関電裏金事件の真実

技術士」(応用理学) 横井和夫


 八木会長他関電役員たった6人が辞表を出したが、社長は第三者委員会の報告書が出るまで居残るつもり。この点がこの会社のよく分からないところ。本来第三者委員会の調査は新経営陣の下で行われるべきものなのである。また、吉田建設から元助役に渡った3億と、元助役から関電にわたった3.2億との逆ザヤはどこからきたのか?関電は半額の1.6億を返却したというが、誰に返却したのか、本当に返したのか?残りの1.6億は何処へ行ったのか?わからないことだらけである。分かっては困る人が大勢いるのだろう。
 それはともかく森山マネーが発覚したあとの関電の対応をまとめると
1、問題の大きさ・影響を過小評価し、事態の矮小化を図る
2、問題があきらかになると、情報を小出しにして逃げ切りを図る。
3、自分を被害者として責任を部下や外部に押し付け、誰も責任を取らない。
 筆者はこれを「ガダルカナル症候群」と呼ぶ。前大戦ガダルカナル戦では、まず大本営はが島への米軍上陸の意味を理解せず、その影響を過小評価して、兵力の逐次投入という愚を犯した(上の1、と2).。
 その結果にっちもさっち行かなくなって、膨大な兵力損失の上、撤退を決意するまで半年を要している。しかし大本営作戦部で責任を取ったものは誰もいない。かの瀬島龍三や辻政信もその仲間。結局は有耶無耶だ。
 当事者の責任追及を曖昧にしたままの事業収拾では、失敗経験が後に生かされない。その結果、同じ失敗を何度も繰り返すのである。今回もそうはならないように願うが、関電という会社の体質、大阪というナアナア地域性では、また同じことをやりそうな気がするのである。
(19/10/10)

 関電の内部調査委員会の委員長が、今から10年程前に大阪地検であった証拠ねつ造事件の検事正だったらしい。この人物の部下がねつ造したのだが、それを見抜けなかったのである。退官後法律事務所を開設した典型的辞め検である。元地検検事正の肩書を利用すればアチコチからお声が懸かる。元検事の経歴を見せれば警察や検察にも青が効く。だから特に脛に傷持つ会社が集まってくる。関電もその一つなのだ。
 社会的に判断権を有する人間・・・医師とか弁護士、会計士や技術士だ・・・は基本的に依頼者の利益を契約内で最大化する義務を負う。ここで問題は依頼者の利益とは何か、だ。これは目先の短期的利益と今は明らかではないが将来得られるであろう長期的利益がある。
 企業でいえば短期的利益とは経費削減に繋がったり、売り上げ増に繋がる価値である。このためによく行われるのは下請けの買いたたき、作業手順の簡略化、製品の品質の誤魔化しである。しかしこの手のやり方はいずれは必ずバレる。
 例えばある土地開発で一部に地すべりの疑いが出てきた。これを地すべりというと、許認可や地元対策で面倒になる。そこで地すべりなんてものはない、安定した土地だ、という評価を下すのが短期的利益である。逆に地すべりの疑いがあるから十分な調査を行い、入念な対策工を提案するのが長期的利益である。
 どちらを取るかは事業者のセンス、あるいは哲学の問題である。短期利益を尊重する事業者は前者を採用するが、いざ施工となって大規模地すべりを起こすと返って対策コストが高くつく。実際にそういう例はある。
 昭和60年代、神戸市開発局が行なった木津ニュータウン開発が当にそれで、筆者は東急不動産の依頼で地質調査を行い敷地東端に断層と地すべりを確認した。その後紆余曲折があって、用地は神戸市に転売された。そこに応用地質という図体はでかいがインチキ悪徳会社が現れて、筆者が確認した断層、地すべりを・・・多分神戸市の意向を忖度して・・・消してしまった。勿論、私が描いた地質図は隠蔽されています。あんなのが面に出たら関係者は大事だ。
 アホの神戸市は応用地質のインチキ報告書を真に受けて・・・というよりお互い示し合わせて・・・東端部に大規模掘削をやったところ、大地すべりを発生した。発生個所が用地内fだからよかったが、外に影響するとマスコミが飛んできて大問題になり、関係者数人のクビは飛んだだろう。ここで見られるのは、神戸市も応用地質も短期的利益を追求するあまり、市民に長期的損害を与えてしまったのである。
 要するに関電が行なった社内調査とは、ここでいう短期利益追求のためのパフォーマンスに過ぎず、関電自体に長期的利益を損なうどころか、社会的信頼失墜という長期的損失を産みだしたのである。前述の法律事務所とその代表である辞め検弁護士は、それに加担したという点で罪は重い。”士”がつく資格を持っている人は、その点をよおーく考えておくべきだ。
(19/10/09)

