志賀原発の活断層

保安院の云う、志賀原発、原電敦賀、関電大飯の割れ目は活断層でも何でもありません。もし、あんなものを活断層と云ってしまえば、斉一説は否定され、地質学の根本原理が失われます。そして日本の地質学だけでなく、自然科学は国際的笑いものになるでしょう。


 昨日ネットを探していると、志賀原発S-1断層が活断層とする根拠となったスケッチが出てきました(下図)。原子力規制委員長作業部会長の石渡には申し訳ないが、筆者にはどうしても活断層とする根拠がわからない。
 このスケッチは別の解釈が可能である。それに基づけば活断層説は消える。

   
 
 図-1  図-2

 図-1は当初作成され、S-1を活断層とするスケッチです。図の中央を斜めに走る赤線を活断層の根拠としたのでしょう。誰がこの線を引いたのか?普通スケッチだけをする人間は、そこに自分の解釈を入れることはありません。業務発注者から何らかの権限を委託されたものだけが許されます。前に云った松尾は、立場上下請け会社の施工管理員。独自の解釈は許されない。絵から見るとダイヤチックな感じはするが、ダイヤでも同じ。それとその当時ダイヤは北電には入っていなかったはずだ。つまり、規制委員会作業部会の石渡が入れたと考えるのが普通です。石渡は図赤線の下の塊状部分を基盤岩(新第三紀中新世の堆積岩又は同時代の安山岩〜玄武岩質水冷破砕岩ーハイアロクラスタイト)、その上の礫状部分を現世統〜最新統(段丘層)と理解し、この境界が図中央に垂直に入る何らかの構造によって変形しているから、これは段丘層堆積後に活動したものであり、これをS-1断層、即ち活断層と解釈したものと思われる。又有識者会議は、断層が地層を垂直に切断しているから活断層の可能性を捨てきれないというが、このスケッチには何処にも地層らしきものがみえないのである。有識者は地層の定義を知らないのではないか?。こんなことでは学部三回生の試験にも落第だ。
 図-2は筆者による解釈です。
図の赤破線は筆者が独自に入れたものです。同図ではスケッチ断面の地質を上から(A)〜(D)の4層に区分し、又問題の縦の構造を(F)として現している。
 ここで各層は次の通りと思われる。(A)層は農耕土。(B)層はよく判らないが、農地を造成するための埋め土とも考えられる。(C)層が段丘礫層である。S-1断層問題で、最も重要な地層である。図-1をよく見ると、赤線の上にやや暗い部分が水平に広がっていることが判る。これは何らかの堆積の間隙を現すものである。図-2ではこれに着目して、(C)層を(C-1)と(C-2)に区分した(図中の赤破線)。また図-2でK-1、K-2とした線は、C層堆積中に生じたある洪水イベントを現すもので葉理と呼ばれる。(D)層が基盤の第三紀層又はハイアロクラスタイトである。(F)は(D)層中に入る縦クラックで、これがS-1に相当すると思われる。以下(S-1)を(F)と呼ぶことにする。
 これに基づいて石渡解釈を批判する。
1)石渡が引いた赤線では段丘層/基盤岩境界は変形しているが、図-2の(C-1/C-2)境界は変形を受けていない。この境界は若干の時間間隙はあるものの、現実には殆ど同時に堆積が行われたものである。又、基盤層中の縦構造(S-1断層)直上の(C)層中の礫にも変位が記録されていない。(F)を活断層とすると、(C-1)/(C-2)の境界線も変形を受けているはずである。つまり段丘層堆積前に活動は停止したことになる。
2)(C-2)層中の葉理K-1、K-2にも変位は見られない。
3)図-1では基盤層の上の大塊状の石の上面を段丘層/基盤層の境界としているが、この解釈」は筆者は苦しいと思う。なぜかと言うと、基盤層の上の二つの岩塊に挟まれた部分は、もしここが断層だとすると、もっと違った記載になるはずだ。しかしスケッチでは、礫の配列から見ると堆積層なのである。松尾がこんな間違いをするはずはないと思う。
 以上が断層スケッチに対する筆者の見解である。以下はこのスケッチをどう考えるかである。
4)縦クラック(F)を断層とするには次の点で無理がある。
4-1)スケッチを見ると(F)の中身は大塊状に岩盤が割れているだけで、断層・・・特に第四紀断層・・・に必須のガウジやカタクラサイトのような断層岩の存在がみられない。石渡の専門は岩石学のはずだから、この程度のことは判るはずだ。
4-2)石渡解釈では断層(F)によって基盤岩が持ち上げられたように見える。しかし断層が地盤を持ち上げることはない。活断層の傍でよく地表面の隆起現象が見られる。逆断層では上盤側が隆起し、横ずれ断層では断層の片側にプレッシャーマウンドが出きるためである。どちらの場合も、断層が出きるのは下図の(イ)ではなく、(ロ)の位置である。

