福島第一原発汚染水タンク処理に関する技術提案

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 確か09./13の毎日新聞記事だったと思うが、福島事故対策案を国内外に公募する、という記事があった。項目は
   1)トリチウムの除去方法
   2)タンク基礎の補強方法
   3)タンクからの漏水検知方法
   4)汚染地下水の処理方法
 何故こんな程度のものまで、外国に頼ろうとするのか?それが理解できない。逆にこの程度の問題に解答を出せない、国内企業や研究者の能力劣化が問題なのである。

1)トリチウムの除去方法
 これは既に1950年代には完成している。トリチウムという物質は、自然界に一定割合で存在している水素同位体である。又、海水中には大量に存在する。水素・重水素とトリチウムは質量は違うから、これを遠心分離器にかければ、トリチウムを分離出来る。結構単純な原理なのである。ただしその前に濾過や水素のガス化など、ややこしいプロセスが必要であるが、それを使えばトリチウム除去は難しい話しではない。この程度のことは誰でも知っていることなのです。
 実はトリチウムは・・・・トリチウムだけではダメですが・・・水爆の原料なのです。初期の水爆は、重水素とトリチウムをぶつけてエネルギーを得るというやり方をやっていました。これでは水爆が大きくなってしまうので、今では重水素ーリチウム型水爆の方が主流になってるはずです。又その設備を持っているのは、今のところアメリカ・ロシアと、後は中国とイギリス・フランスとせいぜい日本ぐらいで、何処にでもあるというものではない。ただし米露中仏英は、現在ではトリチウム製造プラントを廃止しているか、動かなくしているはずです。日本にも熱核融合炉研究のための、トリチウム製造プラントはあるはずですが、研究用だから急な用には役に立たない。従って、アメリカかロシアに委託と云うことになるが、どちらも核軍縮交渉に妥結したばかりだから、外国からのトリチウム処理を引き受ける訳がない。だから嫌でも処理プラントを別に作って、国内処理にならざるを得ないでしょう。
 ところが、既に日本は数100tのプルトニウム・・・軽水炉産だから現実には役に立たない・・・を所有し、更に昨日イプシロンロケットの発射にも成功した。固形燃料ロケットだから、軍事転用は可という見方はある。ただしその割に図体が大きいから、潜水艦にも、トレーラーにも積み込めない。要するに役に立たない。更にここにトリチウムが加われば、日本は将来核武装に踏み切るのではないか、と疑う国は疑ってくる。
 問題は除去されたトリチウムの後始末をどうするのか?それに日本政府が・・・国際的にも納得される・・・明確な答えを持っていなければ、海外企業は乗ってこない。国内企業でも、日立・東芝など海外展開している企業は、同様の反応を示すだろう。

(1)現在世界中に存在する人工トリチウムの大部分は、1950年代の米ソ、1960〜70年代の英・仏・中の大気圏核実験によって、もたらされたものが大部分である。現在未だそのかなりのの部分が残っている。それに比べれば、今回福島第一原発で排出されたトリチウムなど、ゴミみたいなものである。
(2)トリチウムは仮に吸収しても、2週間程度で対外に排出され、健康的には殆ど影響はない。
(3)トリチウムの半減期は12.3yで、セシウム134やストロンチウムSr90に比べ、1/3〜1/2以下になる。つまり数10年ぐらい経てば、殆どは安定同位体に替わってしまう。

 以上の理由から、筆者には何故アベがトリチウム除去に拘るのか、理解出来ない。現在漏出しているトリチウムなど、除去する必要があるのでしょうか?。むしろ、分からず屋の漁協とか、無責任にあれこれ非科学的騒ぎを起こす、国際的反原発テロリストを除染するべきだろう。