 ワタクシが云った通り森山マネーは福井県議会だけでなく、稲田朋美まで飛び火。なお、経産省は他の電力各社に同様の事例はないか問い合わせたが、各社ともそういう事例はないと回答。当たり前だ。万引きやったことがあった人間に、やったことがあるかと聞いても、ありますと答えるアホはいない。今頃どの会社にも週刊ポストやら朝日やらの記者が張り付いて根掘り葉掘り穿っているだろう。
 こういう国策会社を江戸時代の大名に例えると、江戸幕府はこれら大名の不正を糾すために当初服部党、吉宗以降は御庭番という制度を作って監視した。本来なら、今もこういう監察機関を作って実態を調査しなければならないのだが、今の政府はトップのアベ始め全体が経産省の息がかかってしまっているから、期待するだけ無駄だ。経産省を解体し別官庁に改編しなくてはならないだろう。
(19/10/05)

 森山元助役ルート以外の資金還流が明らかになった関電高浜事件。こんなのは氷山の一角。叩けばもっと埃が出る。高浜町議だけでなく福井県議会や永田町にも飛び火しかねない。
 筆者が当初から云っているように、元助役からのバック強要など嘘で、関電側から要求があったのだ。無論それだけではなく、アウンの呼吸で持ちつ持たれつの関係があったのだろう。この関係が何時頃から始まったのか、当の元助役が死んでしまったから正確には分からないが、おそらく相当昔、高浜立地が始まって以来だろう。
 最初はわずかな小遣い銭ぐらいだったのが、関電内の原子力部門の比重が高まるにつれて次第に肥大化し、感覚が麻痺して際限がなくなってしまった。これはよくある話で、バクチでも最初はほんの遊びだったのが、とんでもないことになってしまう。例の大王製紙アホ会長がその例。
 さて関電大株主の大阪市の松井が、今後の調査委員会のメンバーに橋下を推薦すると言い出した。早速の事件の政治利用・・・心は次の衆院選目当てか・・・である。しかし大阪市も株主なんだから関電とは一蓮托生。この問題をこれまで察知できなかったという点で筆頭株主としての責任は免れない。それと橋下は民事が専門だからこういう事案には経験不足。
 そこで筆者が押すのは、刑事弁護士である亀石倫子を押す。彼女は元検事だから不正追及には橋下より適任だ。ン、これも衆院選を睨んだ政治利用かもしれない。
(19/10/04)

