2022'トンガ沖噴火

技術士(応用理学) 横井和夫


 昨日噴煙をあげたイタリアエトナ火山。エトナ火山といえば「フニクリフニクラ」で有名な観光地ですが、ヨーロッパでも有数の活火山。ハワイと同じ玄武岩質で、大量の溶岩を吐き出す。溶岩流の方向も大体わかっているので、今では溶岩を誘導する人工河道も作られている。
 今回の噴火は噴煙が大きいのが特徴。噴煙の白い煙は水蒸気、黑い煙が火山放出物。つまり水蒸気爆発。先月のトンガ沖噴火を下から見ていると思えばよい。
(22/02/23)

最近噴火を開始したインドネシアジャワ島ムラビ山。昨年のスメル山に続いて、ジャワ島では噴火が相次いでいます。インドネシア政府は首都をジャワ島からスラウェジに移転すると発表しました。その背景にはこの相次ぐ火山噴火があるのかもしれません。
 マグマの性質はスメル山と同様、デーサイト質と見られます。トンガ沖に比べ遥かに危険です。早急の避難が必要です。なお名前はスメル山がヒンズー的なら、ムラビ山はなんとなくイスラム的でもある。
(22/02/05)

 今世界で珍妙かつ有害な情報・・・というより、風説・妄説・・・が飛び交っています。それは今回のトンガ沖噴火で今後数10年間に渉って地球は寒冷化し、食料・燃料不足に陥るというもの。これをまき散らしているのはバックにメジャーがいる投機屋。彼ら曰くこの結果石油はバーレル500ドルまで行くだろう、と。
 イラク戦争の時にも同じような石油投機ブームが起こり、一時はバーレル200ドルなんてことを叫ぶのもいた。しかしその年の秋、リーマンショックが起こって石油は暴落。一時はバーレル30ドル割れ寸前までいったが、年末にイスラエル軍がガザに侵攻して反転。たちまち倍近くまで戻した。これはメジャーとイスラエルとブッシュ政権が企てた”やらせ”だろう。彼らの本音は、何か事を大げさにふくらまし、市場を煽って価格を吊り上げ、その後売り抜けて稼ぐというもの。当然その後は価格は暴落。馬鹿を見るのは何時も一般投資家だ。
 それはともかく、以前にも言っているが今回のトンガ沖火山噴火による気候変動はあり得ません。それはこの噴火が玄武岩質だからです。この種の噴火は火山放出物の量も少なく、放出範囲も狭い。最初の衛星写真で巨大白煙が巻きあがっているのを見て、これを巨大噴火と見た人もいるだろうが、これは殆どが水蒸気です。火山噴火としては中級程度で大したものではない。
 但し今後寒冷化が起こる可能性はあります。その原因はトンガ沖ではなく、昨年末のインドネシアスメル火山噴火です。といってもせいぜい2~3年の話、数10年なんてことはあり得ません。ネットやメデイアにはとんでもない情報が流れているので気を付けた方が良い。
 それにしても今回の噴火でつくづく感じたのは、学者の無責任な放言である。火山噴火ならまず最初に判断しなければならないのは根源マグマの性質。これは最初の噴煙や火山放出物の色。これで殆ど海洋性の玄武岩質か大陸性の安山岩ーデーサイト質かが判断できる。そのあとのストーリーもほぼ自動的に決まってくる。ところが最近の火山屋はその点を無視し、岩石等の地質学的背景は無視か後回し。やたら規模がでかいとか、空振がどうとかそんな本質を忘れたくだらない理由で、危機ばかりを煽る。誰とは言わないが、学者としての矜持が疑われる。今の火山学者は地質学・岩石学をやらないのだろうか?
(22/01/30)