 以上のように石渡解釈は(F)を活断層とするには様々な矛盾があり、納得出きる物ではない。この程度のことは石渡レベルの人間なら判らないはずがない。それにも拘わらず、何故彼は「活断層の可能性を否定できない」などのような、中途半端な結論を出したのか?。何処かからプレッシャーが懸かったのか?それとも否定的結論を出すとマスコミや反原発団体からの反発が強くなるので、中途半端な結論で保身を図ったのか?。
 では問題のS-1即ち(F)とは何者か?.筆者は活断層どころか断層ですらない可能性もあると考えている。只の岩盤中の割れ目か?しかしそれが780mも連続するとも考えられない。スケッチには岩石名が記載されていないため、結論めいたことはいえないが、岩脈(ダイク)の可能性)もある。ハイアロが噴出した後、輝緑岩(ドレライト)が貫いてくることはよくある。ハイアロとドレライトは肉眼では見分けがつかないことが多いので、混同してしまっている可能性もある。特に活断層研究者は地形屋や地質系でも四紀屋で、彼らは岩石に弱い。それが問題だ。
(16/05/01)

 「能登が消えるとき」という反原発団体が出した小冊子がある。これは今から30年近く前、会社の帰りに新大阪の本屋で買ったものだ。「敵を知り己を知らば百戦して危うからず」というわけだ。一読して気がついたのは、この本を書いたのはプロの地質屋で、それも只の反原発大学研究者ではなく、民間企業で地質調査の実務を体験し、ボーリングにも詳しい人物。言うならば筆者の同類同業者、それも二流ではない。筆者と対等に渡り合えるだけのレベルの持ち主だ。
 さてそれは誰か?筆者の結論は「応用の松尾」だ。松尾・・・・既に故人・・・とは何者かと言うと、北大地質で卒業後応用地質調査事務所(現応用地質)入社。直ちに労働組合のリーダーとなって、会社側の事実上トップ陶山専務(北大での松尾の先輩)とやり合って、有名な応用闘争をリードした。丁度その時期、筆者が勤務していた東建地質(現東建ジオテク)も組合活動が激しくて、その線で噂は聞いていたのである。その後50年頃か、松尾は応用地質をクビになり・・・実は妥協案があったのだが、陶山が実現不可能な条件を出したため決裂・・・その後どうなったか判らない。
 何故こんな話をするかというと、先般原子力規制委員会作業部会が北陸電力志賀原発一号機直下のS-1断層を「活断層の可能性あり」という答申をだした。その根拠は28年前に作られた一枚のスケッチである。どのようなスケッチなのか筆者も見ていないので判らないが、少なくとも下手なスケッチではないようだ。
 29年前、大林組の依頼で金沢の「医王ダム」の施工に若干関係したことがある。主な依頼項目は、ダムの本体掘削に懸かるので、一つは施工面の観察と岩盤検査資料の作成、その他何か問題点があればその抽出である。当初は筆者の直営でやっていたが、途中から施主(石川県農水部)からゼネコンを通じて、北陸のある中小地質コンサルを下請けに使ってくれという依頼があった。こっちとしても大阪から金沢の奥までは大変だから、きちんと仕事をしてくれるなら大歓迎というわけでOK.。そしてあるとき、相手の担当者と金沢で飲む機会があって、意外な事実を聞いたのである。
 その会社は、何処か大手の下請けとして志賀原発に入り施工管理をやっているという。「横井さんは元応用の松尾さんを知っていますか?」というから「会ったことはないが名前は知っている」と返答。その「松尾さん」に手伝ってもらっているというのだ。つまり、松尾がその地元地質コンサルの下請け・・・か或いは指導者・・・として志賀原発に入っていたのである。スケッチが作成された時期と、松尾が志賀に居た時期は丁度重なるのである。その過程で様々な地質調査の実態を見、断層露頭を見つけスケッチとして記録を残した。その記録が元請会社の報告書に紛れ込んだが、誰もその重要性に気がつかなかった。それが今回の安全審査で見つかったというわけだ。ずばり言えば危機管理の問題だ。
 筆者が冒頭で挙げた小冊子の著者に、松尾がいるという根拠はこれである。つまり、北電ー北陸の中小コンサルー松尾ー「能登が消えるとき」と「活断層スケッチ」という図式が出きる。作業部会長の石渡は確か東北大岩鉱で、学閥的には松尾とは無関係。但し活断層や地震には素人。しかし松尾vs陶山の抗争を知らぬわけがない。果たして判官贔屓の感情が働いたのか?松尾死して応用と陶山への復讐を果たしたのだ。なお怨敵陶山も松尾の後を追うように、あの世に行ってしまったが。なお、筆者は松尾のスケッチが幾ら詳細だといって、それを活断層の根拠にするほど単純ではありません。
(16/04/27)

 活断層とは何でしょう?今やマスコミの扇動により得体の知れないバケモノと化しています。科学の崩壊です。
 (12/08/20)

