ミャンマーの活断層と地震

 先日ミャンマー北部でM6.6(6.8という報道もある)。震源地ははっきりしないが、マンダレー北方110〜120qの辺り(USGS)。マンダレー北方イラワデ川沿いには、下の北部の図に示す様に、N-S方向の明瞭なリニアメントが発達します。これらの周囲には分離小丘のような、顕かな活断層地形が見られます。まず、活断層と見て間違いないでしょう。今回の地震は、これらの活断層を震源にしたものと考えられます。ミャンマーの民主化、中国リスクを考えると、今後ミャンマーへの直接投資が活発化すると思いますが、その時はこの画像を参考に、安全な投資場所を選定してもらいたいものです。
(12/11/14)

04年スマトラ地震による余震分布と、今年04/11に起こったスマトラ沖地震の震源との関係。両者の位置がかなりずれているのが気に懸かります。
 ミャンマー西部のアラカン山脈沿いに、南北方向の顕著なリニアメントが見られます。 間違いなく活断層でしょう。これの南方延長がどうなっているのかよく判らなかったのですが、この図を見て、これがスマトラ断層に続くことが判りました。
(12/04/13)

 今は四川大地震がもっぱらの評判で、中でも中国の閉鎖性や官僚主義、大国主義が国際的批判の的になっています。そこで中国と並ぶ、いやそれ以上に閉鎖的なミャンマーという国は一体どうなのか、を調べてみました。といっても何も自らミャンマーに行った訳ではない。又、ミャンマーに関する文献を調べた訳でもない。第一、ミャンマーについては永年の鎖国政策でろくな文献など無いに等しい。そこで私が選んのは、誰でも手に入れられるグーグルアース。それも只で幾らでも見られるポピュラーバージョンという一番の安物。さてこの安物ソフトでミャンマーの実態に何処まで迫れるでしょうか?

 ミャンマーは北をヒマラヤ山脈東部に遮られ、南はベンガル湾に開いた南北方向に細長い国である。西はアラカン山脈からナーガ山脈に至る山系によりインドパンジャブ州、バングラデシュと接し、東はシャン高地を中心とする山岳地帯でによりタイ、ラオスと接する。東西の山岳地帯に挟まれて、中央部には南北方向の平原地帯が広がる。これの南端はイラワデイ川、シッタウン川河口の複合三角州地帯を形成しベンガル湾に接する。平原地帯南部の中間にペグー山脈が南北に走り、これをはさんでチンドウイン川、イラワデイ川、シッタウン川などの大河が南北に貫流し、その周囲に沖積平野が発達する。以下ミャンマーの構造地形について検討してみましょう。以下の画像は安物グーグルアースを用いて作ったリニアメントマップです。リニアメントは実線又は破線で示しています。実線は、誰が見てもまず納得するであろう強いリニアメント。破線はそれよりは弱いか、又は人によっては意見が分かれそうなリニアメントの意味です。
 ミャンマーは地質構造上ヒマラヤ・チベット高原から西に延び、丁度今回地震を起こした四川盆地の西で南に折れ曲がる変動区の延長に当たります。その結果、ミャンマーは古くから激しい地殻変動の場だったと考えられます。この変動区は更に南に延び、マレー半島からインドネシアに至る大変動帯を形成します。この変動帯の南縁を作るのがスマトラ断層で、三年前に大地震と津波を引き起こしたのは記憶に新しいところでです。
 

地域 画像 摘要
北部 ミャンマー北部の地形はナーガ山脈から東のクモン山脈、更にマリ川東方のラオス国境地帯にかけて大きく湾曲した山岳地形と、それらに囲まれた低地帯とで構成される。
 ナーガ山脈東縁部、それとイラワデイ川平原部西縁に互いに平行する、NNE-SSW方向のふたつのリニアメントが見える。これらはそれぞれが幾つかにに分岐しているようで、構造は単純ではない。
 平原部のほぼ中央にN-S方向のシャープなリニアメントが見える。これは南部地域でのイラワデイ川ーシッタウン川リニアメントに連続する。これは一つの構造線と呼んで良いだろう。仮にイラワデイ川ーシッタウン川構造線と呼んでおこう。これも周辺に分岐するリニアメントが見られる。
 東部山岳地帯ではナーガ山脈東縁リニアメントに平行なNNE-SSW方向のリニアメントが平原部と山岳部との境界に発達する。これ以外に、NE-SW方向のリニアメントが発達するようになる。
 なお。NNE-SSW方向のリニアメントでは、山地と平地との境界に明瞭な分離小丘陵が認められる。これは第四紀活断層の顕著な地形的特徴である。これによりこれらリニアメントは第四紀活断層と結論される。

 中央平原部の最北部、ナーガ山脈とクモン山脈との中間には、顕著な横臥褶曲構造が見られる。日本では三波川タイプの褶曲構造に酷似する。その周囲の山岳地にはその様な構造は見られず、日本ではどちらかというとフォッサマグナの第三系に見られるタイプである。基盤の地質が大きく異なっていることが予測される。