 関電会長自らが原子力本部長になった2006年から貰っていたと自白。やっぱり元助役からの関電幹部へのキャッシュバックは2010年よりズーッと前からあったのだ。所得税法では、税務調査は過去7年間だけが対象でそれ以前は時効になる。税務調査が入ったのは2017年で、その前7年間は対象外。だから国税は過去7年分しか公表しないのである。従って国税公表以前に現金授受がなかったなどと甘い考えを持ってはならない。
 現金授受期間が広がった以上、その範囲も広がっていることは間違いない。現金の受け渡しは元助役が握っていたが、その原資は関電からの工事費で、それは全受注業者に及ぶ。これら膨大な業者からの裏金が元助役のところに集まり、そこからあちこちへばら撒かれる。その一部が関電幹部に流れたに過ぎないのである。
 今のところ現金授受が明らかになってるのは関電本店幹部のみだが、実際は現場の所長とか、あるいは高浜町幹部、町議会や地元自治会にも恩恵が及んでいたはずである。
 更にこれは高浜原発だけではない。他の原発立地地点も同じようなことをやっているはずだ。当たり前でしょう。高浜でこれだけ金が出てるという話はたちまち、美浜や大飯にも伝わる。当に若狭湾汚染地獄だ。ワタクシはかつて公共事業関連の仕事に関連していたが、一番油断ならないのは地元の農民、漁民である。彼らは知らない顔をして実によく知っている。例えば測量やボーリングの用地補償費でも、どこそこの工事ではこれだけ払っている、と値段を吊り上げてくるのだ。つまり、横方向に情報を交換し、この程度の工事ではこれだけ取れると研究しているのである。当に今のIT顔負けの情報収集力だ。
 まさにこれが国津神の奥義。関電は単にそれに引っかかっただけだ。なお国津神と天津神との力関係は一様ではなく、どちらかというと西高東低。特に関西・中四国がやばい。そして何故こういう癒着が発生するかというと、定期的に繰り返される選挙という名の「大嘗祭」が原因だ。
(19/09/30)

