'15 関東・東北大水害

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫

 何年か前に国土交通省から「中小河川の提体補強指針」と云った手引きが出ました*。ワタクシもネットで入手して読んで見ましたが、「こんなのじゃ駄目だ」というのが第一印象。何故かと言うと、対策が表面の整形とか改良だけに偏った韓国整形美容レベル。中身からの改良・改善に踏み込んでいない。そしてその考えは今も変わっていない。その結果が、今回台風18号に伴う関東・東北地方の大水害です。
*報道では「見過ごされた中小河川の防災」というフレーズが踊っていますが、実際はそんなことはない。中身が駄目なだけです。マスコミ報道は国交省の河川屋に踊らされているだけです。


台風17号に伴う豪雨で破堤した鬼怒川の堤防。水量の大きいのは当然だが、なんとなく、破堤位置の堤防の構造や地盤に問題があったのではないかという感じは残る。
(15/09/10)


 先月の北関東・東北大洪水破提問題について、国交省がやっと、越水侵食だけでなく、パイピングの可能性を認めました。その証拠である噴砂の跡が見つかったからです。破堤箇所は全体で95箇所もあったそうです。これだけ沢山あれば、原因が一つであるわけはありません。筆者が言ったとおり、他の可能性を考えるべきなのです。
 パイピング対策はまず提体土質の改良が必要です。鬼怒川堤防のような粒径の揃ったサラサラの砂などもってのほか。溜池などに倣って真ん中に刃がね土(イ)を入れ、周囲をランダム材(ロ)で囲む。ランダム材は建設残土のような、見かけが汚い土のほうがよい。内法先は蛇籠工とかコンクリートブロック(ハ)などで補強する。提体下に透水性の高い砂(ニ)が分布しておれば、押さえ盛土(ホ)で浸透路長を稼ぐか、鋼矢板などの止水壁(ヘ)で地下水の流出を防ぐ。こうしておけば、仮に越水で外法が侵食されても破提には繋がらない。

 大体そんなところでしょう。しかし、これが根本対策なのです。今国交省が中小堤防対策で出している、越水侵食対策法は、あくまでこれに対する補助工法・・・二次的効果でしかありません。要するに本末転倒なのです。なお図はゾーン型の内、センターコアタイプを例示していますが、他にバリエーションは多数あるので状況に応じて最適なタイプを選べばよいでしょう。
(15/10/01)

 これは現在国交省が鬼怒川で行なっている対策工事の一部(サンケイ)。見て判るように鋼矢板を打設している。この矢板は一体何のためにやるのでしょうか?矢板の前の部分の掘削のための土留め工以外にありません。画面左下の堤防法尻にはテトラポッドが並んでいますが、これは提体下の地盤を掘削したときの、提体が不安定しないための押さえです。提体表面にはコンクリートブロックが敷き詰められています。洪水が発生したのは9月初め。幾らなんでもこんな短期間で、こんな大工事が出来るわけがない。つまりこれは今回の洪水対策ではなく、以前から計画されていた河川改修計画の一環だということです。
 さて矢板とその背景を見てみましょう。矢板の後ろには広い河川敷が広がっています。これは洪水時には遊水池となって、下流への氾濫を防ぐ役割を持っています。ところが実際は矢板を打ったりテトラを並べたりで、この河川敷内に新たな河道を作り、河川敷を何か別途利用しようとするのが目的でしょう。何か昔の田中角栄信濃川河川敷スキャンダルを思い出します。
 今回の災害については、国交省は越水侵食を原因と公表してきました。アホなマスコミは、それを額面どおりに受け取って、国民洗脳に協力してきたのです。上の写真は体制ベッタリのサンケイニュースからの引用です。サンケイは朝日並みにアホだから、国交省の云うことをそのままにしたのでしょう。
 この地点が云うとおり本当に、国交省やサンケイの云うとおり、今回の被災地域であれば、その原因は越水侵食になる。しかしここでやっている工事は、それに対応するものではない。要するに誰かが嘘をついているのである。わかりますか!ダニエル君
(15/09/22)