2)タンク基礎の補強方法
 この問題は実は次の三つの命題に分かれる。
 (1)基礎地盤の地耐力不足
 (2)基礎の耐荷力不足
 (3)タンク底盤の強度不足

 問題をどれかに絞らなければ、答えが返ってこないのは当たり前である。ところが日本の役人はしばしば、問題あやふやにしたまま、答を要求することが多い。東電という会社も十分官僚的体質会社である。筆者はこれまで役人のあやふや要求(これは国交省とか、農水省のように中央官庁に多い)で、散々煮え湯を飲まされた経験があるから、ウッカリ解答を出す気にはなれないが、とりあえずの所見を述べておこう。

(1)基礎地盤の地耐力不足
 タンク高さは11mであり、荷重度は常時で110〜120KN/u、地震時でその3割増しとしても、せいぜい150〜160KN/uに過ぎない。一方本タンクヤードは地形には、阿武隈山地東方に発達する洪積世の海岸段丘上にあり、地耐力は少なくとも300〜500KN/uはあるので、地対力は問題無いと言うのが、常識的判断である。ところが一部のタンクで、水張り試験で8pという大きな沈下量があった。更にその周囲の張りコンクリートにもクラックが入っている。常識的には沈下量はせいぜい2〜3pと言ったところ。コンクリートにクラックが入るなどあり得ない。従って、8pという沈下量は明らかに異常である。何故こんな異常値が出てきたかは東電の説明が必要だが、筆者は敷地造成時の施工ミスと考えている(13/08/27)。と言うことは、この問題を全タンクに及ぼす必要はない、ということだ。そして、それは各タンクの水張り試験データを見れば、一目瞭然の筈なのだ(ただし、試験が正常に行われ、データの改竄・捏造が無い、という条件が必要)。
 もしこれで、地耐力不足と疑われたタンクが現れればどうすべきか?基礎地盤の補強工法には色々あるが、どれももの凄く高くつく事と、基礎地盤は強化されても、上部構造物が却ってガタガタになるので、百害あって一利なし、というケースが少なくない。代替タンクを作って、貯留水を一旦そこに移し、タンクを解体した上で、基礎地盤を改良するか、放置するかを考えた方が安く付くだろう。

(2)基礎の耐荷力不足
 一般に危険物貯蔵施設としてのタンク基礎には
 @ベタ基礎
 Aリング基礎
 Bクイ基礎
 が用いられる。地盤条件から見てBクイ基礎はあり得ないので、@かAのどちらかだが、どちらも基礎には鉄筋が入るので、幾ら基礎地盤が段丘層で無くても、(1)で挙げた8pという大きな沈下量などあり得ない。と言うことは、基礎に鉄筋が入っていないという構造上の欠陥が、他のタンクにもあるのでは無いかという疑いを作る。ところで上に挙げた基礎種類は、恒久施設としてのタンクに対してである。恒久建造物であれば建築基準法による認可*が必要である。しかし短期的な一時貯蔵施設であれば・・・要するに仮設構造物・・・、その手続きは必要ではなく、タンク基礎も必要ではない。今回のタンク群建設には、その種の行政上の抜け穴をくぐった可能性が大である。と言うことは、タンク基礎の設計や施工上の記録が全く無い(仮設だから、記録保管の義務もない)というケースも十分あるのだ。本タンク群の設計・築造に関し、東電がどういう発想で臨んだか、というのは非常に大きな要素である。これを知らずに、あれこれ云っても、却って馬鹿を見るだけでは無いか、という根本的な不信を抱かざるを得ない。
*汚染水の放射能線量によれば、これ以外に危険物貯蔵施設としての設置許可が必要。

(3)タンク底盤の強度不足
 タンク底盤は一枚の鋼版で出来ているわけではない。数枚の鋼版を溶接で繋ぎ合わせているだけである。もしタンク基礎が無かったり、底盤地盤に凹凸があれば、底盤に弱点が生じ、汚染水を貯めれば、そこに水圧が集中する。この結果、溶接が矧がれたり、溶接部分で底盤が引き裂かれる事もある。この問題は要は溶接の問題なのである。

