TPPってなに?


 平成最後の国際会議として注目すべきは、先日北京で行われた”一帯一路国際フォーラム”である。これには150か国が加盟し、137か国が代表団を派遣した。日本からは二階俊博が参列しペコペコ演説をやっている。
 それは別にして確か三年程前までは加盟国は60か国ぐらいだったはずだ。それがたった三年で150か国まで膨れ上がった。何故か?それはアメリカ=トランプの御かげです。トランプのアメリカファーストが一帯一路を拡大させたのです。尤も、本人は全く気が付いていないでしょうが。
 トランプが政権についてからやったことは、国際間協約潰しです。まずTPP脱退に始まり、EUを攻撃し、WTO改革まで言い出す。そしてアメリカの軍事力を背景に二国間協定を要求する。例えば日本に対するF35の売り込みなど殆ど押し売りだ。他の国でも同じことをやっているのだろう。
 本人はこれが俺の才能だと自負しているだろうが、当事国にとっては迷惑でしかない。それに比べ中国は金は出すが口は出さない。インフラ整備で金が欲しい中進国、途上国にとってどっちが有難いか一目瞭然。それが明らかになったのが今回の北京フォーラムだ。
 トランプのアメリカファーストが長続きしないのは明らかだが、一帯一路だってどうなるか分からない。アベ政権発足時、晋三は各国に「by Abenomics」と宣伝しまくったが、これに追随する国は一つもなかった。その後の日本景気特に国の借金の膨れ上がりぶりを見れば当たり前だ。さてどうすればよいか?なんとなくいくら考えてもいい知恵は浮かばない気がする。これが令和の実態か?
(19/04/30)

 アメリカが中国に対し制裁関税をかけると云えば、中国も報復関税で対抗と答える。いよいよ両超大国の貿易戦争勃発。さてどちらが勝つか?まず中国が先般発表した700億ドルの米産品購入は当然キャンセルされる。これで損害を受けるのは、有力なトランプ支持者である中西部の小麦・大豆農家。それだけではなく、ボーイングなどの航空宇宙産業。中国にノウハウを売っていたアップルなどのIT産業。
 安い鉄鋼・アルミニウムの関税は、中西部・・いわゆるラストベルト・・・の企業・労働者にとって朗報だろうが、輸入品価格が高くなると、従来安い中国製品を使っていた建設業や鉄道事事業者にとっては打撃が発生する。なお、自動車や航空機、石油掘削用ドリルパイプやパイプライン等の高付加価値商品は日本製がほぼ独占している。これに高関税を掛ければ。これらの産業が打撃を受け、結局は物価上昇という形で消費者に跳ね返る。だから余りオタオタせず、従来通りの商品を行くっておけばよい。うっかり経団連の尻馬に乗って輸出補助金などを出せば、それこそトランプの思う壺。逆に 反ダンピング課税を掛けられることになる。
 米中どちらが勝つか未だ分からないが、勝負を決めるのは、どちらが長く我慢できるか、だ。中国人の粘り強さは先の大戦で実証済み。アメリカ人はどうかというと、白人特にアングロサクソンやドイツ系は粘り強い。特に中西部はドイツ系が多く、これがコアなトランプ支持層を作っているから予断は許さない。
 それに比べ天下の健忘症民族日本人は、過去のことなどすっかり忘れ、おまけに他人も同じように忘れていると錯覚している。これでは勝負にならない。
 それにしても情けないのが、我が日本国首相のアベ晋三。トランプに「2500万人のメキシコ人を日本に送り付けるぞ、そうすればアベは退陣だ」と脅されると、途端にヘナヘナになり、関税どころか、筋の通らない北朝鮮非核化費用負担まで呑む始末。これではまるっきりトランプ商会日本支店課長レベルだ。全く、吉田松陰以来、長州にはろくな人間がでていない。山口県など、日本地図から消した方がましだ。
(18/06/17)

