紀ノ川水管橋落橋と対策


 先週突然落橋した和歌山市の紀ノ川水管橋。原因不明とされていましたが、その後の調査でアーチの一部に腐食跡が見つかり、部材の腐食・経年劣化が原因と判断されたようです。さてここでまたまた出てきたのが「最近の定期点検では異常は見つからなかった」という言い訳。この言い訳は東名「日本坂トンネル」天井落下事故や大阪北部地震での高槻市小学校の塀倒壊事故でも繰り返されています。
 点検といっても、目視とか棒でポンポンと叩いた程度。こんなもので中の状態が分かるわけがない。国交省などが出す点検マニュアルでは目視検査→簡易検査→詳細検査という順序を踏む。目視の結果次第で次の流れが変わるのだから、これは非常に重要で、構造物の内容を熟知したベテランがやるべきだ。
 ところが実態は真逆で、高槻の例では、建築に全く素人の教育委員会の木っ端役人が棒で叩いただけで「問題なし」と判定し、結局は女子児童の死に繋がっている。構造物の初期点検には、もっと最新技術を取り入れた抜本的な発想の転換が必要である。
 なお水道管は水道法により、原則地下埋設が義務付けられている。紀ノ川を地下で横断するならトンネルだ。沖積地盤だからシールド工法になる。今なら泥土圧とか泥水加圧で対応可能となるが、この事業が行われたのは48年前1973年。この当時はこれらは未だ未成熟。和歌山県の能力では無理だ、と建設省がウンといわなかったのだろう。
 おまけに紀ノ川横断部の地盤は砂が多く、しかも地層の側方変化が激しく複雑だ。現在でも薬液注入などの補助工法を併用しなければ、絶対安全とは云えない。今でも結構難しい工事になるだろう。筆者ならどうするか?ポイントは緩くて、複雑な沖積層を避ければよい。沖積層の厚さは、この辺りでは20~25mぐらい。その下には必ず洪積世の砂礫層が分布する。その下には硬い粘土層があるはずだ。この粘土層をシールドのキャップロックとし、トンネル天端をここに設定する。概ね深さ35~40mとなる。いささか竪坑が深くなるが、現在ではこの程度は十分可能。しかし竪坑工事でも水対策は重要。要するに、水を送るためには水と戦わなければならない、ということだ。
(21/10/09)