 それはそうと、筆者はこれをもの凄く難しく考えていたようだ。それは汚染水をタンク内に貯蔵したまま、基礎の補強をやらなければと思っていたのである。これは確かに大変難しい(不可能とは云わないが)。処が、本日(13/09/21)、新聞を見ていると、なんとタンクを空にして、内部のボルトを締め直しているではないか。タンクを一時的にでも空に出来るなら、上記の問題は一挙に、実に簡単に解決出来る。工事の手順は以下の通りである。
@まずタンク底盤調査を行う。この目的は@底盤に傷が入っていないか、溶接に乱れが無いかのチェック、A底盤下に隙間が無いかどうかのチェック、である。@については上面からの目視観察、Aについては超音波探傷診断などで調査する。最近は非破壊検査技術が進んでいるので問題はない。問題は汚染水を移送した後のタンク内放射能強度だけで、これが強すぎれば、探傷技術に新たな開発が必要になるかもしれない。
Aタンク底面にゼオライトかベントナイトの様な吸着性物質を散布被覆する。その上に防水シートを重ね、上から更に吸着材を重ね、最後にコンクリート吹きつけを行う。防水シートと云っても只のビニールシートではない。トンネルNATMで使う防水シートを使用する。底面版の撤去は不要である。コンクリート吹きつけ厚は30p程度が目安。
Bコンクリート硬化後、ロックボルトを打設して基礎と地山を一体化させる。@で隙間が見られたら、そこにコンタクトグラウトを行う。

 以上でタンク基礎の補強・防水化は完了である。

 次ぎにタンク本体の補強と防水化に移る。タンクを空に出来るから、これも基礎の補強工と同じ作業を繰り返す。
@まずタンク内面にコンクリートを吹きつけを行って、セグメントとフランジ間の凹凸を埋める。
A次ぎにコンクリートが硬化しないうちに、防水シートと吸着材を貼り付ける。
Bコンクリートを吹き付ける。

 しかし、タンク自身の強度が弱ければ、ボルトが緩んだり、セグメントの隙間が開く。それによって内部止水工がダメージを受ける。これに対しては、タンクの外側をPC鋼線により緊張をかける。これにより、タンク強度を緊張度にもよるが、10〜20%は増加出来る。必要であれば、再緊張をかけることも出来る。なんら問題はない。

以上でタンクからの防水対策及び駆体補強は完了である。

3)タンクからの漏水検知方法
 率直に云って、目的がよく判らない。上記2)の対策で、タンク及び基礎からの漏水は防止出来るから、今更漏水検知など必要ではないはずだ。だから、タンクが現状のままで、2)に先だって、漏水タンクかどうかを判定するための漏水検知なら理解できる。
 これは実に簡単な問題で、何故こんな初歩問題を公募するのかよく分からない、と言うのが筆者の率直な感想である。地すべりに経験のある技術者なら5分で答を出す。出せなければパーだ。漏水検知の目的には
(1)漏水量検知
(2))漏水地点の検知
 の二つがある。
(1)漏水量検知
 これはタンク頂部からの水位測定とか、タンク底盤に高精度間隙水圧計を設置すれば事足れるので、たいした話しではない。
(2))漏水地点の検知
 これもあまりたいした話しではない。タイミングとしては、2)の前段階とイメージすればよいのだろうか?
@タンク内にトレーサーを投入する。トレーサーとしては何種もあるが、バックグラウンドとして放射能強度が高い事を考慮に入れなくてはならない。
A結論としては、蛍光発色剤が一番簡単で誰でもよく分かる。一般にはフルオレッセンソーダを使うが、べつに”バスクリン”でも構わない。漏水個所があれば、紫外線を当てると蛍光を発するので誰でも判る。タンク底盤からの漏水も、そういう水は一旦は、必ずタンクと地面(或いは底盤コンクリート)との境界から、外部に浸潤するので、底面部に紫外線を当てて観察すれば、必ず検知出来る。

