談合の奨め

 メタルの橋梁メーカー談合が発覚して大騒ぎ。例によって文系マスコミによる談合たたき。某TV局でやっていたのは、5社指名で上が10億、以下9億、8億ときて最低が7億とする。ところが談合で9億で落札したすると、2億の税金を搾取して暴利をむさぼっているという論法である。現実にそんなことがあるでしょうか?既に国交省は標準積算基準を公表している。しかも、積算の根拠(歩掛かり)は年々下がる一方である。鉄鋼メーカー自身も談合で鋼材価格を維持しているから、中間の橋梁メーカーが抜ける額などたかが知れている。OBによる予定価格の聞き出しなど、遙か昔の夢物語。だから、OBの給料は年々下がり、今では採用も手控えられている。要するに産官業の癒着など、とっくの昔に終わっているのだ。その証拠が、バブル崩壊後の特殊法人の乱立である。あるTVのインタビューで、談合会社の営業担当者がこういうことを言っていた「談合をやるのは幹部の処遇を確保するため」。幹部とは誰か?建設省や運輸省のOBに決まっているでしょう。
 マスコミの云わんとするところは、公共事業の競争をもっと激しくして、価格を下げろと云うことだろう。弱い業界をいじめて、強いところだけが生き残れば良い(これ自身経済的マイナス思考)という論法で、これは、現在のコイズミ・竹中改革路線そのものである。しかし、JR西日本尼崎脱線事故の後、マスコミは事故の発生要因の一つとして、JR西日本の過度の競争体質を挙げている。(05/24)毎日新聞朝刊では、余裕時分0というダイヤは阪急との競争の結果と結論付けている。つまり、阪神地区での自由競争が事故原因であるということだ。そうなら、JRと阪急・阪神とが談合しておれば、事故は起こらなかったということになる。一体どうすれば良いんでしょうねえ。いや、「適度な競争が必要なのだ」と言い返すだろう。「適度な競争」こそ談合そのものなんですがね。ズバリ、文系マスコミの云うことは矛盾だらけなのだ。
 過度の競争の行き着くところ、それは産業・技術の空洞化である。その最も典型的な例がJR西日本という会社なのだ。30才代運転手がいない、旧国鉄運転士が残っている内に技術を伝授してもらわければならない。自分のクビを切った会社のために自分のノウハウを教えるお人好しなどいるのでしょうか?もし、そう人間がいることを前提としてきたなら、一体この会社は何を考えてきたのだ。こういう能なし会社を後押ししてきたのが竹中流市場経済主義だ。そういえば、事故後、コイズミや竹中から何か、この事故についてコメントが発せられたことがありますか?少なくとも、私は聞いたことがない。明石歩道橋転倒事故の時もそうだった。コイズミ・竹中は関西の事変については無関心なのだ。この点をコイズミに糺したマスコミなどいない。関東系マスコミなど、関西批判だけで終わりにしようとしている(特に週刊新潮)。コイズミや竹中にとって、事故で死んだ人などどうでもいいんだよ。アメリカがどういうか、だけが関心の的なんだから。今後公共事業に於いて談合摘発が加速するだろう。その結果、日本メーカーのその分野から撤退が始まる。いわゆるリストラという構造改革で技術が空洞化する。鋼橋で云えば、本体は中国で製作し、日本では据え付け組立だけ。その内、外国人労働者の輸入規制を緩和して、据え付け組立まで中国企業が行うケースが予想される。今は鋼製橋だが、次はトンネルだろう。その次は何か(テールアルメなど、談合そのもの業界だが)?これらの技術は経験的要素比率が高く、一旦空洞化すると、簡単には修復出来ない。その内ニッポンは空っぽになる。JR西日本状態の拡大再生産が全国規模で始まるのだ。従って、あらゆる場面で・・ある日突然橋桁が落下するような・・事故が多発するだろう。これこそ日本の産業をアメリカに売り渡そうという、コイズミ・竹中路線の本音なのだ。中国経済発展により世界的に鋼材価格の高騰化が始まっている。鋼構造物については価格カルテルが必要な状態になりつつある。公取など盲腸みたいな役所だから、誰かが弾圧か摘出すれば良いのだ。

 談合を辞めて、競争を煽って、何かいいことがありましたか?増えたのは失業者と不良債権、それと役人の利権ばかり。減ったのは所得と税収、民間企業のやる気。長野県で云うと、長野県発注の公共事業を自由競争にしたため、長野県は県外業者の草刈り場になってしまい、県内業者の倒産が増え、長野県の税金が他県に流出するような状態になってしまった。もし自由化するなら、隣接県とFTAを結んで双方の権利を保障した上でやるべきなのだ。「お宅の業者がウチの入札に参加して貰っても構わないが、ウチの業者もお宅へ行きますよ」、ということである。
 いいですか、アメリカは日本で自由競争を煽っているが、自分のところではそんなものは認めていない。少し自分の都合が悪くなると、外国メーカーにダンピング課税をする。アメリカこそ業界と政府との談合国家なのだがね。
(05/24)

本日(05/29)新聞で、マスコミは某メーカーのJHOBが全然会社に来なくて年収が1000万だと憤慨しているようだ。問題はこのOBのノルマだが、メタルのメーカーなら少なくとも年数10億、OBの格が高ければ一桁大きくなり、100数10億から数100億位になるかもしれない。確実にそれだけ受注してくれれば1000万など安いものだ。むしろプロパーのラインとしては、OBなんぞ会社に来られると邪魔だから・・・意味判りますか?・・・、役所とゴルフでも何でも構わないから仕事を取ってこい、というのが本音。メーカー側はインタビューに対し、OBを「お客さん」と、えらく謙遜して表現していたが、私は現役のサラリーマン時代、OBなんて人質と思っていた。人質何人に対し、売り上げはこれこれだから、ラインのシフトはこうするという計算をしていたのですよ(これも管理職の仕事の一つ)。人質というものは、役に立つときは大事に養われるが、用事がなくなればクビをはねられるのだ。

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