右も左も国防問題はもっと真面目に考えましょう(日本有事対策)。

 05/30、サンプロ、「党首に聞く」。聞かれた党首は社民党福島瑞穂。田原総一郎の「何処かが攻めてきたらどうするんだ!」という、激しいが、内容空疎のでたらめ突っ込みに、しどろもどろ。これじゃ駄目だ。私なら、「一体、何処がせめて来ると云うんだ?国防というものは、その様なマンガチックな考えでは、いかん」と、とっちめてやる。大体が、最近の政治家やジャーナリストは、国防というものを、甘く考え過ぎている。
 田原総一郎の突っ込みは、有事立法に対する社民党の姿勢を糾すもの。無論、福島は非武装中立論で反論するが、反論にはならない。後ろに居た、某評論家も「そんなことだから、社民党は信用されないんだ!」と、悪のり。田原の突っ込みが、なぜ、いい加減といえるか。
 
 同日午後、8chの某トーク番組。ひまだから、たまたまチャンネルを回すと、元衆院議員中山正輝が出演していて、いきなり大きなパネルを持ち出して「@・・・2002年に、北朝鮮国防部が日本を敵国と名指しした・・・。A北朝鮮がミサイルを日本に向けて発射すると、8分でやってくる。それが判るのに4分かかる。後、4分では何もできない。・・・」。この手の挑発は三流詐欺師が、大衆相手によく使う、下等なペテンの一種である。かのヒトラーも、背中からの匕首論や、ユダヤ陰謀説を唱えて、ドイツ大衆の心を捉えていったのである。これらのペテンが、翌日成立した、有事法案を念頭に置いていることは云うまでもない。有事法案とは、「日本有事」の際の対処法を規定したもの、とされる。しかし、これは正しくない。正確には、「日本周辺有事」であり、更に厳密には「台湾有事」の際の、在日米軍の行動支援法案であると見るべきだ。ところが、将軍様のおかげで、台湾有事が、いつの間にか、北朝鮮問題にすり替わってしまった。これで一番喜んでいるのが、自民党防衛族、伊藤忠・三菱商事・重工を始めとする防衛産業。力を得たのが、中西輝政とか山拓のようなジャパンネオコン。西村慎吾やシンタローのような情緒的アホ右翼。まあ、ろくな連中じゃない。

  国防というものは、一国がその総力を挙げて、暴力を持ってする自己防衛行動である。その手段は、国際法上一定の制限はあるとしても、経済的負担に上限は設けない。つまり、結果によっては、一国の運命を左右しかねない大事業である。従ってその計画は、合理的で具体的、且つ現実的なものでなくてはならない。

従って、先ず国防計画はどうあるべきか、を述べ、次に「台湾有事」が、現実性を持っているかどうかを吟味し、最後にに北朝鮮問題を検討する。

1国防計画とは
 近代的国防(戦争)計画の始まりは、プロイセン参謀本部の大モルトケ(1800〜91)にあるとされる。1866年、オーストリアとの開戦が必至となり、いよいよ戦端が開かれようとするとき、モルトケは参謀本部の自室で、午睡を楽しんでいた。そこへ副官が飛び込んできて、「いよいよ開戦です!」と告げると、モルトケは黙って、デスクの引き出しを指さし、「戦争計画は出来上がっている。この通りにやれ」といって、再び居眠りを始めた、という伝説がある。これは、戦後プロイセン参謀本部が流した噂だから、何処まで本当か判らないが、時刻表に基づいた計画的なプロイセン軍の運動が、当時の各国軍事研究家に大きなショックを与えたことは、云うまでもない。更に、10年後の普仏戦争での、プロイセンの勝利の結果、モルトケ流の戦争計画が、国際的に軍事政策の標準となった。

 モルトケ流戦争計画の要点は次のようにまとめられる。
1)平時から仮想敵国を定めておく(数カ国程度)。
2)各国毎に、開戦から終結までのシナリオを数ケース策定し、開戦時の状況によって最も適切なケースを選択する。
3)実際の対戦国は一国に絞り、他国の中立化を図る。2正面作戦は行わない。
4)対戦国の情報を調査し、自軍にとって、最も有利な戦場を定め、そこでの会戦を敵に強要する。
 この際、例え仮想敵国であっても、時に同盟したり協商するのは、政戦略として認められ恥ではない。逆に、外交上友好国であっても、軍事的必要性があれば、それを仮想敵国に含めるのも当然である。
 周囲を数カ国と国境で接している場合、相手から攻め込まれた場合も、こちらが攻め込む場合でも、相手にする軍隊・戦場、それぞれ皆異なるから、平時からそれらに対する対処法を、具体的に定めておかなければならない。決して、何処か判らない誰かを相手に闘う、といった夢物語ではないのである。
 つまり、近代的国防計画とは、具体的に敵国を想定した上で、生じうる事態を予測し、それに沿ったものでなくてはならない。田原のように「何処かから攻めてきたら?」などという、いい加減で、無責任なマンガ的発想では、国防計画は成り立たない。このような質問は、党首だけではなく、視聴者も馬鹿にしたものと言える。福島が答えられないのは当たり前。相手はいやしくも公党の党首である。私だって、「そんないい加減な質問には、答えられない」と云うだろう。はっきり、北朝鮮とか、アメリカと云うべきではないか。
 
2、台湾有事はあり得るか!
