アタカマ砂漠のリチウム工場

技術士(応用理学) 横井和夫


 やれSNSだ、電気自動車、やれAIだ、と何かと電気化・IT化が流行る今日この頃。いくら騒いでも、基本的な物質がなければ何にもならない。これらの製品に必須の物質がリチウムです。ではリチウムはどういう処で生産されているのでしょうか?その一例を探ってみます。

これは南米チリの衛星写真です。中央のアンデス山脈が、東に大きく湾曲している部分がアタカマ砂漠。その中心に何やら白い斑点のようなものが見えます。
 この辺りは南米大陸西岸中央に広がるアタカマ砂漠。世界で最も雨の少ない地域の一つです。 
   上の図を拡大してみましょう。中央上のAとした部分が、上の図の白い斑点です。白い部分は塩です。つまりAは巨大塩湖です。
 しかしここで取り上げるのは、これではありません。Aから南西に数100㎞離れたB点です。
 B点の拡大図です。中央に湖があります。湖の周囲に白い帯がありますが、これは潮です。従ってこの湖は塩湖ということがわかります。
 湖の左端中央に、なにやら四角い人工構造物のようなものが見えます。これはなんでしょう?
 なお湖の周りに円錐状の丘が多数見られますがこれらは皆火山です。つまりこの辺りは、濃密な火山地帯でもあります。
 上の写真を拡大したものです。湖に浮かぶ四角い人工構造物とはこれです。青や白の四角いパネルを組み合わせたものです。果たしてこれは何でしょう。なんとなく太陽発電パネルのようにも見えますが。これこそがリチウム製造工場となる池です。
 このプラントでは、地下の高濃度に塩分を含む地下水を井戸で揚水し、それからリチウムを抽出しているらしい18/05/20放映のNHKアーススキャンの映像はここまでですが、ここではもう少し奥まで入ってみます。
 更に四角いパネルを拡大します。パネルに見えたのは、揚水した地下水を貯留する池です。真ん中の池に注目します。池の端に井戸があって、そこから地下水をくみ上げ、それを池に放流している様子が見えます。
 汲み上げた水の最初は、地下水、掘削泥水、掘削土砂が混じった高濃度の泥水です。これが比重によって次第に分離されます。右と左の池に溜まった、泥の上にみられる白い部分は塩です。
 アタカマ砂漠は降水水量が殆どない乾燥した場所ですから、地下水から塩を分離するには都合がよい。緑や青に染まった池は、リチウム分離のため、何らかの化学処理をしている過程と思われます。その結果、湖の水質はどうなるのでしょうか?
 実は最近中国が、南米でのリチウム資源開発に乗り出しているという情報があります。 その目的は世界のリチウム資源を独占し、更にはリチウム電池市場を独占し、SNSからEV、ひいては航空機産業の支配を図ろうというものです。このプラントが中国資本の支配下にあるとは言いませんが、その可能性はあります。
 この辺りがあの国が世界史から100年以上遅れているという理由です。資源を独占して覇を唱えるというのは、19世紀後半の帝国主義の理念。19世紀半ばに始まった、電気を使うという第二次産業革命は、西欧各国に深刻な失業問題をもたらした。これは特に農村の疲弊に繋がった。農村失業問題の解決と、新しい産業資源を確保するために、西欧各国が走ったのが植民地確保と拡大。その目的は土地と資源(もに金・銅のような金属資源と石炭(のちに石油)の確保。それが地政学という、全く学問に値しない博打術、その尻馬にのった政治とが結びついたのが帝国主義である。
 元々ろくでもない手段だから、たちまちほころびが出て、ついたところが第一世界次大戦。これの収束にも失敗して、続いて起こったのが第二次世界大戦。これで古い帝国主義国家はあらかた潰れてしまった。日本も遅まきながら、19世紀末に帝国主義の仲間入りをするが、時既に遅く世界の大半は欧米列強によって分割されていた。そこで手を出したのが昭和に入ってからの満州だが、このとき既に帝国主義は時代遅れになっていたのである。何時も世界の潮流から遅れて、真似を始め気が付いた時には取り残されている。この国のいつものパターンである。
 、しかし性懲りもなく、帝国主義の亡霊に取りつかれているのが中国である。この傾向は現在の習政権になって、更に強まっている傾向がある。かつての帝国主義国家が内部矛盾で滅亡したように、中国もいずれ滅亡するでしょう。資源というものは、一国で独占するより、多数で循環させた方が、遥かに経済効率が高く、且つ安定的に供給されるということは、過去の歴史が物語っている。
(18/05/21)