図の左上、インドとの国境にナーガ山脈という山脈がある。ナーガとはサンスクリット語で蛇の意。何故ナーガという名が付いたのか?次の3ケースが考えられます。
1)蛇のように長くうねうねとした山が連なる。
 あまり面白くない。何故なら山脈というものは、そもそも長くうねうねと続く物で、ここだけが特別ではないからである。
2)蛇は中国では龍に通じ、しばしば同一物と見なされる。龍は雲を呼んで雨を降らせる農業神でもある。蛇も又インドでは水神、農業神とされる。この山脈は水が豊富で、パンジャブ平原に水を供給してきた。その結果、人々はこの山に水神=蛇神=竜神が棲むと考え、ナーガの名を与えた。
 これはそれらしい。農業屋が読むと飛びつきそうな説である。しかし地質屋はもっと冷静にならなければならない。第一、パンジャブ平原に水を供給するのはこの山脈だけではない。水量は北のヒマラヤの方がはるかに多い。従って、この説も疑問である。
3)蛇はインド錬金術では水銀の、龍は中国錬金術では金のシンボルである。この地域がかつて水銀の産地であったとすれば、人々はこの地にナーガの名を与えても不思議ではない。
 実は、日本でも龍の名を冠した地名が幾つもある。これらは元々水銀が採掘されていたのではないか、と考えられるものが少なくない。従って、ナーガ=水銀採掘地説に最も興味深いものがある。


平原地帯の南部に、何か判らないが円形の窪地のような地形が見られるようになる。何か人為的な影響も感じられます。
南部
 


 ミャンマー南部の地形は西のアラカン山脈、中央のペグー山脈、東部山岳地帯を二つに分ける平原地帯により、計四つの山岳地帯と三つの平原地帯に分けられます。そして、特徴的なのは、それぞれの山地と平野との境界に、シャープなリニアメントが入り、それより平野側に明瞭な分離小丘陵が見られることです。アラカン山脈東縁、ペグー山脈両サイド、シッタウン川右岸を注目してください。これらの地形は第四紀活断層特有の地形です。ミャンマー南部にも間違いなく活断層が存在するという確実な証拠になります。また、東部の山岳地帯の中にも、2本のN-S方向リニアメントが見られます。これらは南部で合わさって、更にタイ領ドーナ山脈西縁に続きます。
 更にシッタウン川沿い(図の中央)にまっすぐ走っているN-S方向のリニアメントは北部地域にそのまま連続し、ミャンマー最大の構造線(仮称「イラワデイ川ーシッタウン川構造線」)を形成するのです。この構造線は陸上部だけで概略800q以上。日本では中央構造線に匹敵する大断層です。この断層も四つか五つぐらいのセグメントに分かれるようです。ということは、一つのセグメントは平均150〜200q位はあるでしょう。今回の四川大地震では、延長250qの断層が動いてM8.0の地震が生じていますから、この断層セグメントが動けばミャンマーでもM8.0に近い大地震が生じる可能性があります。その場合、影響はミャンマー一国にとどまらず、隣接するタイ、インド、ラオス、バングラデシュにも及ぶおそれがあります。
 しかし、これらのリニアメント(断層と云って良いと思いますが)は一方でヒマラヤからの地下水の良好な涵養源となり、ミャンマーの平野に豊富な水を供給する源になっていると考えられます。これに沿ってイラワデイ川のような大河が生まれ、更に大小の湖沼が発達する事からも、それは裏付けられます。これらのリニアメントは当にナーガと云ってよいでしょう。
 
 この地域でもペグー山脈の北方平原地帯によく判らない楕円状の窪地が見えます。最初は火山かと思ったが、それにしては中央火口丘もなく、溶岩が流れ出した跡もない。クレーターとも思ったが、クレーターでも中央に突起が出来るがそれもない。第一クレーターがこんなに狭い場所に集中して出来るなんてことは考えられない。今考えているのは、大規模な鉱山採掘跡、つまり露天堀りの跡の可能性です。かつてミャンマーはイギリスの植民地だったから、イギリス人が手当たり次第に掘り返した可能性は高い。現在衛星写真に写っている色が地山の色だとすると、地山岩石は花崗岩やデーサイト質火山岩などのフェルシックな岩石。すると採掘の対象は主に鉄やアルミニウムだったと考えられます。それ以外に魅力的な仮説としては、錬金術の文脈からは水銀が挙げられます。他にウランの可能性もありますがどうでしょう。

 ミャンマーは元々地下資源に富む国です。ミャンマーの地下資源としては石油・天然ガスが挙げられます。かつて大日本帝国もこれを狙ってビルマに侵攻した。
 しかし、衛星写真で見る限り、ミャンマーは化石燃料にとどまらず、様々な鉱物資源に恵まれていると思われます。この情報を一番握っているのは、かつての宗主国イギリスです。今のミャンマーとの最大貿易国は何処か知っていますか?それはイギリスです。現在の鉱物資源の高騰が逆にミャンマー軍事政権に自信を与え、対外的に強気にさせている原因なのです。それに一番手を貸しているのがアウンサンスーチー女史の旦那の祖国イギリスなのです。資源価格の高騰を煽って、ミャンマーから濡れ手に粟の暴利をむさぼっている欧米諸国がミャンマー軍事政権を批判するなんて、人を馬鹿にしたペテン、ミャンマー人民に対する裏切り行為に過ぎません。


 

(08/06/04)アップ


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