 上で述べたように、今回の有事法案のホンネは「台湾有事」にある。従って、「台湾有事」が実際に起こり得るか、否かを十分検討しなければならない。これは、1、国防計画の具体化に関連する。又、台湾の事情は、そっくり日本に当てはまるのである。
 去る、1999年、中国人民解放軍は広東省で、、大規模な上陸演習を行った。すわ、中国による台湾武力解放の前触れか、と騒然となり、金価格が高騰した。この時、毎日新聞に中西輝政が「・・・・今や日本周辺有事という事態なのに、日本は平和に酔いしれ、危機感が足りない・・・」という意味の論文を寄稿していた。しかし、現実は彼の予測と全く逆方向に動いた。中西は自他ともに認める保守派の論客だろうが、こと実務面に関しては、知識に乏しく、想像力も欠如し、最大の欠点は歴史観が無い、ということである。つまり、二流の似非評論家ということだ。 
 結論を云うと、中国による台湾の武力解放はあり得ない。演習後、江沢民が、演習費用を聞いて腰を抜かしたという噂がある。これが何よりの証拠。中国は台湾武力解放を諦めたのである。その結果、改革解放政策に火がつき、今や日本を上回る資本主義国家になった。中国共産党は、最早中国自民党と呼ぶべきなのである。中国の路線は、経済で台湾を上回り、それを元手に国共合作を果たすということだ。
 なぜ、台湾武力解放が不可能か、政治を抜きに純軍事的に検証してみる。武力解放手段としては次の2ケースが、考えられる。
     1)第二次大戦型の通常戦による制圧
     2)核兵器による制圧
1)第二次大戦型の通常戦による制圧 
 これは、台湾海峡及び台湾島周辺の、制空・制海権を確保した後、地上部隊を台湾島に輸送し、地上戦の後に台湾を制圧するケースである。アメリカの介入が必然と考えられるため、前提となる制空・制海権の確保すら怪しいものだが、そこは奇跡を期待して、それが可能になったと仮定しよう。
 一般に堅固に防御された要塞の攻略にあたっては、攻撃軍は防衛軍の3培の兵力を要するとされる。これは陸上要塞の場合で、島嶼では5〜6培とされる。太平洋戦争中、アメリカは日本軍が守備する島嶼を攻略するために、大体日本軍守備隊の5〜6培(時には10培以上)の兵力を集中した。それでも楽勝だったわけではない。タラワ、ペリリュー、硫黄島といった激戦区では、多大の損害を出している。
 台湾国防軍の兵力は、平時で5〜60万、戦時動員を考えて、100万位と見積もる。従って、攻略側の必要兵力は5〜600万。人民解放軍の兵力は、文革時には400万位あったが、その後のリストラで、今では250万位に減少している。これでは、全然足らないので、正規軍を根こそぎ動員した上で、更に予備役動員をやらなくてはならない。そうするとどういうことが起こるだろうか。
(1)兵力の大部分が沿岸地方に移動するので、他の国境警備が手薄になり、チベットや、西域地方の独立運動が活発化するおそれがある。特に、西域地方はイスラム国家と国境を接しており、内部にもイスラム教徒が多いから、これを狙ってイスラム原理主義者が潜入する。最悪の場合、内乱に発展する。特に、西域地方は現代中国の重要な、石油産出拠点だから、この地域の治安維持は絶対不可欠であり、おいそれと兵力を削減するわけには行かない。
(2)中台関係が悪化すると、中国に進出している台湾資本が、中国側による資本接収を恐れて、海外に逃避する。すると、台湾資本と契約している、中国側企業に倒産が発生し、失業者が増大する。これは社会不安の発生要因である。無論、戦争特需で失業者は吸収出来るという意見もあるだろが、この効果も、その後発生するインフレにより、帳消しになる。
