NZークライストチャーチ地震あれこれ

 ニュージーランドの地震。犠牲者には申し訳ないが、はっきり言って大した地震ではない。地震エネルギーは1997兵庫県南部地震の約1/30、死者の数も同じくおおよそ1/30。この原因は震源が浅かったので、地表面での震災地域が、非常に狭い(おそらくクライストチャーチ市内のその又一部)地域に限定されたためでしょう。警察が被災地域をシャットダウン出来たことだけでも、被災地域が狭かったことが判ります。
 但し、昨年9月のM7.0地震との関連が重要で、一つの断層が時間を置かずに、別の部分で破壊する例。これはよくあるので、今後メカニズムの研究が進むでしょう。

ュージーランドの活断層地形はここをクリック

 これが一昨日地震が発生したNZクライストチャーチ(画面中央の白い部分)とその周辺。日本で云うと宮城県太平洋岸に似ています。中央右下の半島が牡鹿半島で、その周辺の平野が仙北平野とか仙台平野。画面中央下に潟と砂嘴が見えます。その背後の平野はかつては全面湿地帯。軟弱地盤の典型です。クライストチャーチの街はこれの上にあり、これでは沈下や液状化が起こっても不思議ではない。
 本日夕、破壊したキングズエデユケーションが入っているビルの様子がテレビで放映。地震直後の垂直動で縦方向に圧壊したと見られる。コンクリート塊や壁にも、殆ど鉄筋が入っていない。構造的に問題が大きい。違法建築か?施工の手抜きか?
(11/02/24)



 キングズエデユケーションのあったCTVビルの崩壊原因については、今後調査がされるでしょうが、今建築サイドから有力視されているのが「中央のエレベーターホール部分を中心としたねじれ崩壊」説。何故ねじれが発生するのか、それがよく判らない。ねじれが発生する原因を考えてみましょう。
1)ねじれというのは一種の回転運動だから、水平方向の地震力が関係したのか?それはあり得ません。今回の地震はクライストチャーチのほぼ直下で発生しています。この場合は、鉛直方向の力が卓越するので、水平方向力は無視出来る。第一、エレベーターホールの左右で、地震力の方向が異なる事などあり得ない。
2)エレベーターホールの左右の棟で、重心の位置がずれていた。例えばプロペラは、軸の左右の羽根の重心をずらすことによって、軸に平行に入ってくる風から回転力を得る。これと同じ理屈で、同一構造物で重心がずれていた処に、鉛直方向の強い力が作用すれば、固定軸の周りで、ねじれのような回転現象が発生することはあり得る。しかし、左右対称に作った建物で、重心をわざとずらすと言うことがあるだろうか?建物が一体の設計なら、常時エレベーターホールに偏荷重が懸かることになるから、構造的には不利になる。又、それぞれの棟を分離しておけば、重心がずれていてもねじれは発生しない。
3)倒壊した部分の外側には細い柱が立っている。この柱の一部が破断すると、そこに荷重が集中し、次々に倒壊が伝播する。トラスの場合は十分あり得る。これも見かけ上ねじれ崩壊である。只、あの柱は建物の骨組み構造だろうか?単に廊下を支えるだけの補助構造物ではないか?と言う疑問もある。つまり、廊下と建物本体が、片持ちバリ形式なら、柱が折れても建物本体には影響は無いのではないか?という疑問である。
4)エレベーターホールを中心にねじれが発生したなら、ホールの壁にも、それに付随した剪断性のクラックが発生してもよいと思うが、テレビ映像を見る限りそのような傷は見あたらない。
5)ある報道では、敷地が3mほど沈下したと云われる(数字は眉唾だが、それはともかく相当沈下したのだろう)。敷地の範囲を何処まで指すのか判らないが、事故後の映像を見る限り、建物周辺地盤が沈下を起こした様には見えない。沈下を起こしたとすると、建物部分に限られると思われる。そうすると、問題は建物基礎及び基礎地盤の問題になってくる。クライストチャーチ市内の地盤は液状化を起こすような軟弱地盤である。しかし、これの下・・・おそらく地下20〜30m・・・には必ず堅固な支持層がある。倒壊しなかったエレベーターホールは、これに達する支持クイで支持されていたと思われる。一方倒壊部分は、・・・3m?も沈下したのだから・・・支持クイ基礎ではなく、ベタ基礎或いは摩擦クイ基礎だった可能性が考えられる(不等沈下を避ける為のコマ型基礎もあるが、似たようなもの)。この場合、地震直後に液状化が発生すれば、地盤支持力は大きく減少するので、瞬間的に建物は落下する。トラス系ならこの段階でバラバラになってもおかしくない。イメージ的には下の画のようなものか。


 つまり、基礎構造や基礎地盤の特性を考慮に入れると、必ずしも「ねじれ破壊」を想定しなくても倒壊メカニズムを説明出来るのである。
(11/03/07)


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