 TPP法案が衆院特別委員会で強行採決されましたが、これそこまでやる価値があるのでしょうか?そもそも太平洋を跨いだ貿易は、アメリカを無視すれば殆ど意味はない。現在のアメリカ大統領候補はどっちもTPPには後ろ向き。トランプは止めるというし、ヒラリーは見直し再交渉だ。仮に次の大統領が前向きになったところで、議会は上下両院ともTPP反対。アメリカ議会は日本衆院与党のように、官邸(アベ)にばっかり尻尾を振るポチではない。
 日本の最大貿易相手国は言うまでもなくアメリカ。この肝心のアメリカが加わらなければ、何の意味もない。それとも韓国がTPP参加を言い出したから焦ったのか?しかし韓国は大統領があのザマでは、TPPどころではない。
 なお、ワタクシは昔はTPP推進論者だったが、段々これが眉唾に思えてきた。例えば、かつてTPP積極派だったはずのフィリピンやインドネシア、マレーシアが、最近急速に中国接近を進めている。中国はこれら東南アジア諸国のTPPによる貿易拡大で、漁夫の利を得ようとしているのではあるまいか?というのが理由だ。
(16/11/05)

 アベが1月訪米を目指したものの、アメリカから拒否。理由はオバマの日程調整がつかないと云うことだが、これは来て欲しくないことを誤魔化す常套句。何故来て欲しくないか?当たり前だがTPP問題。これを除いて現在日米間の懸案事項は何もない。
 対中問題・日米同盟・沖縄問題は民主党時代に、ほぼ問題は解決している。今更自民党が出ていってひっくり返すことはない。もし将来あるとすれば、アベノミックスとオバマノミックスとの軋轢だけだろう。アメリカにとって、これを解決する手段の一つがTPPというわけだから、妥協の余地はない。
(13/01/08)

 先日の某民放BS報道番組。テーマはTPP。ゲストの一人がTPP反対論で有名な榊原英資。その彼が農業問題やISD条項問題を持ち出すのは当然と思うが、その次ぎに何を言い出すかと思うと「TPPになると、アメリカのゼネコンがやってきて、日本の地方ゼネコンはみんな潰されてしまう」ときた。これが選挙を意識した発言であるのは云うまでもない。彼はかつては民主党のブレーンと思っていたが、実態は小沢派・・・つまり旧田中派・・・のブレーンだったのだ。何故なら、この発言には次の二つの誤謬が巧みに隠されている。
1、アメリカにゼネコンはあるか?榊原はアメリカにも、日本と同じゼネコンがあると思っているらしい。元通産官僚らしい彼はかつては民主党のブレーンと思っていたが、実態は小沢派・・・つまり旧田中派・・・のブレーンだったのだ。錯覚である。ゼネコンとはゼネラルコントラクター(総合契約業)の訳である。ところが、世間はこれをゼネラルコンストラクター(総合建設業)の訳と思いこんでいる人が多い。そんな業種はアメリカには存在しない。それどころか、ゼネラルコントラクターそのものも存在しない。アメリカの建設事業の場合、その工事の中で最も契約高が大きい業者が主契約者(メインコントラクター)になる。例えばあるビルの新築で、空調設備が最も工事比率が高ければ、空調設備業者が元請けになり、他の業者はその下請けになる。日本でも90年代あたりからその傾向は強くなり、ゴミ処理施設などプラント関係では、プラントメーカーが元請けになって、所謂ゼネコンがその下請けをやるケースが増えている。つまりアメリカ化が進んでいるのである。
 そもそもアメリカには日本的ゼネコンは存在しないのだから、それが日本に進出するわけがない。
2、TPPで海外業者が進出して来るのではないか?勿論それはあり得る。しかし企業が進出するかどうかは、規制云々の前にその国でビジネス展開が出来るかどうかの経済的判断である。おそらくTPP反対論者は、今の日本の建設業が法律か何かで保護されていると錯覚しているのだろう。現実には政府調達に関しては、その共通契約書には国籍条項など始めからない。何処の誰でも入札資格さえ満足出来れば応札できるのだ。事実、かつて東名高速道路や東海道新幹線工事では、アメリカ企業が落札している。但し施工能力が不足していたため、途中で撤退し、その後始末を日本企業がやっただけの話しである。
 現在政府調達だけでなく、地方自治体発注工事でも、一部の県や市町村を除けば、全て公募制になっている。これは国際基準に合わせた制度である。逆に日本がTPPに参加すれば、アメリカが国際基準に合わせなくてはならない。アメリカの建設業も自動車産業と同じ、規制に保護された業界である。というわけで、建設産業に関しては、TPPは何ら問題にならない。むしろアメリカ側が戦々恐々だろう。

