新潟上越市の地すべり
新潟県糸魚川市能生町での北陸自動車道で、のり面が崩壊しバスが土砂に乗り上げる騒ぎ。実は筆者は昔この辺りの北陸道地すべり調査をやったことがある。すわその関係かと思ってみると、どうも別区間のようである。しかし、筆者が関連した区間でも安全ではない。道路公団がワタクシの忠告を無視するものだから、危ないところは未だ残っている。
(12/10/12)
平成23年3月7日発見された地すべりは、その後成長を続け被害を拡大しています。ここではNHKニュースの画像を基に、筆者が興味を持った点をピックアップして、地すべりの状況を見てみましょう。
まだまだ続きます。
摘要 | 解説 |
3月12日放送の地すべりの全容。写真中央の凸部が地すべり本体。その上の茶色の崖が頂部滑落崖 | |
地すべり末端部の民家でしょう。左端の家屋が右に傾いているから、地すべりは左上から圧迫を加えていると思われます。 | |
地すべり前面に積み上げられる十字ブロック。これで地すべりの前進をくい止めるつもりだろうが、ここで止まると、泥流は側方に溢れ出すので、却って被害を拡大する。一番良いのは、前面に水路を掘削し、そこに泥流を誘導することであるが・・・?。 何だか、来年かそこいらの「地すべり防止工事士」の試験問題に出そうですね。「応急対策法について述べよ」だ。 (12/03/14) |
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これが今回地すべりの全容。中央の山地中央斜面が崩壊を起こしたもの。山地下の集落がある平坦地は河岸段丘。 中央山頂直下に急斜面があり、その下に崖(写真の茶色の部分)が見える。これが今回地すべりの頂部滑落崖。さてその上の急斜面部であるが、木が無いことから、近年に崩壊した後ではないかと思われる。雪が被っているから、今回の崩壊には関与していない。つまり、この斜面は、かつて崩壊履歴があったことになる。古い崩壊で取り残された部分が、今回再活動したのだろうか? それはともかく、この地すべりは、新第三期泥岩地帯に典型的に見られる粘凋性地すべり。元々の地すべり土塊は剛体だったのが、応力の変化で内部構造が破壊され、上中部では岩塊は残っているが、下部〜末端では細片化し、水と混ざって泥流となってゆっくり流下するタイプ。 月山の抜道下流地すべりは、殆ど水平の周りと全く見分けが出来ない田圃で、それが雪解けと同時にジワジワと移動する。その力は、中に設置した集水井や深礎グイを傾けるほどである。そして、土質はというと泥岩の屑。手で触れば簡単に粉になってしまう。これに似たようなタイプではないでしょうか? |
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写真は水抜きボーリング。使用している機械は、水平専用機で、鉱研のFS40Dか50Dシリーズか? これは油圧駆動式で、右の装置が油圧コントローラー。形がコンパクトなので、この種の工事には最適。 但し、上越市の災害対策会議議事録(上越市HP)を見ると、水抜きボーリングは上部で2本、下部で2本などと、なんとも情けない話し。こんなせこいことをやっていて地すべりが止まるわけがない。 福島原発での保安院や東電の対応と全く同じ。出来るだけことを、小さく小さく抑えようと云う、木っ端役人の乞食根性が丸見え。 水抜きボーリングは上部20本、下部20本、それぞれ1本少なくとも100mとする、ぐらいのことをやらなくちゃダメ。 |
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これはボーリング口元付近の映像。勢い良く水が出ていますが、これは地すべり土塊中に溜まった水ではなく、只のボーリングの排水だということに注意。 | |
これはNHKでは無く、アジア航測の空中写真。PCだともっと鮮明だが、スキャナーでやっているから仕方がない。 地すべりがどの範囲で発生しているかは、見れば判りますが、筆者が注目しているのは地すべり滑落崖から山頂までの、積雪斜面。これをよく見ると(アジ航HP)、滑落崖の上に林道が通っていたり、斜面も単純平面的だったり、どうも自然斜面には見えない。人工斜面の可能性大。では何のために、こんなところに山を切り開いて、大きな斜面を作らなければならなかったのでしょうか? 一つの答えが、古い崩壊の対策斜面では無かったか?ということです。かつて崩壊が生じたとすれば、その対策として排土工が用いられた可能性は十分ある。問題はその下がどうなったか、以後どういう対策が採られたか、です。 上部斜面を切り土し、そのまま長期間放置すれば、その下部の地山も緩んで空隙が広がり、融雪水が浸透しやすくなった可能性もあります。 地すべり対策を考える場合、現状であれこれ云う前に、対象斜面の歴史経過を十分吟味する必要があるのです。 (12/03/17) |
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