 関電高浜原発を巡る突然の関電スキャンダル。報道による事件の経緯はこうだ。
1、高浜町の建設業者から元高浜町助役に3億円が渡った。
2、この元助役から過去10年間で関電経営陣に3.2億円が還流された。
 というもの。さてここで不思議なことは、元助役が受け取った金額が3億で、関電に戻した額が3.2億。2000万円の逆ザヤが発生している。一体これは誰が負担したのか?まさか元助役が個人で出したとは考えにくい。他にも資金ルートがあったのではないか?ということは関電から高浜町の誰か(複数や団体の可能性もある)に渡った金は3億どころではなく、それより一桁大きいと考えるのが世間常識。ということは関電からこの元助役を通じて、少なくともン10億以上の地元対策費が流れていたということだ。
 そもそもこの元助役、一体どういう人物なのか?全く情報を持ち合わせていないので想像するしかない。福井県高浜町というのは、原発が来る前までは、産業としては林業と漁業しかなかった。原発だけでなく埋め立てや本四架橋など海岸・海洋工事で一番のコワモテは漁業組合である。現代の海賊みたいなもので、漁師がごねると何もできない。その代わり漁師を手なずけると何でも出来る。但し相当の実弾は必要。
 おそらく元助役は地元漁協に顔が利く・・・ということは役場にも影響力がある・・・一族の生まれだったのだろう。そう考えれば、役場に途中採用でわずか数年で収入役、助役に収まった経緯も納得できる。ということは関電が高浜に原発立地を決めた時、この助役の援助なくしては何も出来なかったことを意味する。かくて関電と元助役との癒着が始まる。地元をなだめるためには実弾が必要だ。「関電さん、もっと出してもらわんと話に行けまへんわ」てなことをいわれると、いくらでも金を出す。その代わり実際に設計や工事をやっている会社は買いたたく。金居原立地事業で、NEWJECの奴が「仕事をやっても金を払いよらん、やくざみたいなもんや(関電のこと)」と怒っていた。
 さて問題の3.2億円キャッシュバックだが、その狙いは何だったのか?関電は、地元との良好な関係を維持するための必要経費だったと説明する。それなら系列会社から払いっぱなしで構わない。ところが関電の説明では返却しようとしたが相手の強硬な拒絶に会い、単に預かっただけだらしい。誰がこんな子供だましの言い訳を信用すると思っているのでしょうか?わざわざ銀行口座を教えている例もあるから、このキャッシュバックは計画的に行われたと考えざるを得ない。記者会見をした関電社長はと見ると、なんとも貧相な顔立ちで説明も曖昧。ズバリ言えばイタチ(会長)の足元をはい回るネズミ顔。そういえば最近増えたのがこの手のネズミ顔だ。ニッサンの西川や森友学園の佐川とか、アベお気に入りに多い。アベ自身イタチ顔だから仕方がないのだろう。
 それは別にして、では何のためか?やっぱり高浜再稼働に関係しているのか?1910東北太平洋沖地震に伴う、東電福島第一原発事故で、全国の原発が一斉に停止した。原発再稼働の責任を負うのは経産省。更に12年総選挙で誕生したアベ内閣のバックにあるのは経産省とそれに指導される電力や自動車・鉄鋼業界。彼らの要望により原発再稼働はアベ内閣の緊詰の目標となった。ここでターゲットの一つにされたのが関電。そして関電が挙げたのが高浜原発。この時期から関電に経産省原子力族から天下りが増え。その代表が今の会長だ。
 どうしても高浜を再稼働しなくてはならない。その場合の最大のハードルは地元、特に漁協。いやでも元助役の助けを求めなくてはならない。そのために業者を使って工作資金を提供する。ここまでは、何処でもやっているし、誰でもわかる。
 分からないのは冒頭に挙げた通り、元助役の逆ザヤ問題。それと返却を申し出たが相手側から厳しく拒否されたという関電説明の一般常識との矛盾は未だ残るのである。おそらくこんな短文では説明できない複雑な事情が背景にあるのかもしれない。松本清張なら「平成若狭の黒い霧」という小説にするかもしれない。多分10年後だろう。なお松本清張の作品では、ことの真相を知っていそうな人間は必ず消されていく。
 話を戻す。事件そのものは、3億円の行方を巡って経営陣の特別背任に発展する可能性は大きい。それに伴い株主代表訴訟が起こるだろう。どのみち来年の関電株主総会は無事ではすまない。事実大阪市の松井は関電の責任追及と世論を煽っている。しかし関電はIR、25年大阪万博招致の最有力協力者。本気でやるわけがない。実は裏で手を握っており、ポーズだけでいずれ有耶無耶にしてしまうだろう。維新なんて所詮そんなものだ。
 そこで不思議なことは、ことがメデイアで公になるまで1年間もほおっておいた経産省の態度である。普通なら事が公になる前に、経産省OBは退職金だけもらって退職させる。何故なら問題の性質から、ことの次第は財務省から経産省に連絡が云っているはずなのだ。今回はそれをやっていない。それぐらい今の霞が関はバラバラになってしまって、情報管理ができなくなったのか?それと公になったのがアベ新内閣組閣後だったのも興味がある。何か政局と関係があるのか?
 この元助役のような存在を民俗学では「国津神(地主神)」という。これはアマテラスを頂点とする天津神がやってくる前から列島にいた神。ユング流に云えばその土地に根付いていた先住民の集合無意識の象徴である。それに対する関電はせいぜい二流の天津神・・・背後の経産省という天津神に操られているだけだから・・・である。記紀では国津神は天津神に征服されたことになっているが、事実は全く逆で天津神が国津神に吸収されてしまった*のである。随分昔だが、関電のある部署に打ち合わせにいったことがある。そこで感じたのは、この会社は図体はでかいが所詮田舎会社だなあ、ということだ。
 果たして国津神は滅亡したのか?とんでもない。現代の天津神は背広を着て議員バッジをつけて国会や地方議会に影響を及ぼし、地域の経済や行政を支配している。元助役は典型的な国津神である。うっかり国津神に逆らえば子々孫々まで祟り殺される。だから誰も逆らわない。何故かというと、ある時期から国津神は天津神(天皇)と一体化するようになった。その儀式が「大嘗祭」なのである。
 今回の関電高浜騒ぎは民俗学的には、天津神の国津神に対する敗北例の一つに過ぎない。最大の敗北は、前大戦を天津神が食い止められなかったことだろう。
*なお「靖国の神」は天津神、国津神のどちらにも属さない靖国神道というべき独特の教団に属するものである。
(19/09/28)