 そのような問題はなんとかクリアーして、無事台湾島に上陸出来たとする。私が、台湾国防軍参謀長なら、都市を予め破壊し、住民を地方に疎開させて、持久戦法をとる。破壊された都市の防御力の強さは、スターリングラードで実証済みである。台湾の地形は、大体が山勝ちで、平野は西海岸や中央部に限定される。つまり、大規模な機動戦の展開は不利である。この地形を利用して、ゲリラ戦を展開する。物資は日本を経由して、アメリカから無尽蔵に供給される。つまり、戦争を出来るだけ長期化するのである。中国は少子化政策を採っている。若い男子は貴重品である。親としては、息子が戦死されては困るから、脱走が流行るだろう。つまり、軍隊の士気は低下し、果たしてどの程度継戦可能か。人民解放軍は内部から崩壊するかもしれない。その内、中国国内に厭戦気分が蔓延し、それは反政府活動を産み、各地で暴動が発生するだろう。結果として、中国軍は惨めに引き上げなくてはならないのである。つまり、二次的には、次のような問題「が発生する。
(3)極端な改革解放政策のせいで、既に中国経済の需給バランスは崩れてしまっている。ここに、戦争という大需要が発生すると、インフレが発生し物価が高騰する。これも社会不安発生の一要因である。
(4)こういう事態が発生する時点では、中国元は自由化されている可能性が高い。戦争が長期化すると、元レートが低下し、金利は上昇し、インフレ加速要因になる。
 つまり、この方法は、莫大な費用と長期間を要する割に、リスクが大きく効果は期待できない。
2)核兵器による制圧
 これは核兵器で、台湾の政治・軍事・経済中枢部分を破壊した上で、地上軍を送って全土を制圧するものである。1)に比べ、短期間で済み、時間も懸からないというメリットがある。但し、核兵器及びその輸送手段は、決して安価ではないので、何処に打ち込むかは事前に綿密に検討しておかなければならない。対投資効果を考えれば、対象は台北他の都市になるだろう。問題は、破壊した後の復興である。経済基盤を元に戻さなくては、何のために台湾を解放したのか判らない。この復興には予想もしなかったほどの、コストと時間がかかるのである。
(1)まず、破壊された地域は放射能で汚染されているので、うっかり立ち入れない。一旦放射性物質を除去しなければならないが、手間・ひまを考えると、水で洗い流すのが、最も手っ取り早い。そうすると、除去された放射性物質は地下や河川に流れ込み、更に海も汚染することになる。汚染地域を拡大するのである。
(2)放射能で汚染された地域に投資する企業などない。特に環境に敏感な日・欧・韓企業は汚染物質・土壌の除去・撤去を要求するだろう。その処理費用を考えると、核使用の経済メリットは消し飛んでしまう。
(3)川・海・土壌を汚染した放射性物質は、食物連鎖により、台湾や中国近海魚介類を汚染する。健康に特に敏感な、日・韓の消費者は、台湾だけでなく、中国沿岸地方産食品の購入を拒否するので、中国沿岸経済に影響を与える。
(4)その後、住民及び進駐してきた中国軍兵士、中国人投資家等に、深刻な放射線障害が発生するだろう。イラクの劣化ウラン弾でさえ、放射線障害が疑われているのである。長期的な癌、白血病による死者は、核兵器による直接死亡者の数倍に登るかもしれない。又、その影響は、2〜30年は続く。これは、戦後の台湾復興の大きな障害になる。それを補うために、中国政府は新たな投資を行わなくてはならない。これは、中国本土の経済成長の足を引っ張る。デフレの発生である。
 核兵器使用は、一見ローコスト・短期勝負に見えるが、後の影響を考えると、決してそのようなものではなく、通常戦と同様、又はそれ以上のコストがかかるのである。