 石川県知事が、志賀原発断層調査について、国に対して不信感を表明(12/25)。これまで・・・活断層ではないという・・・・国の説明を信じてきたのに、なんたるザマだ、ということだろう。次いで追加調査の結果について、「結果について厳格な判断」を要望。要するに、今回の調査の後、再び前言を翻すような無ザマな真似はするな、ということだ。これは政府だけでなく、保安院や地質調査所に巣くう、国営地質屋に対する不信感の表明でもある。
 今の政府、特に経産省や保安院は、この問題の責任を全て電力会社に転嫁し、自分は善意の被害者のような振りをしているが、とんでもない。ウソにウソを重ねようとしているだけである。筆者は原子力ムラの住人では無かったが、近所にいたもので大体のことは判る。まず原発立地計画は、電力会社から国に申請される。設計・調査・測量は電力会社の系列コンサル(例えば、東電なら東電設計、関電ならニュージェックと言うように)に一括して発注される。断層調査はこれら系列コンサルから、地質の専門会社(例えば、応用地質とかダイヤコンサル等)に発注される。要するに彼ら地質屋は下請けなのである。さて重要なことは調査計画であるが、これは基本的には発注者側の電力会社・コンサルと受注者側との協議で決まるのだが、中間に電力中央研究所が介入してくることもある。この段階で、申請者側の体制は整うわけだが、いざ申請となるとそれほど簡単には行かない。
 さて、地質調査も終わり、いよいよ申請業務だが、この段階でものを云うのは、電力会社の報告書である。従って、この内容は様々な立場からチェックを受ける。一つは電中研であり、地質調査所である。前者は推進側、後者は規制側となる。電中研など大したことはない。地調だって所詮は通産(経産)の外局。上からの圧力には勝てない。又、窓口になるのは原子力保安院、最終判断は原子力安全委員会。この両者が揃って、無能で事なかれ主義だから困るのである。みんな云うことがバラバラで、誰の云うことを聞いて良いか判らない。そこに電中研vs地調、保安院vs東大と言った、派閥学閥が表を出してくる。電中研などどうでも良いが。そして最終判断を下すのは、これら下請け産業ではない、ということである。原子力開発は国策である。その詳細に電力会社如きが立ち入る隙など無い。この冷厳たる事実を、日本のマスコミを理解していない。最終判断を下すのは経済産業省原子力政策局である。これの意向に反したことは、一切許されない。地質調査報告書もこの線で揃えられるのである。
 つまり、国策である原発立地に関する地質評価の結果は、国が一元的に責任を持たねばならないのである。筆者は志賀原発だけでなく、原電敦賀でも、関電大飯でも、今回活断層の疑いがあるとされた構造は、只の割れ目と考えている。保安院や安全委員会は、一旦はそれを認めたのではないか?データが不足だ、というなら申請段階で、詳細調査を要求することは幾らでも出来た。何故それをしなかったのか?無能・無責任としか云いようがない。石川県知事が云いたいのはその点ではないか。