 連日ネットで話題になっている鬼怒川の一戸建てへーベルハウス。世間の噂は旭化成の宣伝ではないかと思われる。そもそも一戸建てプレハブ住宅は国交省基準をクリアーしなければならないから、強度・安定性はどのメーカーでも大差はない。あるとすれば基礎だが、メーカーは基礎までは関与しない。これを決めるのは、行政と設計者と業者である。この建物の基礎は支持層までクイ基礎か地盤改良を行なっていたのだろう。業者が行政指導に従ったか、設計者の指示に従ったためだ。
 問題は地方都市ではしばしば行政や設計者と施工業者の力関係が逆転し、業者が好き勝手なことをやってしまう。この写真はそうではなかったという稀有の例だ。だから誉めるなら製品ではなく、設計者と施工業者なのである。
(15/09/19)

 今回の水害で世間・マスコミに流布されたのが「越水(侵食)」という言葉。何処もかしこも越水だらけだ。今回氾濫を起こした群馬の鬼怒川・子貝川、宮城の渋井川。いずれも大河川ではないが、流路長は数~10数㎞以上に及ぶ。延べでは数10㎞だ。しかも破提箇所は全体で10数箇所に及ぶ。こんなに長い堤防では、堤防形状(幅、高さ)だけでなく、提体材料の土質とその構成、築提工法とその経緯、基礎地盤の性格など、千差万別である。その結果、破提原因も様々なパターンがあって然るべきである。ところが国交省は全てを「越水(侵食)」という言葉でくくろうとしている。その狙いは何か?
 それはともかく、今回の洪水で注目を集めた茨城県常総市赤石下の破提に着目してみよう。
 
 下の図は茨城県常総市赤石下決壊現場の写真。図1-a情報衛星からの写真をテレ朝か何処かが、ネットに出していた写真のパクリです。図の中央やや左を流れるのが鬼怒川。図の右端を流れるのが子貝川です。
 ここで
 A;沖積層(所謂溺れ谷)
 B1~B2;;自然堤防 
 T;基盤の洪積台地
 なお、図1-aの赤印(多分破提位置)に、何か旧流路のようなものが見えます。果たしてこれは何でしょう.。又図1-bでは、鬼怒川堤防と思われる部分を太い黒線(確かなのは実線、曖昧なのは破線)で示しています。しかし右岸沖積谷の左岸対面では、堤防と思われる形跡がない。だからブランクにしています。これが所謂「無堤防地帯」なんでしょう。
それはともかく、この写真を一瞥して判るのは、鬼怒川も子貝川も相当の暴れ川だったということです。つまり、図の自然堤防Bの範囲内で、過去氾濫をくりかえしていた。それを近世以降の河川改修で今の流路に直したわけだが、これで収まってくれたわけではない。
 右の図1-bは赤マーク付近をGoogle Earthで見た映像です。図1-aとは若干イメージは異なりますが、これはパクリ写真とホンモノの差です。鬼怒川右岸では、赤マーク地点に向けて沖積谷が発達している。この谷に沿ってには古い河川流路があったはずで、それと鬼怒川本流との合流点が破堤位置になるのです。こういう箇所では、河川は過去何度も氾濫を繰り返すので、その度に流路が変化する。例えばあるとき洪水が起こって自然堤防が形成されとする。そこには砂や礫のような租粒物質が堆積する。次に別の洪水がやってくると、元の自然堤防は分断され、三日月湖が出来る。その底には粘土・シルトのような細流物質が堆積する。このように暴れ川の流域では地層は垂直方向だけではなく、水平方向にも目まぐるしく変化する。こういう例は筆者も過去何度も経験している。地域の地質調査では、こういう洪水による流路の変化、それに伴う堆積物の変化を頭に入れておかなければならない。つまり河川や堤防を取り巻く地盤環境は、一様ではないのだ。
 図1-bを見ると、鬼怒川本流と右岸沖積谷の合流部では、鬼怒川が不自然に直線になっていることが判ります。自然河川は蛇行するのが普通なので、このような直線状流路が形成されることは無い。おそらく近世以降の河川改修で、人工的に河道が変更されたものと考えられます。そしてこういう箇所こそが洪水や地震時液状化の弱点になるのです。

