中国は民主化で親日的になるか?

 現在の日本を取り巻く国際環境の中で、大変な問題になっているのが、中国の反日運動である。この原因は既にマスコミにより、繰り返し報道されているので、ここでは取り上げない。ここで取り扱うのは今後の展開の予測である。結論から言うと、日本がコイズミー安部路線(つまり反中親台路線)を取る限り、この予測は、日本にとって有利なものにならない。
 まず、現在日本の対中意識には大きく次の二つがある。
 1)親中派・・・・〇自民党橋本派、旧宮沢派等かつての主流派に連なる派閥。
          〇財界、特に日本経団連系の大企業。
          〇公明、民主の主流派(旧社会党系)、社民。共産党は実は反中。
          〇朝日、毎日。筑紫ら左派系ジャーナリスト。
          〇70年安保闘争を経験した60〜70才代の年寄り、団塊の世代。活字文化世代。
 2)反中派・・・・〇自民党森派。要するに旧福田派に連なる台湾ロビー。シンタローのような単純反共主義者。
          〇民主の一部。 
          〇読売、サンケイ及び文春・新潮。特に文春「諸君」に連なる保守系ジャーナリスト。これも単純反共主義者。
            以上3者が筆者の云うジャパンネオコン
          〇安保闘争を知らない30〜40才代の漫画世代。
   

1)はこの際問題にならないので、2)の論点、主張を整理しておく必要がある。彼等の主張もバラバラで、感情的な反発の要素が大きく、長期的な視点・戦略がないことが共通しているのだが、大まかには次のとおりか?
(1)中国は無礼である。特に呉副首相のドタキャンに関連して。自民党保守派、単純反共主義者。
(2)日本は何時まで中国に謝り続けなければならないのか?中国の自己本位の要求に対しては、日本も毅然とした態度で臨むべきである。これは30〜40才代に多く見られるようだ。
(3)中国の反日活動は政府の指導の下にある。あの国は共産党一党独裁だから・・・。これも単純反共主義者

(1)については、中国は無礼を承知でやったのだろう。呉副首相のドタキャンは最後は「戦争に訴えても良い」という意志表示と考えるべきである。又、(2)も似たような性格のものである。2国間の関係で、互いの利益・主張が異なれば、最終解決法として「戦争」が選ばれるのは国際法上、何の問題もない。某TVでH弁護士が、「・・・日本として筋を通さなければならない・・・」と叫んでいたが、筋を通してそのあげくどうなるのか?、の答えがない。訴訟という狭い世界では、最終的に問題は必ず収束するようになっている。そのために裁判官という第三者調停者が存在するのである。だから、調停結果を自己に有利にするためには、嘘でも何でも筋を通し続けなければならない。しかし、力と力がぶつかり合う国際外交の場ではそのような甘い解決法はあり得ない。従って、H弁護士の言うとおり筋を通し続ければ、第二次日中戦争は避けられないことになる。私はコイズミのような無責任政治家の不用意な発言で、日中両国民が不利益を蒙ることがあってはならない、と考えている。呉副首相のドタキャンの前に中国の核ミサイルは台湾ではなく、日本に照準を合わせていると考えるべきだろう。中国は自前の人工衛星を持っているから、命中精度は北朝鮮のテポドンよりは遙かに高い。横須賀をピンポイントで狙えるかもしれない。山口県でも構わないが。
(3)、これが日本反中主義者の本音ではないか、と思う。06/05朝、某TVの番組で、塩川正十郎が「・・・あの国は共産党一党独裁だからねえ・・」その先は何も云わずに番組は終わってしまった。