 そもそも建設事業は、人も資材も現地で調達しなければならない。だから建設産業に関しては、関税など存在しないのである。だからTPPで問題になる訳がない。関税障壁があるとすれば、工法の認証とか工事契約とかソフト部分である。この点に関しては、むしろ日本が優位に立てる。例えば、新幹線や原子力発電所などのパック輸出である。むしろ日本の建設産業にとって、TPPこそが大きいビジネスチャンスなのである。
(12/12/14)

アメリカビッグスリーが日本のTPP加盟反対を表明。これは、要するに日本の農業団体がTPPに反対するのと全く同じ構図。アメリカもTPPで日本メーカーが入ってくるのを恐れているのだ。彼等が恐れている分野は自動車だけでなく、原子力や高速鉄道、航空宇宙産業。おりしもアップルがi-phonの外注業者を公開。その中に日本メーカーが相当数入っているのがあきらかになった。それどころか、アップルなど何にもやっていないことがばれたのである。こんなことでTPPに日本に入ってこられた困るというのは当たり前。日本では、TPPで日本が外国から攻勢を掛けられると云う見方が、アホマスコミや農水系政治家・官僚によって巻散らかされているが、実態はその逆。TPPこそが日本を拡大発展させるチャンスなのだ。
i(12/01/15)

今、韓国では米韓FTAに対する猛反対闘争が広がっている。先ほどのソウル市長選でも野党が勝利した。この流れで行くと、来年の大統領選では与野党逆転の可能性が濃くなってきた。仮に野党民主党が政権を取ったとき、米韓FTA の行方はどうなるのでしょう?既に韓国議会で・・・手続きは怪しいが・・・批准されているので、韓国側から一方的に破棄することは出来ない、と普通の人なら思うが、あの火病韓国人だから何をやり出すか判らない。対するアメリカだって、来年は大統領選。その結果によっては、アメリカもこれに倣う可能性もある。米韓ともに足下が定まっているとは云えない。日本としては、その顛末を見届けた上で態度を決める手もある。
 なお、これまでの韓国政変を見ると、政権逆転の後には、必ず前政権者の告発がが始まる。今回はFTAの恨みもあるから、前政権への追求は苛烈を極めるだろう。またまた、見えるのは、イーミョンバクの逮捕か飛び降り自殺。飛び降り場所に竹島か済州島を選べば、ミョンバクとして象徴的で本望だろう。
(11/12/01)

TPPって判らない。
 これにはマスコミによる誤誘導がある。マスコミには、自分が判らないことは、みんなも判らない、という思いこみがある。これは霞ヶ関の役人と同じ発想である。ある新聞の調査では、TPPが判らないという回答が76%あったと云われる。では”判らない”という言葉には、どんな意味があるのでしょうか?
  1、TPPそのものが判らない。
  2、TPPが損になるか得になるか判らない。
  3、TPPが本当に締結されるかどうか判らない。
  4、締結されても何時まで続くか判らない。
 同じ”判らない”でも、意味はそれぞれで大違だ。マスコミとか政治家は、この4種の”判らない”をゴッチャに使って居るのではないか、と思われる。TPP問題では、この4種を明確に使い分け、その延長線上での戦略を組み立てなくては、とんでもないことになるだろう。
(11/11/26)