 それなら、アメリカは何故、核という選択肢を捨てないのか、という疑問が残るだろう。アメリカは核兵器を国内で使用する気はない。使用するなら、外国でだ。そして、後始末はその国か国連に任せて、後は知らん顔。広島・長崎の例を見れば十分。しかし、台湾は中国の一部(少なくとも中国はそう主張し、大部分の国は、それを認めている)だから、核使用の後始末は、自分で付けなくてはならない。
 
 以上のケースは、いずれも中国に対する国連や第三国の干渉、経済制裁などの阻害要因を無視した、中国にとって大甘の状況を想定したものである。にもかかわらず、どのケースでも、台湾への武力侵攻は、中国にとって、全くメリットはなく、負担ばかり大きい、無駄な事業であると判定されるのである。つまり、台湾有事は、何ら現実性を持たない、バーチャルに過ぎない、ということだ。何故、そうなるかというと、好むと好まざるとに拘わらず、経済のブローバル化は、通常の国にとっては、戦争をしたくても出来ない状態を作る。アメリカだけは例外とアメリカ人は思っている。しかし、アメリカだって、例外である筈はない。そして以上のシナリオは、日本にそっくりあてはまるのである。

3)北朝鮮問題
 これは裏返せば、現在日本の国防政策そのものでもある。冒頭で挙げた中山議員の口振りでは、北朝鮮がいきなり日本を敵国視し出したように感じられる。しかし、これは大嘘である。私はこのシーンを見て、この人間(中山正輝のこと)は馬鹿じゃないか、と思った。事実、馬鹿なんでしょう。あの程度の嘘で、大衆を騙せると思っているわけだから。事実は、日本は北朝鮮建国以来の敵国だったし、対日戦争計画は昔からあったのだ。これが当たり前、常識でしょう。
 北朝鮮にとっての仮想敵国は、おそらく(1)アメリカ、(2)韓国、(3)日本、(3)中国、(4)ロシア(旧ソ連)の順でしょう。ところが、韓国が太陽政策で、対北宥和政策をとってきたので、これは与しやすしと考え、日本を上位ランクに持ってきただけの話。秋のアメリカ大統領選で、もしブッシュが負けることがあれば、日本が第一位になることもあり得る(筆者はそれでも構わないと思っている。北朝鮮如きにびくびくすることはない。今のコイズミ自民党は、北朝鮮にすり寄りすぎ)。
 逆に、日本も同じ事をやって来たはずなのだ。日本の仮想敵国は、東西冷戦時代では、(1)ソ連、(2)中国、(3)北朝鮮、(4)韓国、(5)台湾。ソ連が崩壊し、中国が資本主義化した現在、これら2カ国のランクが下がり、北朝鮮が一位に浮上してきただけ。筆者個人としては、この中にアメリカを含めるべきと考えているが、外務省や防衛庁、自民党防衛族に、その気はないみたい。だから馬鹿だ、というのである。
 通常、仮想敵国とは、周囲に国境を接している国が第一の対象になる。日本を取り巻く諸国は、(1)ロシア、(2)中国、(3)北朝鮮、(4)韓国、(5)台湾、(6)アメリカの6カ国が挙げられる。
まず、ある国が何処かの国に侵攻しようとする場合、(1)侵攻が自国の国益に合致すること、(2)侵攻地を長期的に占領・管理する能力があること、(3)これらのリスクを敢えて背負う意志があることが、必要十分条件になる。上記6カ国の内、この条件を満たすのは、(6)アメリカしかない。(1)ロシア、(2)中国は、日本を物理的に占領するより、経済関係を深めていく方が有利だし、そう考えるのが当然である。更に、中国は、「台湾有事」で述べた理由から、日本侵攻の能力はない。(3)北朝鮮、(4)韓国、(5)台湾は心情的に日本に反発し、日本といずれドンパチという気持ちが無いとは云えないが、残念ながら、能力が伴わない。韓国の場合、第二次日本海海戦で、韓国海軍が全滅し、その後、海岸を日本の海上自衛隊で封鎖されれば、石油輸入がストップするので、三ヶ月でお陀仏。台湾も同様。北朝鮮など、自分の食い物すらないのだから、日本に大規模な侵攻部隊など、送り込める筈がない。送ってきたとしても、少数のゲリラ部隊のみ。政府や防衛庁のトップがうろたえず、政治家が余計な口だしさえしなければ、問題は無いのである。問題は核とミサイルである。従って、この2点について、もう少し詳しく検討してみよう。