 反共主義者の主張をまとめると、次のようになるだろう。
@日本は民主主義、資本主義国家である。政治は政党政治を基本としている。
A一方、中国は全体主義、社会主義国家である。政治は共産党一党独裁である。
B現在の反日行動・反日教育は共産党によって指導されている。
C従って、両者が歩み寄ることはない。更に民主主義と全体主義が対立したとき、常に勝利を収めるのは民主主義国家である。従って日本が譲歩する必要はない。
 さて、何時までも日中が対立しているわけにはいかない。何処かで妥協点を見つけ、そこに収束させねばならない。ではどういう状態だろうか?反中主義者のイメージとしては、
@中国の民主化が進むことが第一の条件である。
Aそうなれば共産党の勢力が弱くなるので、中国の政治体制は日本と同様になる。
B現在のような共産党、政府主導の反日教育・反日活動はなくなる。
C従って、中国は親日化する。
と考えているのではないだろうか(その辺りがさっぱり判らない)?上で挙げた塩川正十郎などは当にそう考えているとしか思えない。では、今のままでそういう状態が来るだろうか、ということを検証しなくてはならない。
 中国より地理的に日本に近いのは韓国である。韓国を例にして考えて見る。韓国独立後の民選非軍人大統領は次の4人しかいない。李承晩、金永三、金大中、ノムヒョン。金大中を除く3人までが強烈な反日政策をとっている。例外的な金大中でも歴史認識・竹島問題では日本には妥協していない。むしろ、軍部独裁政権の方が対日関係では現実路線を採っていた。他のアジア諸国でも似た傾向がある。つまり、東アジアで民主化が進めば、その国は反日的になる、のである。
 現在の中国指導部はいわゆる文革世代である。この世代は反日教育を受けていない。受けたのは反米・毛沢東思想教育である。だからそもそも、対日アレルギーが少なく、本気で反日を考えているとは思えない。ものの弾みで反日的に振る舞っているだけである。その下の、今30台半ばのテクノクラート達がいわゆる天安門世代である。第二次天安門事件は、戦後中国が最初に直面した自発的民主化要求である。これに対し、当時の中共指導部は徹底弾圧で臨んだ。一方欧米西側諸国は、市民の民主化要求を支持し、中国に対し経済制裁等の措置をとった。では、日本はどう行動したかというと、「・・・中国を孤立させてはならない・・・」と称して、共同経済制裁には応じず、逆に対中ODAを増加させている。これは当時の中国指導部にとっては大変有り難い話しだったろう。しかし当時の中国指導部の平均年齢は既に70才を越している。何れこの世から消え去る運命にあったのである。同じ投資するなら、何れ居なくなる連中よりは、これからの世代を対象にすべきである。将来の中国を指導するのは、天安門世代である。彼等が日本にどういう印象を持っているか?言うまでもないだろう。
 中国でも世代の交代は進む。この過程で、いやでも民主化が進むのである。その結果、韓国の例で述べた様に、中国の反日世論は強くなっても弱くなることはない。だから、日中関係を改善するなら、比較的対日アレルギーの少ない、文革世代が主導権を握っている、今をおいて他はない。(06/09)
 なお、現在のジャパンネオコンの源流を探ると、おそらく岸信介に行き着くだろう。B級戦犯である岸信介(A級ではない点に注意)が政権を握った時の東アジア情勢を見ると、朝鮮半島では、いわゆる38゜線、中国では台湾海峡で資本主義と共産主義がぶつかり合っていた。資本主義陣営のバックはアメリカ、共産主義陣営のそれは旧ソ連である。国としての勢いはソ連にあった(人類最初の人工衛星打ち上げ成功や、軍事力での優位性。)。この時、岸は日本を東アジアに於ける共産主義への防波堤と位置づけ、少々強引なやり方で日米安保条約を更新した。それから幾星霜。1970年代の始め、いきなり襲った米中国交正常化。これを後追いする形で、日本も日中国交正常化に踏み切った。時の総理は田中角栄。これに加担したのが、旧田中派他の現実主義者や池田派(旧宏池会)、河本派などのリベラル派。一方これに反対したのが、岸派の後継を任ずる福田派で、その玄関番や草履取りをやっていたのが、コイズミ純一郎とか、石原シンタローだったのである。これがジャパンネオコンの始まりで、そのDNAは現在の森派に続く。しかし、自民党主流は、田中派とそれに従うリベラル派から構成されてきた。福田派、特に台湾ロビーにとってはつらい日々が続いた。しかし、現在、森派のコイズミが政権を執り、50%近い支持率を得て、台湾ロビーつまりジャパンネオコンのやりたい放題状況。しかし、ジャパンネオコンにとって、最後のよりどころは台湾問題のはずである。この問題は現在、結構ややこしくなっている。
 台湾の政党は外省人を基盤とする国民党と、本省人を基盤とする民進党他の民族政党に分かれる。国共内戦の結果、台湾に逃れてきた国民党はそこで独裁政治体制を布いた(やり方は大陸の共産党独裁と殆ど変わらない)。1980年代に蒋経国が死んで、民政化が進み、その結果現在のような本省人支配体制に変化してしまった。実はこれが問題なのである。台湾の多数派である本省人の要望は、既に台湾の独立にシフトしている。ジャパンネオコンは従来国民党を支持してきた。国民党は国民党による大陸回復をテーゼとしている。従って、台湾人を支持すれば、国民党を裏切り、国民党を支持すれば、台湾から反発を買うことになる。さて、どうするんでしょう?
 現在、中国は反独立立法を行って、台湾に対する締め付けを行っているが、一方で国民党の連戦を招待したり、パンダを贈ると言って台湾世論の切り崩しを計っている。つまり、中国が台湾にすり寄っているのである。長期的に見た場合、中国が台湾を武力解放することはあり得ない。最終的には第三次国共合作で落ち着くだろう。これまで味方だと思っていた台湾が、突然敵になるのだ。朝鮮半島でも同じことが起きかねない。韓国と北朝鮮がいきなり協商して、共同で日本敵視政策を採ることは十分あり得る。この時、南北朝鮮連合体は核兵器を持っているのですよ。そうなった時、日本はどう対応するのか?アメリカが助けてくれる、というのは甘すぎる。アメリカは国益に合致しない限り、何もしない。日本を見捨てることだってあり得るのだ。ジャパンネオコンのやり方では日本はアジアの孤児になるだろう。
 朝鮮・韓国、中国・台湾が、直ぐに一体化する事などはないだろう。しかし、その過程で、これら各国が、領土・資源問題で対日外交方針を共同化することは十分あり得る(尖閣列島に関しては、台湾も領有権を主張している)。現在のコイズミのような感情的短絡外交では、その点が極めて危ういのである(06/10)