 
4)汚染地下水の処理方法
 これはタンクからの汚染水対策と、原発本体からの対策とで異なる。更に既に流出している汚染水と、これから生じ得る汚染水とでは、対策の方針も異なるのである。これは実は複雑に関連し合うので、簡単な話にはならない。ここでは汚染水タンクからの漏水対策に絞る。
 まず2)でタンク底盤や駆体の漏水が防止できるので、今後汚染水の増加は防げる。従って、問題は既に地下に浸透した汚染水対策に絞れる。これの基本工法は地下水排除工である。これは従来の地すべり対策事業で、十分成熟した技術である。これについては既に述べてあるので省略。
(13/09/22) 


汚染地下水対策

 そもそもことの発端は、東電が汚染前の流入地下水を海へ放流する計画を地元に打診したところ、たった一部の漁協が反対し、その結果が、国を挙げての福島汚染水対策。実態は東京オリンピック誘致のためのパフォーマンス。何事も外圧が懸からねば何もしないのが、この国民の性。なお、反対漁協組合長は、東電の鼻先を引き回し、国からか法外な金をふんだくるのに成功したのだから、さぞかし鼻高々だろう。
 さて福島汚染水対策、総額500億とも云われるが、そもそも問題は何か?全く関係のない事をマスコミも、政府も政治家も、みんなゴッチャにしているのだ。その結果が500億という法螺金になってしまった。これらを別々に解決していけば、コストは数分の1以下で済む。
1、原子炉建家への地下水の流入
2、流入地下水の放射能汚染
3、汚染水貯蔵タンクと、タンクからの漏水
4、原子炉建家と付属施設からの汚染水の漏出
 これらの解決には
5、地下水の流入経路と、建家からの流出経路の確認が何よりも必要だが、東電はこれについて、何ら具体的な解答を持っていない。これが最大の問題である。

1、原子炉建家への地下水の流入
 建家への地下水流入量は”たった一日300t”である。これを”たった”と表現するか、”300tも”と表現するかで、世間の印象は大違い。今の世間感情では、どうも後者の印象らしいが、それは実際を知らないシロート考え。300t/dayを分当たり水量に直すと、200l/minに過ぎない。これは土木では殆ど湧水と見なされないレベルである。通常の工事なら、側溝を掘って釜場に集め、1t/min程度の水中ポンプで排出してしまうレベル。日常的な現象なのである。今の土木屋は、この程度の湧水すら処理できないのである。
 新聞によれば、原発建家背後に15本の井戸を掘って、地下水を汲み上げている。誰がこんな馬鹿馬鹿しいことを、東電に奨めたのでしょうか? 別にやってはイカンとは云わないが、もう少し知恵を出しても良いと思はないでしょうか?。通常は別の方法で地下水流入経路を調査し、そこに向けて集中的に対策をやるものである。15本の井戸がその調査だ、と言うならそれでも構わない。しかし15本の井戸の、全ての揚水量が同じであるはずがない。揚水量の多い井戸もあれば、少ない井戸もある。その分布が@地下水流入経路なのである。また、各井戸掘削時に透水試験(低圧力のルジオンテストでよい)とか流向流速測定をやっておけばA透水層の垂直分布が得られる。両者を組み合わせれば、地下水流動機構、つまり地下水の透水経路が得られる。そこに集水井を掘削し、集水ボーリングで地下水を集め、排水ボーリングで海に排出する。200l/min程度の出水量なら、100〜150o程度のパイプで十分排出出来る。これは何も奇をてらった工法ではない。地すべり対策工では、何処でもやっている標準的工法である。凍土壁*など全く必要ではない。ただし、排水は放射能に汚染されていないことの確認が必要である**。第一、地下水の湧出は今に始まったことではなく、原発開設以来常にあったはずだ。その時の状態をよく調べておけば、どの辺りで地下水が多いか、大方の見当は付けられるはずである。更にとっくの昔に地下水対策工をやっておけば、今頃こんな僅かな湧水で、大騒ぎする必要はなかったのである。
 ところが現在東電から示された対策工は、漫然と施設の周囲を取り囲む画だけ。地下水の流れとか、そういう特異性は全く考慮されていない。こんな画は工業高校のレポートでも描ける。土木というより、建築屋の画だ。
 ここで厄介なのは、3、汚染水貯蔵タンクと、タンクからの漏水だ。問題をこれと関連付けさせないためにも、発電所を含む広域の地下水調査が必要なのである。

