岸田内閣の場合

技術士(応用理学)  横井和夫


自称占い師で予言者までなった細木数子が死にました。筆者は彼女の番組など見たこともなかったので、どれほど売れていたか知らないが、全盛期には視聴率を20%も30%も稼いでいたというからすごい。これではテレビ局もヘイコラするのは当たり前でしょう。では何故こんなに売れたのか?彼女の占いや予言は本当に当たったのか?何一つデータの裏付けがないから分からない。占い師が世間で大きな顔を出来る様になるためには、次の三つの要素が必要である。
1、小さな火を大きくすること。そして僅かな救い。例えば相談者が小さな不安をもって相談に来たとする。占い師はその小さな不安を大きくふくらまし、相談者を逃げられないように囲い込む。例えば前世の因縁とか、持って生まれた運命とかである。そして最後に僅かな救いを与える。
2、断定口調。これは重要である。占い師が成功するためには、相談者つまり世間の信頼を繋ぎ留めなければならない。その時迷った云い方をすれば、たちまち相談者に不信感が生まれる。中身が幾ら空っぽでも必ず断定すること。論理的整合性などどうでもよい。大衆の深層心理にズキーッと食い込むことが重要なのである。
3、サクラ。いくら占い師で儲けようとしても、人が集まらなけりゃ何にもならない。人を集めるのに一番有効なのが”サクラ”である。夜店の見世物や昔の通天閣たたき売りでも、何か人が集まっているから少し見てみようかという気になる。それが雪だるま式に増えると儲けもの。その最初の人だかりを作るのが”サクラ”である。細木の場合、この役割を果たしたのがテレビである。そして今ではネットとSNSがその役割をになっている。
 さて細木はこの3要素を駆使してマスコミ界に君臨した。しかしこれjは細木数子の独創でも何でもない。ズーッと昔からある大衆扇動の古典的手法である。20世紀最大の扇動者はあのヒトラーとゲッベルス。そしてわが国では麻原彰晃とオウム真理教。そして今では橋下徹と”大阪維新の会”、それに連なる面々である。郵政選挙の小泉純一郎も、空っぽの内容と独断口調、テレビ利用という点で、扇動者の要因を十分満たしていた。
 さて今の日本で一番の話題は国会議員文通費。文通というから昔、青春時代の甘いロマンスの話かと思ったらそうではなく、国会議員の文書交通費のこと。今国会が開かれて維新の新人議員が”たった一日で100万円貰える”とツウイートしたのに維新が飛びついて拡散。与野党を巻き込む大騒動。昔の自民党ならそれなりの説明をして事態を収集し改めて国対協議になるはずが、今回は与党間協議どころか自民政調会にも諮らず、いきなり日割り決定。
 このように小さなことを大げさに騒ぎ立て、火のないところに煙を立て、それをネットやテレビをサクラに使って拡散し、世論を誘導する。これこそ典型的占いビジネス、夜店のたたき売り商法。占いやたたき売りに中身はない。後で偽物つかまされたとがっかりするだけだ。
 そもそもこの文通費というものは、かつての「自社さ」連立政権下での政治改革と並行して出来たもの。元々政治改革要件ではなかったが自民党が強引に押し込んだ。その後何度か見直し論があったが、その都度自民党が潰してきた曰くつきの経費である。
 なお維新は一日分の文書費をコロナ医療機関に寄付するとか、吉村は6年前の100万円受領を週刊文春に指摘すると慌てて寄付すると云ったり、ブーメラン外しに躍起だ。しかし維新はれっきとした公党であり、吉村は大阪府知事という公職にある。こういう公的地位者が第三者に寄付することは寄付行為にあたり、厳重に禁止されている。その程度は維新も吉村もわかっているはずだ。
 維新が寄付しようとしている医療機関とはどこか?まさか日大横領事件で話題になった例の錦秀会病院チェーンではあるまいな。寄付を通じて再び資金が維新にバックするケースも大いにあり得る。但し大阪の場合、読売テレビとか関西テレビのような維新シンパのアホメデイアがこれを美談風に報道する恐れはある。
 ズバリ筆者の意見を言えば、こんなものどうでもよいはなしである。たった一日でもその間に何か公的なことができれば100万円払えばよい。これは古くからの労働価値説(マルクス主義)vs付加価値説(マルサス理論)の違いのようなものだ。日割り説を取る維新は明らかに労働価値説を取っている。つまりマルクス主義=共産主義の思想なのである。筆者は維新の言い分を聞いていると、本当にこいつらの頭は大阪の中小企業のオッサンのレベルだと思った。
 筆者は昔から付加価値論者だ。下請けの見積もりを値切ったことはない。ボーリングでも飽くまで単価清算だ。その代わり要求レベルは結構高い。こっちがやることと下請け業者がやることのけじめは明確にしておく。要するにこれだけやってもらってナンボなのである。そうしたほうが下請けもやる気が出るし、仕事の準備段取りも自分の責任でやるから工夫(現代風に言えばイノベーション)も出てくる。その分、こっちの手間も省けるからコスパも上がる。それを日割りだの日当だのと言っていたらやる気がなくなってしまう。経営者が一番目指さなくてはならないのは、経営諸表の数字合わせではなく、如何に社員・協力会社のやる気・能力を引き出すかである。
(21/11/20)

