断層と温泉

 温泉を掘りたいが、堆積層がなかったり、薄かったりするときはどうすれば良いのでしょう。
この時は岩盤の中の断層を狙う他はありません。

 断層は、地殻の中に強大な力が作用して、岩盤が破壊されることにより発生します。岩盤が破壊する現象は、つまり地震です。地震によって、断層の周りに、大小多数の割れ目が発生します。すると、その割れ目に向かって地下水が浸透してくるので、断層の周りには、鉛直方向の帯水層が形成されます。地下深くになると、この地下水の水温も、温度勾配に従って高くなるので、温泉が形成されるという訳です。又、花崗岩のような深成岩には、ウランやトリウムと言った放射性物質が僅かでも含まれています。これらが壊変する過程でラドンが形成されます。ラドンは通常は気体で、断層粘土に吸着されます。ラドンが壊変すると、ベータ線やガンマ線が放出されます。その結果、ラドン泉のような放射能泉が形成されることもあります。


 断層とは

 断層とは、地殻の中に生じた、割れ目の内、地層・岩盤に何らかの変位を与えているものです。しかし、どんな変位でも構わないわけではありません。ある程度の大きさを持つことが必要です。どのくらいの大きさなら、断層と云うのでしょうか。これには、特に明確な規定はありません。地質家の判定に任されるのです。しかし、それはあんまりにも勝手な話です。一般的には、地質図の作成に使う地形図で”マッパブル(表現可能)”と言うのが、一つの目安になります。

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温泉が出る断層

 断層ならどんな断層でも、断層の上なら何処を掘っても温泉になるか、というとそういう訳にはいきません。古い断層は割れ目が閉じていたり、粘土のような断層内物質が固結してしまって、透水性が低下し、良好な帯水層になりません。又、逆断層のように圧縮応力場で形成される断層では、割れ目が閉じてしまうので、これも良好な帯水層にはなりません。引っ張り応力が作用する、正断層と横ずれ断層の一部が対象になります。しかし、帯水層を作るような、新しい断層で正断層は殆どないので、結局、横ずれ断層の一部のみが、温泉開発のターゲットになります。
 横ずれ断層の周りの割れ目系は一般に下図のようなパターンを作ります(左横ずれ断層)。
 
                               

 では、これらの中で、温泉開発の可能性が高いのはどれでしょうか。

主断層 断層はシャープ 断層面に沿って、剪断力が働き、周りの岩盤が断層面を押しつけている状態になっている。取水は一般に困難
引っ張り割れ目 断層は不鮮明 引っ張り応力が作用しているので、取水の可能性大。
         雁行割れ目 断層は不鮮明 主断層との会合部では、引っ張り応力が作用するので、取水の可能性大。


 近畿地方の横ずれ断層はE-W系のものが多い。従って、これに直交するNーS系の断層が成功する確率が高い。これが無い場合は、異なる方向の断層の会合部を考える(引っ張り応力が作用する)。


断層の調査法

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