*そもそも、福島第一原発の所為で、日本中の原発が止まり、そのあげくが膨大な貿易赤字。おまけに国民は、やれ電力料金値上げ、やれ節電で大迷惑。そのあげく出てきたのが、凍結工法という電気を贅沢に使う工法。これでは筋が通らない。そこを追求するメデイアが全くないのは、どういう訳だ?
**これが出来るには関連漁協の承認が必要だと言うが、何故必要なのでしょうか?そもそも、これは関連10漁協の内9漁協までは承認している。僅か1漁協のみが反対しているだけなのだ。こんなのは、漁協幹部を金で買収するなり、なんなりすれば、どうにでもなる(その漁協も最近軟化しているという話しもある)。凍土壁300億に比べれば易いものだ。それで云うことを聞かなければ、東電はデータを揃えて裁判所に強制執行を請求すればよいのである。なお、これが国直轄工事になれば、それこそ区分所有法を使って強制執行はやりやすくなる。無論反対派は人間を送り込んで実力阻止だ。成田三里塚闘争の二の舞みたいだが、今の左翼にそんな根性はない。
 
2、流入地下水の放射能汚染
 1、によって地下水の遮断又は経路変更が為されれば、この問題は自ずと解決する。残りは原子炉建家内に溜まった水処理だけなのだ。後はALPSの回復を待つだけとなる(筈だ)。

3、汚染水貯蔵タンクと、タンクからの漏水
 これは結構厄介な問題である。現在使われているセグメント式タンクは、今の日本では地上設置型の永久貯蔵施設としては認められていない。筆者もこんなの見たことがない。このタイプの壁体は、土木では大口径深礎の抗口支保工ぐらいで、他にはちょっと見あたらない。どっちみち仮設材だから、耐用年数は数年くらい。その後は解体してメーカーのメンテナンスを受けなければならない。つまり、東電はここ数年の耐用年数内に、これの処分を決めなければならない。
 タンクからの漏水は、@タンク基礎部からの漏水と、Aタンク本体からの漏水に分けられる。@は基礎処理や底盤部の施工不良が原因である。しかし、これはタンク築造直後の水張り試験で容易に検知出来る。つまり、水張り試験結果(試験がまともに行われておればの話しだが)を見れば、どの範囲のタンクに問題があるかどうかは、一目瞭然なのである。しかもこれは非常に早く現象が現れる。極端には、タンクを満杯にした直後にも現れるのである。
 一番見分けにくいのはAタンク本体からの漏水である。これはタンク本体の構造的欠陥に由来する。この方式では各セグメントの接合部にポリウレタン材料を挟み、それをボルトで締め付ける。ここでの問題は止水材(ポリウレタン材)の材料劣化である。この原因は二つある。接合材であるポリウレタン材料の放射線に対する耐久性。もう一つは鉄とポリウレタン材との熱膨張率の差による繰り返し応力による、止水材の劣化である。これはセグメントを緊結するボルトの耐久性にも影響する。それだけでなく、紫外線照射によるタンク本体の発錆も生じている。これまでの漏水は主にタンク基礎からだった。これはある程度、場所を特定できる。しかし、今後はタンク本体からの漏水が頻発する可能性がある。そしてこれらの汚染水が地下に浸透する可能性が、もっと大きな問題である。この問題は2〜3日前から気が付いていたのだが、ここに書き込む前に昨日(13/09/05)に東電が、その事実を発表しました。これらを考えると、タンクからの漏水は今後更に拡大すると考えられる。