   
図1-a   図1-b

 さて、堤防が破壊するメカニズムは果たして越水侵食だけでしょうか?従来の土質工学や河川工学の教科書では、むしろ提体の底部破壊とか、パイピングが重要視されており越水侵食など言葉にすらなっていなかった。いつの間にか土質力学(物理法則)のセオリーが変わったのでしょうか?
1)底部破壊 
 河川内水位の上昇によって、提体内水位も上昇する。降雨がピークを過ると内水位も低下するが、提体内水位の低下はこれより遅れる。遅れ方は提体土質によって大きく変化する。この結果、内水位と提体内水位の間に水圧差が生じる。この水圧差がある限界に達すると、提体は底部破壊を起こす。このときは破堤は水位ピークより遅れて発生する。
2)パイピング
 上と同じ機構で、提体内に水面が形成されると流速が発生する。この流速がある限界を超えると粒子の移動、つまり流出が発生する。一旦これが発生するともう止められない。千里の長提も蟻の一穴からの例えである。これも土質によってしやすいかどうかは異なる。粒径の揃った砂こそパイピングしやすい。映像で見た鬼怒川堤防の土質は、当にパイピングしやすい土なのだ。このケースでも内水位と破堤との間には時間差は出来る。
 何日か前の某テレビワイドショーで、興味あるデータ示されました。これは宮城県大崎市のデータだったと思うが、破堤したタイミングが河川水位がピークに達したときから2~3時間遅れているのである。これは提体内残留水圧による底部破壊の典型例である。

 これらの現象は提体材料が重要である。鬼怒川破提部の材料は、上の1)2)のどれにも該当する、提体材料としては不向きな材料だったのである。
 
 そもそもこの種の災害事故究明は、まず既に確立されている古典的方法で説明できるかどうかを比較し、それだけで説明できない場合にのみ新しい概念を提示すべきである。ところが今回の災害の国交省河川局の説明では、この過程が省略され、越水侵食一遍道になってしまった。事故調査委員会もそのような意見を云っているが、たった一日の現地視察では何も判るはずは無い。現場に張り込んでいた河川局の木っ端役人に、うまく言い繰るめられただけだ。これでは対策は表面処理だけで終わってしまう。莫大な予算を使って表面塗装(韓国整形)をやったところで、本質的な病巣が提体内や基礎地盤にあるとすれば、同じ失敗を将来も何度も繰り返すのである。
 中国では川は龍が通った跡とされ、流路を変更することは禁止されてきた。しかし最近の改革開放で流路変更も行なわれるようになったのか、中国でも頻繁に洪水被害を聞くが、これはその所為かも知れない。日本では近世以降に河川改修が行なわれるようになったが、特に戦後高度成長期以降その規模が大きくなった。これが洪水被害拡大の原因になっているのではないか。 

 では何故国交省はここまで「越水侵食」に拘るのでしょうか?それは既に事業として破綻しているスーパー堤防を復活させることです。あんな馬鹿げた計画が実現可能などと考えるのは常識外と思われるでしょうが、河川屋はそうは考えない。数100年から1000年懸かる事業を継続しておけば、その間我々の利権は守られると、本気で信じているのかも知れない。しかし将来の日本人口動態を考えると、スーパー堤防が出来たとき、そこには誰も住んでいなかった、ということになるのです。
(15/09/19)

(続けて早稲田教授批判)
 早稲田関根教授は、行政がここまでやって駄目なのだから後は住民の自主避難しかない」と結論する。随分単純な結論だ。彼の結論には次の二つの問題点がある。
1)行政は今までどんなことをやってきたのか?
2)自主避難は安全か?
 1)については又別項で検討するとして、2)を取り上げる。豪雨時の緊急避難の是非については、学界・行政レベルで意見が別れ、結論は出ていない。豪雨時特に深夜自主避難は避難時に遭難するケースが多く、リスクが大きく好ましくないというのが趨勢だ。実際関東・東北水害でも被災対象は数10万人に及ぶが、実際の避難者は2000人弱に過ぎず、中でも遭難者は死者・行方不明者含め7人に過ぎない(9/15現在三県集計)。何故そうなったかは今後吟味が必要だが、筆者の思うところ、洪水地帯住民の大部分は、行政の言うとおりの避難をしなかったのだ。もし、早稲田関根の言うような自主避難を実行すれば、遭難者は遥かに多くなっただろう*。
 仮に自主避難するとしても、イ)確実な避難場所の確保、ロ)安全な避難ルートの確保、それに加えハ)経験ある避難誘導員の存在が不可欠である。さて今の日本で上記3点を満足できる自治体がどれだけあるだろうか?イ)ロ)はともかく、現在の少子高齢化社会ではハ)の確保は至難である。
 早稲田関根はそういう「日本の現状を踏まえず、内容空疎な空理空論を述べ立て、行政媚びへつらいをやっているのだ。おまけにNHKという日本最大の公共放送機関を利用していることが許せない。こういう奴こそ君側の奸、民族の敵だ。
一昨年の京都府南部集中豪雨では、京都府は流域26万人に避難勧告を出したが、それに従ったのは、たったの1%。それでも死者は数人で、それも土砂崩れが原因
(15/09/15)