TPPを巡る怪しい情報、三つを取り上げます
1、 TPPに加盟すると、遺伝子組み替え食品かどうかの表示がなくなり、消費者はどれがどうか判らなくなる。その結果、「富裕層は高価だが安全な非組み替え食品を買い、貧乏人は安価だが危険な遺伝子組み替え食品を買わなくてはならなくなり、食の格差が広がる」、なる論がマスコミ筋でまかり通っている。問題はこのような粗雑な論がテレビを通じて、直ちに一般庶民の脳に作用し、国民世論に化けてしまうことである。
 現在、我が国国内農産物で最大の流通量を占めるものは、大豆・トウモロコシ・麦などの穀物だが、その大部分はアメリカからの輸入である。そしてこれらの大部分は既に20〜25年前から遺伝子組み替えが行われている。更にアメリカではとっくの昔から、日本の数倍の遺伝子組み替え作物が流通している。この間、遺伝子組み替えが原因とされる疾患は、聞いたことがない。アメリカの場合、もし何らかの異常が発見されれば、・・・大学も含めて・・・直ぐに誰かが騒ぎ出す。そして連邦保健衛生局の検査になるが、アメリカ保健衛生局の検査態勢は、日本の厚生労働省ほどヤワではない。日本の検査行政は、規制値だけ高く設定し、あとは業者まかせ。抜け穴だらけ。役人の責任逃れだけが目的だからだ。アメリカが実質主義なら、日本は官僚教条主義の違いである。もし、日本の規制値が、アメリカや国際基準に比べ高くなっているとすると・・・これを日本の食品の安全性の担保と勘違いしている人が多いから困る。単に値段を釣り上げるだけが目的なのだ・・・TPP交渉で「これは何故か?」と詰め寄られると、誰も答えられないだろう。それこそ不当に高い規制値は、非関税障壁と受け止められてしまい、良いところは一つもない。
 遺伝子組み替え作物が何故危険なのか?日本人である筆者にもさっぱり判らない。この論のベースには、日本人のメンタリテイーには、何でも天然物は安全で、人工加工物は危険だという思いこみ(偏見)があるからだろう。更にこの背景には、70年代辺りから流行りだした左翼「反科学主義」と、日本伝統の農本主義の影響がある。
2、医療分野の自由化で混合診療が普通になり、手術にも特許料が加算される可能性があり、医療格差が発生する。そのとおりかもしれないが、今の日本で混合診療が可能な病院が一体幾つあるのか?一部の大学病院と総合病院くらいである。特許料が加算されるような手術は極めて特殊な手術であって、通常行われている手術は問題外。例えば、通常のガンの摘出手術など、何十年も前から行われている者については、一体誰が発明者だか判らない。そんな者に特許権は発生しない。未だ誰もやったことがない手術法を開発し、成功すれば、開発者に特許権を認めるのは当然だろう。それと、アメリカでは特許を取得する場合には、その内容を全部公開しなくてはならない(日本はこの肝心の部分が非公開であるため、誤解を産むのである。日本も特許内容を全てオープンにすれば良いだけだ)。だから特許料を払いたくなければ、公開情報を参考に新たな手術法を開発し、それで特許をとればよいだけの話しである。既に京大の山中教授は、ips細胞製造法で国際特許を取得している。現実の方が先を行っているのだ。
3、みんなあまり知らないようだが、日本はTPP参加国に対し、様々な投資を行っている。資源だけで見ても、オーストラリアには鉄・石炭、インドネシアには天然ガス、カナダにはオイルサンド、チリには銅といった具合である。この投資活動を保護する条項が、ISD(内国民待遇)条項である。TPP反対論者からは、これのマイナス面、つまり日本政府がアメリカ企業から訴えられる事ばかりが煽り立てられいる。しかし、プラス面は全く触れられていない。日本のTPP参加で一番慌てているのが、中国と韓国だろう。上記のTPP参加国には、中韓伴に、日本と同様資源投資を行っている。この両国の資源外交や政府調達には汚職・賄賂の噂が絶えない。例えば、日本企業がやっと成約にこぎ着けた案件を、ダンピングや賄賂で横からかっさらっていくやり方である。例えば、ドバイへの原発輸出も、日本が先に話しを付けていたのを、イーミョンバクが横からパクッテいった。ベトナム・トルコ原発はかろうじて守ったが、危ない者だった。ブラジルやアメリカの新幹線もその例。ISD条項はこの二カ国の、乱暴な経済外交を牽制する上で有効だろう。つまり、TPP参加国にも非参加国にも、やりたい放題はさせないということである。
 ISD条項は輸出品目については日本側に有利に働くと考えられるが、それを真に有効化するには、日本側に国際商取引に経験の深い法律家を抱えておくことが重要である。従来からの輸出型大企業では既に体制は整っているかもしれないが、これから海外進出に行かざるを得ない中小企業にはそのノウハウがない。又、各企業単独で闘うには不利な場面もあるし、効率も良くない。だから、政府特に外務省や経産省が支援しなくてはならないのだが、これが又頼りない。対外交渉能力がないのである。だから、この問題は経団連が主体をとって、対外訴訟を一元的に引き受ける法的代理人集団を作ることが急務だろう。
(11/11/24)

 オーストラリアが資源新税(利益の30%)を発表したが、これって、TPPならISD条項に引っかかるのではないか?オーストラリアもTPP参加国である。何処の国もTPPには弱みを持っている。アメリカだって例外ではない。
(11/11/23)