4、原子炉建家と付属施設からの汚染水の漏出
 これは地震後半年ほど経って発生した、電源ケーブル用ボックス(いわゆるトレンチ)からの漏水である。これが発覚して東電がやった対策が、係船岸壁外側への(1)シルトフェンスの設置、(2)鋼矢板壁の打設。そして現在施工中の(3)水ガラス壁の築造である。東電(及びアベ総理)は、これを三重の防護壁と称し、アベは完全にブロックされていると内外に声明した(13/09/08ブエノスアイレスIOC総会)。事実は全く逆で(1)(2)が全く効果が無かったので、慌てて(3)をやっているのに過ぎないのである。
 (1)シルトフェンスとは網です。シルト(粒径0.076o)以上の粒子を通さないだけの効果しかない。それ以下の粒子(粘土やコロイド)は通ってしまう。鋼矢板は確かに、土木工事での止水に使われるが、矢板同士の間に隙間があり、完全に水を遮断出来る者ではない。止水と言っても、工事に差し支えない程度のレベル。水は必ず漏れるのである。その証拠が、小名浜海水面潮位と、敷地内地下水位との関係(東電HP)潮位と地下水位には明瞭な相関があり、地下水と海水が連動していることは顕かである。誰がこんなことを東電に奨めたのでしょうか?
 それが今年になって判って、慌てて始めたのが岸壁内での(3)水ガラス注入。東電はこれにより、水ガラス壁を作ると言うが、そんなこと出来るのでしょうか?第一に、水ガラスはその名のとおり、液体である。これを圧力を掛けて注入すれば、土の空隙や、岩盤の割れ目を通って網目状に浸透するが、これは必ずしも面的に連続しない。団粒状あるいは切れ切れ状態になってしまう。これではとても遮水壁とは云えない。第二は、水ガラスの材料劣化である。これは必ずしも確認されていないが、一昨年、水ガラスで止水した2号機トレンチで、再び漏水が確認されている。この原因に水ガラスの劣化が挙げられている。それと不思議なのは、取水部は止水壁築造区間から外されていることだ。これなら陸上部水位が海水面より高くなれば、汚染水は海に幾らでも流出する。だから何のための止水壁なのかが、判らないのである。
 筆者は外壁止水工をやっちゃいけないとは云わないが、やるなら工法を工夫すべきである。筆者は水ガラス単独ではなく、セメント+ベントナイトを併用すべきと云っているのである。この工法では、水ガラスはあくまで瞬結導入材であり、セメント(よりはセメント系固化材の方が、長期的には効果がある)による柱列造成が主役である。この方法では高価な水ガラスを最小限しか使わないから、実はコストは遙かに安くなる。しかも安定的な改良壁が作れる。だから今の土木では、LW単独注入などやらないのである。それをなんと既に捨てられた工法が復活する。何故か?そりゃゼネコン(カジマ)が儲かるからだ。
 と言うことで、現在東電がやっており、かつ今後公共事業になりかねない、外壁部の水ガラス注入はコストばかり懸かり、殆ど効果を発揮しないだろう。それと不思議なのは海水取り入れ口が注入工から外されていること。今陸上部の地下水位が上昇し、汚染水が止水壁を越えかねない勢い。こんな時に海水取り入れ口を開放しておれば、そこから汚染水が幾らでも流れ出す。何となく、頭隠して何とやらの風情である。