 地元自治体としては、国の評価結果を信じ、それを議会や地元に説明し、その上で用地買収だとか、その他周辺事業に協力しているのである。それを、調査結果が不十分と国自身が認めてしまえば、地元としては何を信用してよいのか、判らなくなるのは当然である。この結果は、国や学問への不信感への蓄積に繋がる。これは極めて大きい問題なのである。
 今後、同じ様な失敗を繰り返せば、不信感は地質学・地形学だけでなく学問全体への蔑視に繋がる。又、保安院の活断層を認めれば、今後大学で構造地質学や構造地形学の講義が出来なくなる。そもそも、保安院や地調は、何に基づいた地質調査をやろうとしているか?或いは(電力会社に)要求しているのか?国際的には、国際地質標準というのがあり、日本でもそれに基づいて日本地質学会が、日本地質標準というものを作っている。少なくともこれに基づいたものでなくてはならない。そして、国際標準では、地質構造の解釈・評価は物理法則に矛盾しないこと、言い換えれば物理的に説明出来ること、を要求している。保安院のそれは、これに順応したものでなくてはならない。
(12/07/27)

 日本原発敦賀に続いて北陸電力志賀に対して、原子力安全・保安院がいきなり活断層疑惑を言い出した。実は彼等が活断層の疑いがあると言い出した割れ目は、既に申請時点で活断層ではないと、保安院自身が認定しているのである。それをいきなり前言を翻すようなことをするのは何故か?調査・評価がいい加減fだったと言い訳するが、調査・評価方法自体を審査するのも保安院なのである。つまり、原発を巡る一連の出来事は、保安院自身が自分が無能であることを吐露しているのと同じなのである。
 筆者はこの背景に、保安院とその背景の経産省を含む原子力複合体の陰謀を感じるのである。原子力規制庁の発足により、保安院の役割は大幅に縮小する。これは電力会社への影響力縮小を意味する。これではイカン。ナントカせねば。そこで原発の危険性をわざと言い立てる。そうすると、日本人(特にマスコミ)はアホだから、もっとナントカせよ、と言い立てる。無論、役人はご期待に答えるべく努力する。但し、それが炉本体やプラント関係のように、目に見えるものではヤバイ。そこで目を付けたのが「断層」。これは誰も判らない。「これは危険だ」、といえば世論はその方向に向かう。この種の問題は簡単の答は出ない。その間、保安院は命が延びる。そしてその間に天下り先を見つければよい、てなところだろう。要するに、天下り先を見つけるまでの時間稼ぎだ。では何処に天下るのか?当たり前だが電力会社。保安院が騒ぎを起こし、その後「いや調査をしたところ、活断層ではなかった」と言えば、電力会社にも恩を売れる。体のよい、マッチポンプだ。
(12/07/25)