イギリスによる経済統合(ドーバーTPP)反対を叫ぶジャンヌダルク
「口絵解説」
 ジャンヌダルクが活躍したのは、今から約600年前、15世紀の始め。日本では室町時代初期、中国は明の時代。当時イギリスとフランスは所謂100戦争のまっただ中。この戦争は1337年に始まり、1453年までの116年間続くわけだが単純な戦争ではなく、それぞれに内乱や対立の火種を抱えた複雑な側面を持っている。この戦争はイギリス国王エドワードV世が、自分の母方の血筋を根拠に、フランスの王位継承権を主張したことに始まる。フランス側は当然それを拒否する。そこで戦争になる。実際には、その背景には、イギリスがヨーロッパ進出の足がかりを得る、という政略があったはず。1360〜1370年の一時休戦期間を挟んで、前後で戦争の性格が変わってくる。前半戦はどちらかというと、中世封建貴族の戦いらしく、領土拡大や王位継承権問題が中心だったが、後半戦ではむしろ経済・階級闘争的側面が出てくる。
 1370年戦争が再開される。これに対し、フランス側は一致してイギリスに対抗したか、というとそうではない。フランス北部と中南部とでは相当温度差があったのである。まず前世紀後半からイギリスでは自営商工業者(所謂ブルジョワジー)階層が現れ力を増やしてきた。彼等は教会とそれに指導される貴族たちによる干渉を嫌い、国王の保護による自由商業(日本で云えば楽市楽座制のようなもの・・・つまり直接税から間接税へのパラダイム転換である)を望んだ。国王にとっても、教会と貴族は、自分の言い分を一々規制する鬱とおしい存在。そこで両者に共通利益が産まれる。この影響を受けて、海の向こうのフランス北部(概ねロアール川から北)でも、同じ様なブルジョワジーが産まれ、それを後押しするブルゴーニュ公やノルマデ
ー公のような親英派貴族も現れた。彼等は国王や教会の権威を拒否し、自分達の権益を拡大するために、イギリスとの自由貿易を望んだ。それの理論武装を手助けしたのが、出来たばかりのパリ大学。彼等は後にイギリスと同盟を組んで、アングロブルゴニョラ国家を作り、更に英仏国家統合までフランス側に圧力を掛けてきた。これに著しく反発したのが、未だ中世的封建社会を色濃く残していた、フランス中〜南部の農民や封建領主。彼等民族派の先頭に立ち、シンボルとなったのがジャンヌダルクだったのである。1410年イギリスのヘンリーX世はノルマデー に上陸する。英仏統合国家の既定事実化である。彼等英仏同盟と、フランス民族派が真っ向からぶつかった街がオルレアンである。
 そこで問題はフランス国王の態度。当時フランスには国王がいなかった。前王の后が淫乱であちこちに子供を作ったため、誰が本当の後継者か・・・つまり子供達の本当の父親が誰か・・・判らなくなったためである。その中で血筋的に一番正しいと思われていたのが、王太子のシャルル(後のシャルルZ世)。ところがこれが煮え切らない男で、何せ当時フランス人口の9割は農民で、その代表がジャンヌ。彼女の主張を無視する事は出来ない。さりとて、イギリスの軍事力を背景にした北部を怒らせる訳にもいかない。現代の何処かの総理大臣そっくりだ。双方にヨイショをして、態度を決めかねている間に事態はドンドン進んでいく。
 要するにジャンヌダルクが生きた時代のフランスの状況と、今の日本とはそっくりなのである。ドーバー海峡を挟んで2国間の経済統合を計ろうと言うのが、パリ大学を始めとする北部地域で、これはTPPを推進する日本産業界。一方アンチイギリスの中南部農民階層は、当に日本の農業界。両者に挟まれてウロウロする泥鰌の野田が、煮えきれないシャルル王太子の役回り。では、日本にジャンヌダルクは居るのか?TPP断固反対派の亀井静香など役回りとしてジャンヌダルク的だが、幾ら何でも亀井とジャンヌとではイメージが違い過ぎる。
 なおその後だが、1429年ジャンヌダルクとその支援者はオルレアンを解放し、更にパリに進軍し、ランスでシャルルZ世の戴冠式をおこなった。オルレアン派の巻き返しである。しかし、イギリスも負けていない。翌年、ジャンヌを異端の廉で逮捕。1431年処刑。間違えていけないのは、未だこの当時パリやフランス北部はイギリスの支配下にあったこと。ジャンヌはイギリスの法で裁かれたのである。しかしその後フランス民族派の反撃が続き、ジャンヌの処刑後22年経った1453年、イギリスのヨーロッパに於ける最後の拠点だったカレーが陥落し、ここにフランスは遂に全領土を回復した。以後、イギリスはヨーロッパに於ける覇権を諦め、海洋国家への道を目指さざるを得なくなる。なおこの同じ年、コンスタンチノポリスが陥落し、東ローマ帝国が滅亡した。近世の幕開けである。
 では近世という時代は、人民にとって良い時代だったか?人間は進歩したか?とんでもない!近世という時代を通して、国王とブルジョワジーの結びつきが強まり、利権が国権そのものとなり、人民の保護者であった教会や貴族の権威は落ちぶれた。貧富の格差は広がり、当に近世とは・・・中世は国王にとって教会の規制に縛られ暗黒時代であったが、人民にとっては天国だったとは逆に・・・人民にとって暗黒時代だったのである。カレー陥落の約70年後、中欧ドイツではマルチンルター(橋下)という怪しげな妖術使いが、バチカンからの独立、国王(都知事)による人民の直接支配(つまり王権の強化、この行き着く先が絶対王政。ある人は、これが地方分権の本質と言うが、実態は中央集権の強化、政権の専横・腐敗)という”維新”を掲げて、各地の王侯(政治家)をたぶらかしに廻っていた。これにひっかかった人間が多く、その後ヨーロッパを更なる混乱に陥れていくのである。近世とは人間の更なる堕落の時代だったのだ。では市場経済主義が支配する今の時代は、進歩か堕落か?
(11/11/21)