 昨日のNHK夜7時トクバン。テーマは今回の関東・東北大水害。ワタクシはそのとき、他局の紀行番組を見ていたので全部は見ていないが、偶々CMの刻に廻すと出てきた。専門家3人がゲストとして登場していたが、この中の早稲田理工の関根某と言うのがよくない。東京の土木屋の中にはお上に逆らわないのが多いが、こいつの云うことはそれを通り越して媚びへつらいのオンパレード。
 彼の言う点をまとめると
1)決壊部分の堤防は断面も十分あり、土質はよく揃った砂で締め固めも十分で、堤防としては理想的だった。
2それにも拘わらず今回破堤をおこした。)部分的な改修を行なっても、弱点が次々と移動するだけである。
3)従って防災対策には限界があるので、住民が自主的に避難して不足分を補うことが重要。これなど消費税還付金とマイナンバーをくっつける官僚発想と同じ。
 一見これまともなように見えますが、ワタクシはこれを聞いて、はっきり云ってこれはヤラセだと思った。まずこの早稲田教授は1)によって国交省や栃木・茨城両県の役人を免罪した。次に2)によって、将来も役人は責任を持たなくて良いようにした。極めつけは3)である。これにより最終責任は住民=国民に背負わせることが出来る。これこそ現在の霞ヶ関とアベ政権が狙う統治システムである。彼はその露払いをやっているようなもんだ。官僚・役人にとっては神様のようなものだ。おまけにその提灯をNHKが担いでいるのだから、学問・技術の堕落極まれりだ。
 元々土木は官僚学だが、それには東大を筆頭とする官学系とそれに対抗する私大系がある。後者の代表が早稲田・中央・理科大等関東系なのである。官学土木の場合、基本予算は文科省である。経産省や国交省予算も大きいが、これらは委託研究であって、無くても構わない。つまり教員が国交省を批判しても学者は食うには困らない。
 しかし私学はこうは行かない。早稲田でも理工予算の2/3は国庫補助である。それ以外は教員が企業団体から稼いでくるのだ。もし大学教員が国交省批判を行なって、それに国交省がカチンときて補助事業を縮小したらどうなる?学部存立の狭間に立たされる。だから、本人としては、官に護摩するへつらい発言しか出来ないのだ。それでも現役の研究者で、ここまで行政寄り発言するのは聞いたことがない。おまけに取材者がNHKだから、立場は似たようなものだ。所詮早稲田は東大の滑り止め。滑り止めは滑り止めでしかない。 (15/09/13)
 早稲田関根解説のよくない点の一つに、提体材料の評価があります。彼は提体材料を粒径が揃っており、よく締まっていると評価した。一方鬼怒川赤石下決壊現場の状況を画面で見ている限り、提体材料は関東平野台地部に広く分布する、下部洪積層上総層群相当の浅海性の砂が起源。
 これは粒子が揃っているのはその通りだが、後はみんな間違っている。粒径の揃った砂は見掛けは綺麗だが、強度はからっきし駄目。幾ら締め固めても全く締まらない。これは我々地質・土質業界・学会の常識である。それをこの早稲田野朗は抜け抜けと「よく締まっている」とのたまうのだ。ホントにそう思っているのなら只のアホ。そうでなければ行政のイヌだ。
 次に彼が言ったのは、行政がここまでやって駄目なんだから、後は住民皆さんで自主避難してください。これなどは学者・技術者の降伏宣言だ。しかし降伏したがっているのは、国交省河川屋とこの早稲田野朗だけ。他は未だ降伏はしていない。てめえが無能なだけの失敗を、他に押し付けているだけなのである。
 筆者が云いたいのは、この早稲田野朗が云っていることが、現代技術や政策でクリアー不能なのかどうかである。
 まず最初の提体材料の問題だが、これは関東平野だけにテーマを絞っているから、周りが見えなくなっているのである。提体材料の侵食抵抗は主に粒度配合による。粒径が揃っている(粒度配合が悪い)砂のパイピング抵抗の弱さは既に1930年代にテルツアギイーが指摘している。これに基づいてアメリカ陸軍工兵隊(USTR)や内務省では築堤材料基準を作っている。筆者の感じでは鬼怒川提防はとてもこの基準には入らないだろう。いいですか!この基準ができたのは1930年代、いまから80年前だ。そんなことすら出来ていないのが、日本の国交省であったり、茨城県や宮城県土木部であったりするのだ。
 ではどうすればよいか?砕石場や建設現場から出てくる瓦礫や粘土など混ぜて、混合土を作れば良いのである。こんなものは別に難しくもなんともない。
 第二の問題が住民自主避難。言うのはよいが、さていざとなればどのタイミングでどのルートで何処へ逃げていけばよいのか?三陸や紀勢の津波なら山に逃げればよいが、まったいららな関東平野ではそんなところは無い。行政は逃げろというが、何処へ逃げればよいのか?要するに云いっぱなしなのだ。これは学者・官僚には付き物だが、卑しくも国家予算の相当額を使っている大学の教授なら、もう少し責任ある発言をせよ、だ。そこでこまっちまうのが住民だ。しかしこの早稲田教授は困らない。避難に失敗したのは、住民と地域行政が愚かだったからだ。
 要するに、これが関東系学者の限界なのである。まあ、自分は答えを用意せず、学生に問題を出してその内良いのを選んでそれを自分の成果にしようとするせこい発想。これが小保方事件を産んだのである。、似たようなものだ
(15/09/14)