 何故か日本の自民党支持率が低下すると再開するのが、北朝鮮のミサイル実験。アベ時代このおかげで自民党政権支持率は、モリかけなどで低下したかと思うと回復してきた。まるで金正恩とアベ晋三が裏で手を握っているかのようにだ。
 過去最低レベルまで支持率が落ち込んだ菅政権に変わって岸田政権が発足すると、途端に始まったのが北朝鮮ミサイル実験。これに付き合っているのか、韓国までSLBM実験。この結果、たちまち復活してきたのが「敵基地保有能力」保持論。総裁選では高市だけで岸田jは消極的だったが、衆院選自民党公約にきっちり盛り込まれた。高市(=アベ)に押し込まれたのだ。この点が岸田の限界。
 なんとなく怖いジャイアンからこうしろと脅かされると、ヘイコラと従ってしまうのび太の印象なのだ。これも育ちが良すぎるためか。戦うための基本が出来ていない。岸田の陰気なポスターを見ても、自民候補者はモチベーションは上がらないだろう。ここ1年の短期政権に終わる可能性が高い。
 なお野党は今の状態では政権交代は目指さず、自公に責任を押し付けたほうが良い。理由は台湾情勢である。もし日本で政権交代が起これば、間違いなく中国は台湾で問題を起こす。今の野党にそれに対抗できる能力はない。敢えて火中の栗を拾う必要はない。
(21/10/17)

 国会論戦二日目。初日はまあまあだったが、二日目・・・各論・・・になると途端に腰砕け。やれ金融課税は見送るとか、成長あって分配だとか、まるっきりアベノミクスの焼き直し。総選挙を控え保守派・・・細田派、麻生派・・・への気配りだろうが、背後にアベの影がちらついているのが見え見え。この点が岸田の欠点か。いざというときに踏み切れない。
 これは彼自身の性格というより、出身校である開成の校風か?とにかく東大ー官僚コースがメジャーだから、いざというときに度胸が出ないのは当然。あの与野党バラマキ批判を文春に公開した財務次官も、結局は前・現大臣のウンを貰わなけりゃ、何もしなかったはずだ。あの財務次官論文は、本人の考えというより、バックの麻生やアベの意図を受けたもの。一種のアドバルーンだよ。
(21/10/12)

 なんと岸田内閣支持率が63%%強とV字回復。それもアベシンパにして自民保守系拡声器のフジサンケイグループ調査だから驚く。フジサンケイはこれはご祝儀だ、と云うが、通常ご祝儀とは政権発足直後の数字。今回の数字は岸田が国会で所信表明を行った後の数字。全く意味が異なる。これは60年、岸から池田への政権交代を思い出させる。
 岸内閣はアメリカからオイルメジャー救済のための資源エネルギー転換を迫られ、結果として出てきたのが、原発・・・これはGE救済策・・・と三井三池争議。更に続く60年安保闘争で、遂に退陣。ライバルの池田勇人に政権を渡した。この時岸は三池争議や安保反対デモ潰しに、全国の右翼・やくざを動員した。その走狗として全体を取り仕切ったのが児玉譽志夫。両者の腐れ縁は満州時代に始まるが、岸の内地帰国で一旦断絶。総理の東条がやくざとの付き合いを嫌ったのだろう。ライバルを倒すのなら、やくざじゃなくて憲兵を使う。:戦後岸が巣鴨から出獄して再び復活。
 岸の一見理念主義・・・というより吉田松陰以来の独りよがりのバカげた思い込み、木戸、山縣に至る権力主義・・・による強引政治が、結局政権崩壊に至った。次の池田は「対話と協調」を掲げ、ライスカレー会議で世論を和らげ、「所得倍増」を掲げて高度成長を成し遂げた。これが宏池会の原点である。
 「成長より分配」は池田の「所得倍増」に、「聞く耳を持つ」というのは同じく「ライスカレー会議」に通じる。フジの世論調査結果はそれを反映したものだろう。但しこれに党内保守派は猛反発する。これに対し岸田の姿勢が揺れれば、支持率はまたユリ戻す。総選挙まであと3週間。短いようで長い。一時の油断でひっくり返る可能性は十分ある。
*やくざとの付き合いを嫌った東条が死刑で、拒まなかった岸の量刑が少なかったのは何故か?東条には思想がなく、見方によっては共産主義に近い点もあるが、岸は徹底的な反共主義者だった。当時(1948年)、ヨーロッパではソ連の攻勢が強く、ヨーロッパ共産化の恐れもあった。アメリカとしては反共主義者の岸の方が利用価値があったのだ。
(21/10/11)