(1)核兵器
 六カ国協議での、北朝鮮エネルギー支援に対するアメリカの主張は、現在の黒鉛炉を廃棄し、軽水炉転換に応じれば、援助を認めるというものである。この点から、北朝鮮が開発、もしくは開発を意図していた核兵器は、プルトニウム型原爆と想定される。何故、構造が複雑な、プルトニウム型を選んだかは、金正日に聞いてみなければ判らないが、(1)ウラン型原爆を作れるほど、十分な天然ウランが入手出来なかった、か(2)ミサイルの能力が不足、などの理由が考えられる。アメリカは核兵器数10発の製造に、十分なプルトニウムを保有している、と主張するが、このタイプではこれだけで、核兵器を所有していると云えない。起爆装置と、実際に起爆装置の性能を確認する、核実験が不可欠である。北朝鮮が、起爆装置の製造に、成功したという証拠は無い。少なくとも、核実験は行っていないから、核兵器そのものの保有に、疑問符が付くのである。金正日得意のブラフではないか、それにみんなが踊らされているのではないか、と。第一、プルトニウム型原爆起爆装置のような、複雑且つ高精度を要求されるものを、北朝鮮の工業生産力で可能だろうか。これらに関する情報は、全てアメリカ頼りである。アメリカもCIA情報だろうから、余計に信用出来ない。イラクの轍を踏まぬよう、もっときちんとした情報に基づく、精査が必要である。
(2)ミサイル
 北朝鮮が、中距離弾道弾程度のミサイルを保有していることは、間違いはないだろう。問題はその能力(搭載重量、射程、精度)である。かつてのテポドン騒ぎが強く印象に残っていると思われるが、筆者はあれは、ロシアが云うように、人工衛星を打ち上げようとして、それに失敗したのが真相と思う。ロケットの破片が、アメリカ西海岸にたどり着いたから、北米大陸を射程に収める、ミサイルの開発に成功した、と騒ぎ立てる輩が居るが、これこそ一般大衆をペテンにかけるデマゴギーである。丁度、イラク戦争の前に、パウエルが壊れかけたトレーラーを、移動式生物化学兵器実験室と云ったようなものである。筆者は、あれをTVで見て、何を馬鹿なことを言っているんだ、と思っていたが、案の定、今頃になって、あれは嘘だったことがばれて、パウエルもブッシュも国際的に大恥をかき、テネットはCIA長官をクビになった。日本では、コイズミがあれを騒ぎ立て、何時かのサンプロで、卑しい公明のアホ冬柴が真面目な顔をして、イラクは大量破壊兵器を持っていると、自分で見てきたような顔で喋っていた。
 テポドン騒ぎの実際は、次のようなものだったろう。人工衛星を打ち上げようとして、ロケットを発射した。大気圏外に出たことは出たが、ロケットの推力が足らないか、姿勢制御に失敗して、静止軌道に乗せられなかった。衛星は放物線を描いて、大気圏に再突入するが、この時の突入角が、屈折角より小さい時、衛星は大気によって反発を受け、大気圏上を跳躍する。誰でも、小さい時、川に向かって石を投げて、遠くへ跳ばす遊びをしたことがあるだろう。これと同じ原理で、能力を超えて、とんでもない遠くまで到達することがある。従って、テポドンの能力は、マスコミで云われているより、割り引いて考える必要がある。