 筆者は今回のトンガ沖噴火を玄武岩質噴火とし、全てそれを前提にして議論を進めている。現地に行ったこともないのに何故そんなことを言えるのか?と思う人がいるかもしれないが、分かる人には分かるのである。
 高校で地学を履修したことがある人なら、「アンデサイトライン」という言葉を知っているはずだ。これはユーラシア大陸島縁から太平洋西縁にかけてのマグマの性質が、大陸寄り(ラインの「内側)では安山岩ーデーサイト質、太平洋側(外側)では玄武岩質に分かれる境界である。トンガ列島はこの外側に位置している・・・やや微妙ではあるが。この点から今回の噴火が玄武岩質と予測される。
 しかし例外もある。そこで他の証拠を探すと、三日ほど経ってネットに出てきたのがこの写真である。街全体が茶褐色に染まっているが、これは火山灰の影響である。噴火が安山岩ーデーサイト質なら、火山灰は微粉状の火山ガラスが主なので、日本でいえば桜島噴火のように白ー灰白色になる。インドネシアスメル火山が当にそれである。ピナツボやクラカトアもこのタイプ。トンガの場合、茶褐色になっている。これは火山灰の中に鉄やMgを含むためで、マグマが苦鉄質つまり玄武岩質であることを示す。
 それは別に、デーサイト質火山灰は軽く、粘り気もないので高圧洗浄で簡単に飛ばせるが、玄武岩質火山灰はデーサイト質に比べ、重く粘り気が大きい。従って、その除去は簡単にはいかない。日本では余り経験がない。今から40年近く前の三宅島噴火が玄武岩質だった。その経験が生かせれば幸いだ。
(22/01/21)

  アメリカの情報会社が撮影した噴火2時間後のトンガ沖噴火の火山島。両端に島が二つ見えますが、元々は一つの島。両端に小高い丘があり、中央に火口丘があった。今回、その火口部分が海没してしまった。海没部をよく見ると、海面が盛り上がっているようです。ただし陸地との境界が直線的すぎる。もし噴火による大気圧上昇で海面が低下すれば、両端陸地の境界は写真のように直線ではなく、マグマの噴出経路を反映して、もっと凹凸に富んだものになるはずです。
 その下には何があるのか?。筆者は巨大陥没孔が出来て、そこに上から崩落した岩石が貯まっていると予想していますがどうでしょう・・・・あるいは高温で岩石の大部分は蒸発しているかも・・・、今後の調査に期待したい。島の周りに白く波が泡立っていますが、これは島から遠ざかっている。これが津波です。この原因は中央の海没部における海面の盛り上がりと考えられます。
 なお今回の噴火で、数年後には地球は冷却し食糧不足になると云う妄説が流布していますが、筆者はそれは採らない。その理由は今回の噴火が玄武岩質だからです。この種の火山放出物は重いのであまり高くには上がらず拡散範囲も狭い、せいぜい数100㎞といったところ。但し別の原因で寒冷化が生じる可能性はある。
 よく引き合いに出されるのは1991ピナツボ火山噴火だが、性質がまるっきり違う。むしろ昨年末のインドネシアスメル山噴火がピナツボタイプ。これらはデーサイト質で噴煙の大部分は微細な火山ガラス。これは軽いからなかなか落ちてこない。太陽光を長期間にわたって反射する。長期的な寒冷化をもたらすのは、スメル山噴火の影響のほうが大きいでしょう。
(22/01/20)

 本日の報道によれば、トンガ沖火山噴火の前後で、元々あった島が海中に没したらしい。なんだ実際は海底火山ではなく、火山島だったのだ。マスコミはもっと言葉の使い方に気を付けなくてはならない。それそうと、火山島が全て海没したとすれば、噴火によって地下には相当大きな陥没孔が出来たはずだ。まさか大気圧で島が沈んだとか、衝撃波で島が吹き飛んだというわけではあるまい。そうでなければ津波など生じるわけがない。
 つまり陥没孔に対して、島を作っていた岩石や海水が落ち込む。陥没孔の底はまだまだ熱い。海水は急膨張し、海面に盛り上がるとと同時に、岩石を巻き上げる。落ち込む岩石の振動、海水面の盛り上がり、これこそが今回の津波の原因である。衝撃波だとか空振など、取るに足らないトカゲのしっぽの様なもの。トカゲに限らず、生き物は胴体を見なくてはならない。
 今後噴火した火山島周辺に対して、海底地形がどうなっているか、火山島の地質構造、地熱構造がどうなっているか、が調査されるでしょう。その中には当然海底資源も関連してくる。早く手を打たないと、うっかりしているとその内中国が手を出してくる。
(22/01/18)