 連日の関東・東北洪水問題。テレビ画面をよおく見ていると、意外なことが判ります。テレビカメラは濁水が押し寄せ孤立した民家ばかりを強調するので、鬼怒川や渋井川の流域はみんなこんなものだと思う。しかし画面の遠景には何事もないように存在する集落もある。この対比は何処から生まれたのでしょうか?
 地質学の初歩を学んだ人にとっては、これは自明の理。敢えて説明する必要もありません。ポイントは2000~3000年前に起こった、急激な地球規模の寒冷化と、もう一つは1970年代以降の高度成長と、それに伴う農地の住宅化です。ここには政府の防災政策のかけらもありません。
 今回氾濫したのは、本流よりは支流河川です。これらの河川は国交省の定義では「中小河川」になるのでしょう。実は新潟豪雨の後を受けてか、数年前に国交省から「中小河川の堤防改良に関する手引き」というものが出ています。ワタシはこれをネットで一目見て、これじゃ駄目だと思った。何故ならこの手引きは堤防破壊の元凶を、表面土の侵食によると考えているからです。従って、対策工法は堤防表面を整形するだけにとどまっている。韓国整形美人じゃあるまいし、あんなものなんの役にも立たない。
 丁度その頃、高槻芥川でも堤防改良工事をやっていた。たまたまその工事を監理していた業者の若いのに、こんなことやってもなんの意味も無いぞ云ったら、そいつもそう思うと応じてくれた。東京のエリート官僚が作った手引きが、大阪高槻の田舎業者の若いのにまで、舐められているのである。
 この手引きが何故駄目かと言うと、提体の表面ばっかりいじっているからである。。堤防の安定は提体内部と基礎地盤から決まってくる。国交省手引きはその基本を守っていない、提体の一番重要な部分を誤魔化しているのである。その結果が今回の洪水災害だ。半ば人災と云ってよいだろう。
 従ってこの先国交省がいくら予算を使って何かをやっても、同じ失敗を繰り返すだけだ。ワタクシが昔から感心するのは、日本の官僚は、何時までも同じ失敗を、飽きもせず当然の権利のように繰り返すことだ。
(15/09/12)