とうとう日本もTPPに参加。対中対韓圧力の効果はある。折からオバマは中国に元切り上げを要求。両者は何処かでリンクしているような気がする。ついでに韓国にもウオンの対ドルヘッジを止めるよう要求すればよい、と日本人は思うが、そうはならない。韓国から共和党に相当の政治献金が行われているのか、或いはウオン切り上げで韓国経済が混乱すると、それこそ北朝鮮の思うつぼ、という脅しが浸透しているのか。
 それはともかく、これまで日本のTPP 参加は、日本国内特に農業界に影響を与える事だけが注目されてきたが、実はそうではない。関係国の産業界、特に製造業に大きな影響を与えることになるだろう。既にアメリカの自動車業界は、(日本の)TPP参加に反対する声明を出している。航空宇宙産業や原子力・エネルギー産業でも、TPP交渉の進展によっては、今後同じ様な動きが出てくる可能性はある。つまりどの国もそれぞれの団体の思惑によって、態度が異なるのである。かつて、ローマ帝国もオスマントルコ帝国もTPP帝国だった。その結果、帝国の資産は周辺新興国によって食い散らかされ、遂に滅亡し、残された国は関税で食いつなぐしか能がなくなったのである。だから、今回のTPPも果たして何時まで続くのやら、10年も持つでしょうか?
(11/11/14)

 TPPは日本潰しのためのアメリカの陰謀という説が巷間に流布しています。目的は1400兆円の個人資産。そうかもしれないが、日本を潰したところで、アメリカは一文の得にもならない。NAFTAでアメリカは何を得たか?麻薬と不法入国者と若者失業者だけ。韓米FTAで、オバマはアメリカに8万人の雇用を産むと云った。しかし、これは嘘である。アメリカ産業界は雇用を増やすだろう。しかし、それはアメリカではなく、ベトナムや中国だ。儲けるのはGMやGSの経営者だけ。従って、アメリカの経済格差は更に広がるので、長期的に見れば、民主党にも共和党にも得にならない。TPPも同じで、アメリカで増えるのは失業者だけ。いい加減に自由主義経済学者が描いたバラ色のインチキから目をさますべきだ。全くアメリカ人というのは頭が悪い。日本人もそうだが。
(11/11/03)


 アメリカ通商貿易代表が、日本の早期TPP 参加を強く要請。半ば脅しの様な文句だが、実はこれ、アメリカの方が焦っている証拠。実はTPP参加を表明している国は大して多くはない。全部合わせても、日本の対米貿易額には遙かにおよばない。おまけに、チリが内容によっては離脱の可能性を示唆。ここで重要なのは日本の存在。韓国が幾ら騒ごうが気にする必要はない。
 みんな、いささかサムスンの動きに惑わされ続けている。あの会社は、来年韓国大統領が代われば、大統領と一緒に会長も逮捕されるかもしれない。
(11/10/29)


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