 靖国問題で、コイズミ他ジャパンネオコンがあれこれ騒いでいるが、実はコイズミにとって、靖国などどうでも良いのである。コイズミの腹は日本遺族会を通して橋本派の命脈を絶つこと。それの道具に靖国を利用しているに過ぎない。靖国としては年に一回、こういう騒ぎが起これば、その広告宣伝価値は数億円以上に匹敵するから、こういう騒ぎが起こって貰わなくては困るのである(靖国の現宮司は元電通の営業マン)。
 さて、コイズミは靖国に対する中国のクレームを内政干渉と非難したが、もっと大きな主権無視には黙っている。それは去る昨年11月の中国原潜領海侵犯事件である。国際法によれば、潜水艦は他国領海内を航行するときは浮上しなければならない。潜航したままなら、撃沈しても構わない。中国原潜は国籍不明艦として処理出来たのである(先例はある)。ところがコイズミ内閣は何もせずに、黙って中国原潜の退去を見送っただけ。 要するに、何かことがあると思われるときにはびびって手が出せなくなるのである。その替わり、靖国のように相手が手が出せない時だけ、えらそうに振る舞う。三文ヤクザやエ〇のやり方と同じだ。安部も同じ。相手が弱い時にはえらそうに振る舞うが、少し実力を見せると、途端にびくびくして何もできなくなる。強いものに対する臆病と言う点では、祖父の岸信介とそっくりなのだ。
 主権侵害と言う点では、靖国問題よりは、中国原潜領海通航問題の方が遙かに大きい。何故なら、靖国問題は所詮2国間問題に過ぎない。靖国がアフリカや南米で問題になると思いますか?ところが潜水艦領海通航問題は、国際的には大変な問題になる。つまり、日本は日本領海内では外国潜水艦が潜航して構わないという前例を作ってしまったのだ。こんな国が周囲から尊敬を得られますか?自国の主権も主張出来ない(主張とは、云うだけでは駄目で、具体的実行が必要)ような国が国連安保常任理事国なんて、おおよそこれほど人を馬鹿にした冗談はないでしょう。(06/14)