 岸田新内閣発足三日目で、マスコミ各社の世論調査結果が出そろって来ました。筆者はご祝儀も含め少し甘めに55%前後と予想しましたが、やっぱりオオアマでした。朝日の45%、毎日の49%というのは、アンチ自民の両紙なら当然かもしれないが、それでも50%割れは酷い。自民応援団の読売が54%、日経の59%というのも意外。これらマスコミ各誌の調査結果は世論全体の傾向というより、購読者の支持傾向、つまり朝日・毎日はアンチ自民(リベラル)系、読売・サンケイ・日経は自民(保守)系の傾向を表す。これらの結果から、云えるのは岸田新内閣は左右両派から十分な支持を取り付けていないということだ。
 まず、岸田は当初「新しい資本主義」というフレーズを掲げ、「成長より分配を」、というテーゼで金融課税強化等アベノミクス見直し路線を示唆した。これは宏池会の伝統でもある。また一連のアベ疑惑にも「丁寧な説明を」とアベ政治との決別を示唆した。これは党内左派だけでなく、野党にもウイングを広げる効果を狙ったもの。ところが、党内右派の反発を受けると途端に「モリかけ、さくらで再調査はしない」とか、「憲法改正」、「女系天皇否定」、「敵地攻撃能力保持」等、保守派の主張を受け入れる方向に転回。これにより左派リベラルの支持を失った。
 一方、対する保守派にとってアベノミクスを否定する分配重視経済は認められないし、総裁選の土壇場に、とってつけたように打ち出した右旋回も、実際は高市のところへ行く細田派票を横流ししてもらうための方便で本心ではない、要するに信用ならん奴だ。ということで保守派の支持も上昇しない。
 おまけに新政権人事の内甘利幹事長、高市政調会長は左右両派に歓迎できるものではない。この結果、支持率が伸びなかった。世間はご祝儀相場にならなかったというが、筆者はむしろ20%程度はご祝儀はあったと思う。これを差し引けば、実際の支持率は25~35%程度。つまり菅政権末期と変わらない、ということになる。
(21/10/08)

 岸田次期内閣メンバーの名前が次第に出てきています。筆者が興味を持つのは法務大臣です。法務大臣なんていてもいなくてもよい盲腸ポストじゃないかと思う人もいるだろうがとんでもない。今年国際問題にもなった名古屋入管のスリランカ女性死亡事件。これはそもそも法務省の所管。法務大臣が馬鹿で頓馬だから、またまた日本の国際評価を下げてしまった。
 問題はそんなところではない。例のアベ晋三「さくらを見る会」事件は検察審査会の命令で東京地検の強制起訴の捜査対象。これがあるからアベは表に出てこれない。もし検察が起訴ということになれば政治生命を絶たれる。これはなんとしても防がなくてはならない。
 検察の独走を防げるのは法務大臣だけ。法務大臣に自分の息がかかった人物を押せば、いざとなれば指揮権を発動できる。思い返せば大叔父の佐藤栄作が造船疑獄事件で逮捕寸前まで行ったとき、犬養法相の指揮権発動でピンチを逃れたことがある。この手を使おう。法務大臣を使って検察をコントロールする。これこそ岸一族のお家芸。
(21/10/03)