 福島第一原発事故発生以来、原子力安全・保安院は大丈夫だ、大丈夫だと言い続けてきた。そのあげくがあのザマだ。その後、テレビに登場していたあの高給幹部が、福島出張をサボって、六本木で女と路上チューしているのがフォーカスされても、このタワケモノを処分するでもなく、有耶無耶。こんなウソ・デタラメ・ハレンチ・無節操役所の云うことが信用出来るでしょうか?その保安院が原電敦賀に続いて、北陸電力志賀原発でも、活断層の疑いがあると云って追加調査を指示。敦賀原発に続いて、保安院活断層を吟味してみます。

1、志賀原発とは何処に
 筆者は志賀原発など行ったこともなければ、仕事でも関係したことがない。従って、まず志賀原発とはどういうところにあるのか?を確認しなくてはならない。そこでネットで検索したが、はっきりここだと判る資料がない。肝心の北陸電力のHPでも、マンガみたいな案内図があるだけで、場所がさっぱり判らない。結局ヤフーの地図サイトのジャンル一覧から、某電気工事会社の志賀原発内事務所を見つけて、志賀原発に辿り着きました。
 志賀原発のある石川県羽咋市志賀町は、能登半島西岸のかなりの面積を占める町ですが、平坦部は海岸線や山間部の谷沿いに僅かに広がるのみ。大部分は丘陵地です。能登半島の地質構造で何といっても特徴的なのは、半島中央をNEーSW方向に伸びる「邑知潟」地溝帯です。地溝という言葉は、元来地形学用語。構造地質的には引っ張りテクトニクスの場で形成されるが、能登半島を取り巻くテクトニクスは主として剪断応力場。むしろ地溝の両サイドは高角度の逆断層型になる。従って、構造帯と読んだ方が適している。ここでは「邑知潟構造帯」と呼ぶことにする。

図ー1

本構造帯の両サイドには、図ー1のように、シャープな線状模様(リニアメント)が発達する。これは誰が見ても判る活断層である(南のリニアメントで一部欠いているところがあるが、これは断層がないのではなく、地形の改変等ではっきり線を延ばせないという意味)。リニアメントを引くに当たって迷うところは殆ど無い。では志賀原発付近ではどうか、保安院らは、「誰でも判る活断層」と云っていたが、そんなシャープなものは見られない。僅かに点線で示したリニアメントらしきモノ(S1)が見えるのみ。果たしてこれが活断層と云えるのか?というのが今回の主題である。
 S1に少し近寄ってみます。(図ー2)


図ー2

 図ー2の点線は図ー1のS1をそのまま延長した者です。S1と現海岸線との間の平坦地は海岸段丘。S1が活断層なら、右上の丘陵と左下の段丘との境界は、図ー1の活断層と同じようにシャープな線となる筈だ。しかし実際に見てみると、丘陵と段丘の境界線は結構凹凸が多く、単純な線で表現するのは困難だった。この状況は、現在の海岸線(海岸線の外側には将来の海岸段丘面が形成されている)と同じである。更にこれを南東に延ばすとゴルフ場の丘陵に達するが、ここでもS1に該当するような直線地形は認められない*。
*ゴルフ場だから、造成によって活断層地形が消えている、という人もいるだろうが、それは間違いである。ゴルフ場は宅造と違って、尾根は開削するが、谷の地形は概ね残す。だから、谷には原地形が残るのである。

2、別の活断層の可能性
 問題になっている活断層はこのS1ではなく、別の活断層があるのではないかと思い、再度写真を見直した。あまり大した結果は得られませんでしたが、図ー3のS1yが候補にあがりました。


図ー3

 S1yはS1の背後丘陵に見られる小河川の右オフセットに着目したもの。S1よりは活断層地形の根拠はある。しかし、これも南東延長のゴルフ場付近で尖滅してしまい、活断層とするには苦しい。また、このゴルフ場より南では、「邑知潟構造帯」に平行したNE-SW方向や、これとセットをなすNNE-SSW方向のリニアメントが優勢になり、S1やS1y系統の構造系を推定するのは苦しい。