 かといって、日本に北朝鮮の脅威が及ばない、と云っているのではない。数発の核(実用可能かどうかは不明)と、日本を射程に収め得る、数基のミサイルを保有していることは、ほぼ間違い無いだろう。問題は、金正日が、どういうタイミングで、こういう道具を使うかである。仮にテポドンの先端に、核爆弾が装備されており、それが東京上空で炸裂すると、東京23区は壊滅するだろう。我々関西人は、何故かざまあ見ろ、という感情の発生が抑えきれないのである。おまけに、コイズミ始め自民党も、卑しい公明党も、霞ヶ関の役人も、石原シンタロー親子も一斉に蒸発してくれるのだから、有り難いといえば有り難い。将軍様万歳だ。但し、北朝鮮ミサイルの命中精度は、我々が期待するほど高くはないし、第一核実験をしていないのだから、間違いなく炸裂する保障はない。起爆装置が作動しなければ、せいぜい落下物。
 そして、何よりもミサイルを発射した段階で、金正日の運命は決まる。ミサイルを発射した途端に、発射基地の位置は偵察衛星で補足されるから、日米の報復攻撃で北朝鮮ミサイル戦力は壊滅する。従って、次の段階として、北朝鮮軍は南北国境を越えて、南進する(1)以外にとるべき道はない。朝鮮戦争の時は、中ソからの無制限の支援を期待出来たが、今回はそうはいかない。中ロとも国境を閉鎖して、日和見を決め込むだろう。通常戦での、北朝鮮の継戦能力は、約三ヶ月と云われるから、正規戦はそこで終わり。後はゲリラ戦を展開するか、金正日一族を殺して講和を求める以外にない。この時、日・米・韓がイラクの失敗を繰り返さないよう、占領政策を慎重に行えば、北朝鮮の社会復帰は可能になるだろう。
 この程度のシナリオは、幾ら金正日でも判るだろうから、北朝鮮からの対日攻撃は、極めて考え難いのである。しかし、全くないとは云えない。北朝鮮を脱北した黄博士は、「北朝鮮のことは何でも金正日が決める」と云っている。そして、彼の生まれや育ちは、我が日本国総理大臣コイズミジュンイチローと大変良く似ている。常識というものが通じない、一種、異常性格なのだ。論理ではなく、感覚で行動するのである。我々日本人が、コイズミの次の一手を読みづらいように、金正日の次の一手も読みにくい。だから、何かの拍子に、対日攻撃を指示する可能性は、ないとは云えない。しかし、そのような偶然のために、莫大な予算を使って、対北朝鮮対策をとる必要があるだろうか。黄博士の云うように、北朝鮮が金個人独裁なら、秘密工作員を送り込んで、金正日をさっさと消してしまう方が、ずっと安上がりである。龍川爆発事件は、その類だろう。バックに居るのはCIA。相変わらず下手なやり方だ。特定船舶入港禁止法や、下手な経済制裁は、返って相手に警戒心を与えてしまうから、秘密工作がやりにくくなる。万景峯号を通じて、北朝鮮工作員が日本に潜入したり、秘密指令が行われていると云われる。もし、そうなら万景峯号こそ、北朝鮮情報の宝庫だ。万景峯号の通信を傍受しておれば、北朝鮮の通信暗号が解読できるので、日本での北朝鮮特務の活動を補足しやすくなる。スパイは泳がせておくのが常道。万景峯号が来なくなると、北朝鮮情報は、韓国かアメリカ情報に頼らなくてはならなくなる。こんな事で、日本独自の外交・国防政策など、出来る筈がない。従って、万景峯号は歓迎しても、拒否してはならない。誰が、このような馬鹿法律を考え出したのか。阿部や山拓だろう。彼らの選挙区は、山口県と福岡県。どちらも、歴史的に朝鮮半島と縁が深く、第二朝鮮と云ってよい土地柄だ。両方とも、愛国者風を装っているが、実は北朝鮮のスパイじゃないのか。
