ライスはあてになるか?・・・この女はアホで危険


現在、イラクでは暫定政権下での選挙が進行中である。選挙の結果はする前から判っている。多数派のシーア派が優勢を占め、それにクルド人や世俗派の一部がくっつき、スンニ派は迫害される。スンニ派にアルカイダ等の外国勢力がくっつき、イラクは再び混乱する。実は、これはブッシュ政策、それを補佐してきたライスの方針の当然の帰結である。ライスが主張する民主主義による被抑圧者の解放は、被抑圧者と抑圧者の関係を単に逆転させるだけで、問題の解決にはならない。本当の解決は貧困と不平等を絶滅することである。しかし、ブッシュとライスが信奉する民主主義と市場経済主義は、貧困と不平等を拡大する方向にしか作用しない。従って、ブッシュ、ライスらの存在は世界にとって邪魔・迷惑だけである。


 コンドラーサ・ライスは第二次ブッシュ政権の目玉人事である。だから、米国上院での資格審査が厳重になるのも当然である(なお、この制度は非常に興味がある。今後、我が国憲法改正論議の中で検討する価値がある)。彼女の売りは、IQ200と言う頭の良さである。各マスコミもこの点を強調しすぎる感がある。しかし、IQと人間の能力との間には何の関係もない。IQが全てを決定するなら、大学の入学も企業の採用も、全てIQで済ませば良い。その方が簡単だし、社会コストもかからない。しかし、どの大学も企業もIQを採用基準にはしていない。これは即ち、IQが人間の能力を計測する規準にはなり得ないと言うことを、みんな経験的に知っているからである。
 IQテストとは定型的な質問に対し、時間内に如何に多く答えられるかの反応速度を計っているだけである。彼女の能力評価の例えとしてよく出る「大統領に対する複雑な質問を、即座に理論化して返す」エピソードはその典型である。複雑な問題の奥に潜む本質への洞察力や、永年の経験からきた判断力などは計測対象外である。従って、我々は彼女の能力がどの程度のものであるかを、彼女自身がこれまで行った判断から評価しなければならない。
 第一次ブッシュ政権で、彼女は次に示す幾つかの重要事項の判断を間違った。
1)イラクに大量破壊兵器がある。(1)
2)フセインを倒せば、イラクは民主国家となり、アメリカ人はイラク人から歓迎される。(2)
3)海外亡命者(特にアメリカ亡命者)でを帰国させ、彼らを中心に暫定政権を作れば、イラクの民主化は達成され親米政権が出来る。(3)

 上記の問題に対する彼女の反応は、単なる錯覚にすぎない。実際、BSなんかで出てくる彼女のコメントは余りにも単純で、危なっかしくて仕方がなかった。彼女のコメントで出てくるキーワードに「邪悪な」という言葉がある。三流コミックじゃあるまいし、現実政治、それも国際政治に正義と悪の対立などあるはずがない。それを臆面もなく出してくるところに彼女の危うさ、単純を感じたのである。もっとはっきり云うと、この女はアホだということ。複雑な問題、特に余所の国や民族の歴史・伝統・文化に対する関心・尊敬の無さは、態度から見え見えなので、おそらくそういったものに対する理解能力が欠けるのだろう。このアホさはボスのブッシュのアホさと共通する。類は類を呼ぶということか。ライスはドミニカ、ブッシュはテキサスという文化的辺境出身だから仕方がないが。
 それと彼女は経済が理解出来ないのではないかと思われる。これまでの(イラクに関する)コメントに経済運営に関したものは、一つも無かったように記憶している。日本に派兵を促すために、イラク復興ビジネスは日本にとっても魅力ある話だ、と云ったことがある。子供銀行並みのレベルである。なお、この点もボスのブッシュと共通する。ある記者会見で、ドル不安に関する質問が出た。その時ブッシュはどう答えたかと云うと「そんなにドルが心配なら、もっとアメリカの製品を買え」。これがハーバートビジネススクール出身経済学修士の云うセリフだ。あまりの単純さに声もでない。
 更に、挙げた「質問に対する即座の回答」というのは、実は非常に、はた迷惑なのである。質問はバラバラにやってくる。だから回答もバラバラになる。その時はそれでよいのだが質問・回答はあとで記録に残る。そうすると、何処かで辻褄が合わなくなるところが出てくるのである。そうなると大変で、マスコミはそこをつついてくる。これをかわすために、又「即座の回答」を繰り返さなくてはならなくなる。我が国にも似たようなのはよくいる。東大出のキャリア官僚がその例。我々の身近でも、委員会や地元住民説明会なんかがあると、担当の役人がその場凌ぎで適当な答えを喋ってしまう。そうなると迷惑するのはコンサルで、しばしば辻褄合わせにパニック状態になるのである。
 彼女の思想上の危険性は、アメリカ人にしばしば見られる特徴だが、底の浅い原理主義者だということである。先ず、世界を被抑圧者と抑圧者、民主主義と独裁・専制主義といった二項対立で説明する。そして、被抑圧者を解放し、民主主義を世界に拡大することが、正義の実現であり、民衆が等しく願うものであると主張する。これだけなら、かつてのマルクス主義者や毛沢東主義者となんにもかわらない。単なる左翼教条主義者と紙一重である。問題は民主主義の中身で、彼女(やネオコン)はアメリカ式民主主義を最高の政治形態と捉え、それ以外の形態を遅れたもの、劣ったものと規定する。そして全てをこれに従わせようとするのである。これが、諸外国(アジアやヨーロッパ)から反発を買う原因になっている。彼女らの民主主義拡大戦略は、かつての国際共産主義と同じで、ソ連をアメリカに、共産主義者を市場経済主義者に読み替えれば、そっくりである。アメリカのアメリカによるアメリカのための民主化政策なのだ。彼女らの云う自由とは、アメリカ企業が、地域の伝統・文化・歴史を無視して、活動出来る(ペプシコーラやマクドナルドハンバーガーが何処でも自由に売れる)自由であり、民主主義とはアメリカ企業の独占を保障する政治制度なのである。(もっともこれはネオコンの政略であって、ライスは本気で被抑圧者の解放を目指しているのかもしれない。それなら、やっぱりライスはアホだということになる)。

 なお、大統領が間抜けで、副大統領は悪党、国務長官はインスタント秀才のアホ。これが今後少なくとも4年間の世界をリードしていくのである。この三人の指導のもとでは、ドルの運命は風前の灯火。ところが、日本の総理大臣と経済財政大臣はあの通りドル一遍道。放っておけばとんでもないことになる。今、必要なのは自分自身の自衛策である。
 そう言う点では、郵政民営化は極めて危険な選択と云わざるを得ない。(05/01/26、01/28修正・加筆)

(1);開戦2週間後に、筆者はイラクは大量破壊兵器を持っていない、と断言したが、ライスがそれを渋々認めたのは05年の年も開けてからのことだ。

(2)(3);これについてはここをクリック


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