地下水の所有権

横井技術士事務所
技術士 横井和夫

 大阪府鳥飼の新幹線電車基地で、JR東海が地下水汲み上げ用の井戸を掘ろうとした。基地は摂津市と茨木市の両方にまたがっている。井戸掘削予定地点は茨木市側。茨木市はこれを許可したが、摂津市は、過去の地盤沈下を理由に許可取り消しを要求。果たして地下水の所有権は何処にあるのか?と言うのが本日毎日新聞の命題。

 地下水を地下資源の一つと見れば、その所有権は掘り当てた本人に帰属します。要するに早い者勝ちの世界である。それでは無秩序になるので、鉱山法などの法律で鉱区権とか、採掘権などの権利関係が定められいます。ところが地下水(温泉除く)はこの対象外です。つまり、計画井戸が大阪府が公害防止条例で定める掘削禁止深度外なら、なにをやっても構わないことになります。
 一般に民事係争では、訴人側に立証責任があります。つまり、この件では摂津市側がJRが井戸を掘ると地盤沈下が発生することを、立証しなければならないのです。これが現在の原発訴訟と著しく異なる点です。
 しかしだからといって、JRも知らぬ顔は出来ない。現に新幹線は摂津市内を通っているから、今後様々な点で摂津市の許可を受けなければならないことも発生する。うっかり井戸如きで摂津市と喧嘩をすれば、将来どんな嫌がらせを受けるか判らない。それを避けるためには、鳥飼基地の地下深部地盤(概ね1000m位か)を調査し、地盤沈下の恐れはないことを、データを持って説明することです。
 なお、このデータは単に井戸掘削だけではなく、将来の南海トラフ地震に対する情報を与えるから、JRにとっても損にはならない。
(14/07/29)