金属が濃集するタイプ。甲州金山や鹿児島の菱刈鉱山、生野鉱山、世界遺産の石見銀山もこのタイプ。
2、火山型熱水鉱床;火山活動で、地下から熱水が上昇し、熱水中の重金属が岩盤の割れ目に濃集・沈着するタイプ。佐渡金山が代表。
3、層状海底熱水鉱床(キースラーガー型);堆積層の中に、それと整合的にAu・Ag・Cu・Pbなどの重金属が濃集する地層が挟まれていることがある。これの成因は永年不明とされてきたが、1980年代以降の深海探査により明らかになった。太洋に於ける中央海嶺では火山活動が活発で、マントルから重金属を含む高温熱水が吹きだしている。これが海流に乗って周辺に拡散し、海底に堆積する。これが生物作用により濃集したものである。日本では四国三波川帯の別子鉱山や、秋田の黒鉱鉱山などがこれに該当する。
4、団塊鉱床(ノジュール型);プレートサブダクション帯にしばしば見られるもので、要するに玄武岩の塊である。連続性はなく、いきなり現れる。但しMn、Ni、Crなどの重金属を高品位で含む。金も含まれる事がある。日本では丹波マンガン鉱床があるが、大戦中に掘り尽くされ、現在稼鉱している鉱山はない。
5、堆積鉱床型;後背地に上記1〜4に該当する鉱床がある場合、或いは花崗岩バソリスなどの低品位でも金を含む巨大岩体がある場合、浸食でそこから発生した金が下流の扇状地の下部に堆積する。これが更に再浸食により河床表面に現れると所謂砂金になる。19世紀末〜20世紀初頭の北米・アラスカのゴールドラッシュを支えたのは、この種の堆積鉱床である。日本で最初に金が採れた奥州黄金沢もこのタイプである。なおこの種の鉱床には、しばしばウランが伴うことがあります。
 写真を見ると、鉱山の地山は未固結の河床礫層である。従ってこの鉱山は5、堆積鉱床である。では何が問題かと言うと、上記1〜4までのタイプはいずれも不規則に変化する鉱脈を追跡しながら掘っていかねばならない。これには豊富な経験と熟練した技術が必要である。一般に坑道掘削となるので危険を伴う。従って、これは限られた技術集団の独擅場になる。一方5、は金鉱床さえあれば、後は只単に掘っていけば良いだけだから、誰でも参加出来る。極めて民主的なシステムだ。しかしそこに落とし穴があるのだ。この民主主義を動かす原動力(現代ではモチベーションと云う)は欲望である。欲望には限度はない。だから幾らでも深く掘っていく。採掘量を増やすには採掘面積を最大にする必要がある。そのために、掘削斜面勾配も限度一杯まで急にする。ところが、斜面が安定を保つためには高さ・勾配に一定の限度がある。これは地山の強度から決まる。この限度を超えると崩壊が発生する。自然は人間の欲望に、何時までも付き合ってくれないのである。まあ命を的のバクチだ。
 そしてこの誰でも参加出来るという民主主義がもたらしたものは、ヨーロッパによるアジア・アフリカ・中南米の植民地化です。しかし、日本は近世以降、鉱山業への一般参入を禁止した。つまり今で云えば岩盤規制である。これは一般には豊臣家や徳川幕府による鉱山利権独占体制のためと云われるが、このお陰でヨーロッパ資本の参入を阻止出来、幕末・明治以降も独立を維持出来たのです。それに引き替え、規制を全くせず、外資のやりたい放題にさせた、アフリカ、東南アジア諸国は、みんなヨーロッパの植民地になってしまった。

 では日本にはこんな砂礫層はないでしょうか?金があるかどうかを別にすると、例えば関東平野の武蔵野台地とか、北関東の利根川上流域、甲府盆地。西日本では濃尾平野北部、京都府福知山盆地などが挙げられます。甲府盆地など、近くに甲州金山があったのだから、深く掘ると砂金が見つかるかも知れません。確かに富士山周辺は資源の宝庫とも云えるのです。
 なお、金鉱脈には上に挙げた5類型だけでなく、埋蔵金、裏金融鉱床、タックスヘヴン経由の隠匿鉱床、ビットコイン鉱床など様々なバリエーションがあります。
(14/05/02)