 トンガの海底火山噴火で津波が生じ、それが数1000㎞離れた日本やアメリカ西海岸まで届いたというから驚き。筆者もこういう現象は耳にしたこともないし、どういうメカニズムか分からない。気象庁が頭を抱えるのも無理はない。この現象に大阪の橋下は「メカニズムは高汐と同じ」とのたまううからまたまた驚き。気象庁が理由はわからないというのを大阪の一弁護士がシャーシャーと解説する。橋下信者はこれを信じてしまうだろう。まさしくネット社会の恐ろしさだ。
 高汐と津波は全くメカニズムが異なる。だから発生する現象も異なる。海水面の潮位は一日に2回満潮と干潮を繰り返す。これは太陽、地球、月の位置関係で決まる。又気圧による変動も加わる。高気圧の時は海面は押しつられるから潮位はさがり、低気圧の時は逆である。たまたま強い低気圧が現れると潮位の上昇は大きくなり、それと満潮が重なるともっと大きくなる。これが高汐である。つまり高汐は局所的な気圧の変動で生じるものであり、それがしばしば陸上に押し寄せるのは風の所為である。そもそも高汐は只の表面の変動だけだから、水は川を遡上したりしない。一方今回の地震では沖縄や東北でも、川の遡上が見られた。明らかにこれは津波である。
 津波はこれと異なり、多くは海底地形の急激な変化に伴い、水の塊が移動するのである。だから川の遡上もあるし、波の押し引きもある。海底地形の原因は幾つかあるが、」代表的なものはプレートの跳ね上がり、海底地すべりである。今回の件で跡に述べるが、筆者は海底火山噴火に伴う海底下の陥没孔形成を挙げておきたい。なおそれぞれで発生する地震波周期も異なるはずなので、これらを比較すれば発生原因を特定できるだろう。今回の津波メカニズムを知ろうと思えば、海底火山の噴火メカニズムを知らなければならない。火山噴火とは、地殻に貯まった熱と物質が、急激に大気中に放出される現象である。
 まず熱の作用を考えてみる。下は01/15噴火の衛星画像である。

中央に白い雲の塊があるが、これは噴火の熱で海水が蒸発し水蒸気になったもの。その周囲に褐色の環が見える。これが火山弾や火山灰からなる火山放出物である。太平洋の独立した海底火山の多くは、海底から4~5000mもの高さがある。今回噴火した火山の規模も同レベルと考えられる。その一部が噴火で放出されたとしてもその領は莫大で、その跡には巨大陥没孔ができる。そこへ大量の海水が流入するが、マグマはまだまだ冷え切っていない.。数1000゜Cの高温だから海水はたちまち膨張し海面は盛り上がる。盛り上がった海面は重力で一旦低下するが、再びマグマで加熱され盛り上がる。これを何度も繰り返す。これが津波の基である。更に海面j上部は高温の水蒸気となって膨張し周囲の空気を圧縮する。これが空振である。空振そのものは陸上火山噴火でも知られていたが、海底噴火で観測されたのは、おそらく今回が初めてだろう。
 一方物質はどうなるか。火山噴火生成物は大きく溶岩と火山性砕屑物に分けられる。海底火山の溶岩は陸上と同じ斜面を流かするが、急激な温度と圧力変化で特有の岩石を作る。一つは内部からガスが噴き出し、内圧が低下して内部に向かって破壊が進むもので、「急冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)」と呼ばれる。もう一つは溶岩が団塊上に固まって集積するもので「枕状溶岩(ピローラバー)」とよばれる。これらは日本でも各地にみられる。
 では写真や映像でよく見られる海面から高く立ち上がった噴煙を形成するものは,、「火山砕屑物」と呼ばれる。大洋底で出来る火山は大抵玄武岩質だ。これらは結構重いのでそんなに遠くまでは跳ばない。大部分は山頂から数10㎞の範囲に収まり、火山斜面の上に堆積する。これが地すべりを起こすと、また別の津波を起こす。こういう玄武岩質火山岩は昔は輝緑凝灰岩(シャールスタイン)で一括されていたが、今ではそうではない。現在では緑色岩と呼ばれる。
 これは別にして、海底火山活動で形成されたと考えられる岩石が、都会でも見ることができます。それは大阪梅田、駅前第三ビル地下街から地下鉄東梅田駅に続く地下道の壁石にこれが使われている箇所があります。それは石灰岩のかけらを含む玄武岩質の凝灰岩。無論何時何処で出来たかわ分かりませんが、今から2億数千万年前のテチス海で出来たと思うと面白いですねえ。
 なお今回の噴火が収まれば、おそらく各国が調査に乗り出すでしょう。そのとき日本が如何に有利なポジションを占めることができるかが重要です。これは今後の海底資源開発、海洋戦略にとって重要な意味を持ちます。うかうかしていると中国が手を出してくる。今の政府にそこまで見通せる能力があるでしょうか。
(22/01/17)