5、問題の認識の差 
 ある計画をするとき、目標をどう設定するかで、計画内容・規模は大幅に変わってくる。それが東電計画ではよく判らない。東電の地下水対策委員会で何が話されたのか、それが明らかになっていない。こういう委員会では、しばしば声の大きい奴の言い分が通ってしまう。それが委員会の空気を作ってしまうのである。過日BS8プライムニュース、ゲストは東電社長と立地本部長*。ゲストコメンテーターというのがいて、これが東大工学部原子力工学科の准教授か何か。この三人が皆東大。さて東大准教授が何を言い出すかと聞いていると、「地下水は一滴も漏らさないことが大事です」と。それに対し東電側は反論も何もしない。つまり、この準教授の主張は、東電も予め了解済みということなのである。逆に言えば、これが委員会の結論ということでもある。要するに八百長(委員会に八百長は付き物と言うことを一般ピープルは知らない)。この「一滴も漏らさない」方針が例の総延長3000mに及ぶ凍土壁に繋がるのである。問題はこの「一滴も漏らさない」方針が、技術的・経済的合理性を有しているかどうか、である。この様な絶対的方針が打ち出されると、その後はこの方針が一人歩きして、方針を護ることだけが事業の目的になってしまう。この例は幾らでもある。その最悪がかつての戦争なのである。
 そもそも、遮水工法には(1)粘土グラウト、(2)地中壁、(3)凍結壁の3案があったと聞いている。これらの内(3)凍結壁は最も工費が高いが、遮水効果が高いと言うことで採用となった、と報道されている。凍結の遮水効果が高いのは、誰でも知っていることで、そんなことわざわざ委員会で審議するまでもない。問題は対費用効果ということなのである。委員会も東電もこれを無視して、(3)凍結壁になだれ込んでしまった。この原因に考えられるのが、「一滴も漏らさない」という呪文なのである。
 それに対し筆者は、適当な地盤処理で地盤の透水性を下げれば、湧水量が下げられるから、その分処理施設の負荷が下がる。その間に次のステップの対策を考えれば良い、という考えである。要するに対策実現に柔軟性を持て、ということだ。例えば透水性を1/10に下げれば、湧水量は1/10に低下出来る。1/100なら1/100だ。工学的にはそれで十分である。先日仙台の一般市民女性から電話があって、筆者の考えを説明すると、この方が良く判るというご返事。一般市民は学者や役人が懸かりやすい呪文と無関係である。だから却って道理がよく判る。一般市民よりは、むしろ学者・役人・政治家の方が、ものの道理が判らないのである。何故なら、彼等はものの道理より、自分の体面を重んじることと、専門家の蛸壺にはまっていること、何よりも建前という呪文に束縛されるから、外界が見えなくなっているからである。
*これは要するに地上げ屋の親分だから、技術など判らなくても務まる。ウッカリ技術など判らない方が都合が良いのだ。

6、新たな問題
 この節を書いている最中に汚染水が地下に浸透し、地下水面に達しているという報道。実は東電はズーット前から判っていたのではないか?それを今まで隠していたのは、国費投入のタイミングを見計らってのことか?
 そもそも筆者はこの問題が起こる遙か前の11年4月には、原発外周カーテングラウチング必要の可能性を示唆しています(11/04/03)。筆者が示唆したとおり、事故直後にこれをやっておれば、事態はこんなに深刻化しなかったでしょう。しかもこんなグラウチングは大したものは必要ない。ちょいと透水係数を下げれば用は済む。ハイダムのカーテングラウトとは訳が違う。それを電力屋は同じように考えるから、問題が混乱するのである。
 筆者なら、@とりあえず凍土工法に代表される東電=委員会案はゴミ箱に捨てて、始めから考え直す。A改めて敷地内外で徹底的な地質・地下水調査を行い、地下水流動機構を明確化する。その上で、B以降の各工法諸元を決める。B凍土工法はキャンセルし、発電所外周にカーテンクラウチングを行う。Cその後敷地内で集水井工を行い、敷地内の地下水を排除する。D排除された地下水を、一旦放射能除去装置を通した上で、海中投棄とする。E海側の水ガラス注入は止めて、CB注入に変更する。F護岸から外部防波堤間の海域を埋め立てる。これの意味は一つは、海域に流入した放射性物質と生態系との接触を遮断することである。もう一つは、どうしても汚染水タンクヤードは、今の面積では足りないので、不足分を確保する事である。
(13/09/07)