3、発電所では
 図ー4は前述のS1とS1yを発電所内に延長したもの。S1を延長すると確かに1号機に関係する。これが問題の破砕帯なのだろう。しかし、これは活断層としての根拠が乏しい。一方S1よりは活断層根拠のあるS1yはどうかというと、発電所の端を通ってしまい原子炉には関係ない。


図ー4

 双方ともに共通する難点は、海岸線の外側の岩礁に、地形上の影響を及ぼしていないことである。志賀原発周辺の海岸は外海と直接接しており、半島内部からの砕屑物は概ね海流によって移動され、海岸周辺は堆積環境ではない。その場合、海流による浸食により、活断層のような構造的に異質な要素が存在すれば、それは著しい地形的特徴として残るはずである(浦底断層のように)。ましてS1断層の方向は、現海岸線と斜交すると推定されているからなおさらである。
 ところが現実の衛星写真では、そのようなものは全く見つからない。無論筆者はS1断層の存在を否定はしない。問題はそれが原発廃炉に繋がるような、緊急且つ重大な性格のものかどうか、である。これまでの衛星写真情報からは、そのような要素は見あたらない。いや、今回使っているのはグーグルアースという商業衛星写真だからで、もっと細かく見れば判るのではないか、という人がいるかもしれないが、そういう人はシロウトである。そもそも、原発で問題になるような活断層は、断層としてもそれなりの規模を持っていなければならない。従って、グーグルアースだけでも十分認定出来る。これで認定出来ないような断層は断層とは云えず、只の割れ目である。図ー1に示した邑知潟構造帯を挟む断層をみれば、その差がよく判る。
 僅かな断層があると云って、直ぐ活断層と結びつけたり、廃炉を示唆する一部の脱原発主義者やマスコミは、木を見て森を見ずの類、地に足のつかない空理空論・妄説の徒である。
(12/07/22)

今度は北陸電力志賀原発で、活断層の疑い(保安院)。3.11以前の原発安全審査では、申請者がうっかり活断層を画いていると、消せと要求していたのが、他ならぬ原子力安全保安院。それが風が変わると、途端に只の割れ目まで活断層と言い出す。全くコウモリのような役所だ。今後又風が変わると、全く違うことを言い出す可能性もある。こんな役所の云うことが信用出来ますが?
 従来の原発安全審査での断層評価では、申請者(電力会社)が民間地質コンサルタント(筆者のような業界)を使って断層調査を行う。調査結果は電力業界のシンクタンク(ということになっているが、中身は大したことはない)である電力中央研究所立地部との協議を経て、地質調査所との協議に移る。電中研はあくまで電力業界のエージェントだから、電力会社に不利になることは消す方向を要求する。一方地質調査所は経産省の外局(今は独法)だが、下請けのようなものだから、本省との中はあまりよくない。どちらかというと規制側に廻る。そこで電中研と地調との確執が始まる。間に挟まって右往左往するのが地質コンサル。結局は電力会社が間に入って、両者が納得出来る報告書になる。しかしこれで安心してはならない。最終的に決定権を持っているのが原子力安全保安院。保安院は政府のエージェント。つまり推進側。一方で原発差し止め訴訟が起これば、訴訟の矢面に立つ立場でもある。従って、彼等が何をどう要求するかは説明するまでもない。仮に電研・地調が妥協してこの断層は残しておこう、となっても保安院から「これでは安全委員会に挙げられない」と云われれば、消してしまうか、言葉を換えるしかないのである。
 原発立地地点の断層調査を曖昧にしてきた張本人こそが原子力安全保安院なのである。それを今頃になって手のひらを返したように、あれもアブナイ、これも危険だなどと言い出すのは、実に許し難い所業である。節操の無さも極まれりだ。
(12/07/17)


RETERN       一覧へ      TOPへ