 というわけで、今我が国を覆っている、国防論は具体的に検討すると、甚だ根拠に乏しく、お粗末で、戦略性に欠けるものである。最大の問題は、いわゆるタカ派と呼ばれる、自民党国防族、自民・民主・公明の保守派若手議員、保守派の学者・マスコミなどの国防意識は、現代が21世紀という、情報・IT社会であるにも拘わらず、第二次大戦型の、力には力、数には数といった、伝統的戦術論から抜け出せないのである。とにかく、論理が粗雑で、話にならない。何時かの、あるTV(サンプロか)番組で、元統幕議長の志方某が、「北朝鮮の目的は、朝鮮半島の赤化統一である!」と怒鳴っていた。「赤化統一」、懐かしい言葉ですねえ。この人は、今頃共産主義なんてものが、生き残っていると思っているんでしょうか。今時、何処の世界に、共産主義や社会主義が、生きて居るんでしょうか。キューバぐらいか。まさか北朝鮮を、共産主義国家などと思っているんじゃ無いでしょうねえ。もしそうだとしたら、これこそ現代最大のブラックジョーク。このようなアナクロが、我が国国防政策に影響を与えているかと思うと、暗澹たる気分になる。右も左も、もっと国防というものを、真面目に考えて貰わなくて困るのである。
 


(1)北朝鮮軍が南進を開始したとして、朝鮮戦争当時のような急速な進撃が可能だろうか。韓国の豊かさに眼が眩んで、途中で戦争を止めてしまう可能性もある。1917年10月。コンラート・クラフト・フォン・デルメンジンゲン将軍の指揮する、ドイツ・オーストリア連合軍12個強襲師団が、突如北イタリアに侵攻した。イタリア軍は蹴散らされて、後退に継ぐ後退。将軍自身も、あまりの進撃の早さに、勝利が実感できず、後続軍を派遣しなかった位だ。処がこの快進撃が、ヴェネツアの手前で、突如止まった。その理由は、これまでろくな食糧にありついていなかった独・襖軍兵士が、イタリアの上手いワインやチーズに眼が眩んで、戦争よりも食糧の略奪に熱心になり、命令を聞かなくなったからといわれる。同じことは、翌年4月の、西部戦線での大攻勢(いわゆるルーデンドルフ攻勢)でも、北フランスで繰り返された。 参謀次長エリッヒ・ルーデンドルフの構想は、ロシアの壊滅で兵力が余った東部戦線から、西部戦線に兵力を転換し、ベルギー南部から連合軍戦線を突破し、パリ南方を迂回して、連合軍を包囲せん滅するという、大胆且つ壮大なものだった。緒戦は順調で、ドイツ軍は快進撃を続けたが、パリの手前で突如前進を停止した。理由は、これまで腹を空かしていた独軍兵士が、フランスの豊かなワインや食糧に眼が眩んで、皆酔っぱらい、行軍よりは食糧の略奪に熱心になって、上官の命令を聞かなくなったのである。特にアメリカ軍の豊富な糧食は、独軍兵士にとって脅威であったらしい。この報告を聞いた、ルーデンドルフは、直ちに作戦中止を命令、後は連合国との休戦交渉に入る。以上のエピソードは、リデル・ハートの著書にあるので、誇張はあるとしても、まるっきりの嘘でもないだろう。
 いや、共和国兵士は、強固な思想教育を受けているから、そんなことは無い、と言い張るかもしれないが、そんなことはあるのだ。かつての太平洋戦争中、共和国並みに強固な思想教育を受けていた、我が大日本帝国陸海軍兵士は、捕虜になって、米軍から食事(アメリカ人にとっては普通の食事。だが飢えた日本人にとっては大変なご馳走)をプレゼントされると、何でも喋った。その内、聞かれもしない情報まで、進んで提供するようになった。もっとプレゼントが欲しいからだ。いざとなれば、現人神や将軍様のお導きより、コンビーフやマクドナルドハンバーガーの方が強いのだ。


本日、ラムが在韓米軍の1/3縮小を発表。すわ、と朝鮮半島情勢の不安定化を強調する動き。兵力を削減すると云うことは、要するにアメリカが、北朝鮮の脅威をそれだけ低下していると判断しているということ。


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