「鞆の浦」海上架橋問題について・・・・民意の前に冷静な技術評価を

しかしよく考えてみると、常識的には当初の計画段階で、海上埋め立て案の中で、橋梁案に対して沈埋トンネル案も比較検討されたはずである。これが出来ていないとすると、広島県の常識を疑わざるを得ない。沈埋案の方が工費を別にすると、環境負荷・景観の点で有利になるのは決まっている。おまけに世界文化遺産登録という必殺技まである。にも拘わらず、何故沈埋トンネル案が消されたか?その背景に三菱重工とか日立造船といった県内造船(橋梁)メーカーの圧力の存在を疑わざるを得ないのだ。
(07/05/20)

 5/15毎日新聞朝刊掲載の「記者の目」鞆の浦架橋計画について、技術者の眼から批評を加えてみよう。記者は本計画を取材し、問題点を指摘し、意見を述べている。その中で山側トンネル案を検討の対象にするよう求めている。そこで、山側トンネル案が技術的に合理性を有するかどうか、一応地形図で調べてみた。トンネルというものは、その両側に入り口・・・抗口と呼ぶ・・・がなくてはならない。問題は合理的な抗口が選べるか、選べたとしてもその結果としてのトンネル延長が経済合理性を有しているかどうかである。トンネルルートは当たり前だが、現在の「鞆の浦」市街地を避けた形で計画しなければならない。まず鞆の浦地区(国土地理院1/25000地形図「鞆」参照・・・当然記者はこの地図をみていると思います。見ていなければこの件について議論をする資格はないでしょう)を見ると、南側抗口については、「平町」付近の斜面になるでしょう。これも現道と近接しているためアクセス区間を含めて検討が必要。問題は北側抗口。一つの案として(A)御幸町西の東西性の谷の南斜面が挙げられるが、ここも現道への接続区間について家屋の立ち退き・土地収用が必要。更に谷の西側に学校があり、交通安全の点から地域の反対が強く、まず無理。これでもトンネル延長は約1.5qになる。次はトンネルを更に山側に振って、(B)グリーンライン沿いに設定し、市街地北辺の老人ホーム西斜面に出る案である。この場合はトンネル延長は約3.5〜4.0qになる.。工事費としては約70〜100億円ぐらいになるでしょう。(A)(B)の中間に抗口が設定出来ないかとお思いでしょうが、残念ながらこの間は現道との間に家屋があり、土地収用が難しいことと、斜面の多くが地すべり性であり、地質的に抗口として適切な場所が見あたらない。おまけに既に整備済みの海岸道路を捨てることになる。事業費や補助金を注ぎ込んできた、県や国にとって到底呑める案ではない。    
 以上のことから山側トンネル案は事業として成り立たないという結論しか出てこない。どうしてもやれというならやらないでもないが、その場合は著しい技術的・経済的不合理を伴ってしまう。後世に対する恥さらしになりかねない。
 個人的に云えば、橋のデザイン次第だが、海上架橋案でも構わないのではないかと思う。スレンダーな橋が優美なアーチを描けば、それはそれなりに新しい景観をつくることになる。一度そういう情景を想像してみれば良いでしょう。どうしても、海上架橋が受け入れられないとすれば、架橋部を沈埋トンネルにする手もある。架橋に比べれば工費は遙かに高くなるが、海岸道路をそのまま生かせるので、国や県も相談に乗ってくるかもしれない。山側トンネル案よりは現実的な案と思われる。ひょっとすると広島県や国交省はこの線で計画の見直しをやっているかもしれませんよ。
(07/05/18)

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