深海掘削船「ちきゅう」見学記

 去る平成18年6月、深海掘削船「ちきゅう」が大阪港に寄港し、17〜18日にかけて一般公開が行われました。雨の中を早速見学に行ってきました。第一印象は、とにかくでかい。当たり前ですね。基準57000t、満載で60000tを越えるわけだから。何年か前に、「ちきゅう」の建造計画を見たときに、「こりゃ戦艦大和だ」と思ったらそのとおりです。戦艦大和は結局役立たずのままに沈んでしまったが、「ちきゅう」はそんなことなく、役に立って貰いたいと思います。
 なお、「ちきゅう」は未だ、実掘削経験はなく、この次の「八戸」沖掘削が最初の掘削になるよし。だから、船内に展示されていたコアもみんな借り物でした。

地下鉄「大阪港」駅を降りて、天保山桟橋の方に行き、交差点を渡ると、いきなり左のような風景が飛び込んできました。写真左の櫓が「ちきゅう」の掘削デリック、右は東洋一の高さを誇る大阪海遊館の観覧車です。
掘削デリックの詳細。大きい割には、細かい細工がされていることが判ります。右側手前は。観覧車の支柱です。それぞれの構造を見比べて見ましょう。どちらも同じトラス構造ですが、一見して判るのが、「ちきゅう」のデリックが細い鋼材が細かく組み合わさって、如何にもゴテゴテしているのに比べ、観覧車は支柱間隔が大きく、オープンな感じがすることです。これは一つは支柱材料の差です。
 荷重が一定の場合、梁に加わる外力(モーメント)は支点スパンで決まります。大雑把にはスパンの2乗に比例すると考えて良い。更に、梁に発生する応力は、梁の断面係数に反比例する。断面係数は断面積の3乗に比例する。つまり、スパンを大きくすれば、モーメントはうんと大きくなるが、梁の断面積を少し大きくするだけで、応力をウーンと小さくすることも出来るのです。
 観覧車は丸鋼(コラムパイプ)を使っています。これは、外径は同じでも、肉厚を変えられるので、モーメントが大きくなっても、肉厚を変えれば応力を小さく出来ます(無論、限度はありますが)。又、円形というのは、力がどの方向に作用しても、一定の強度を発揮出来るという強みがあります。
 一方、「ちきゅう」は従来型の異形鋼材を使っている。いわばJIS規格でやっているわけだ。この辺りが如何にも三菱的。異形鋼は作用する力の方向によって、発揮できる強度が違ってくるから、どうしても余分の補強材を加えなくてはならない。また、鋼材断面をJIS規格のままでやっているから、支柱や斜材のピッチが鋼材の断面性能で決まってしまう。だから、このようなゴテゴテした構造物になってしまうのである。
 数年後には改修計画が出てくるだろうが、その時は、コラムパイプを使ってラーメン構造をお勧めします。そうすると、鋼材の量がうんと減るので、排水量が減る。その分ドリルパイプの積載量を増やすことが出来るから、掘削能力を現行の10000mから12000m位に増やすことが出来るかもしれません。
斜め正面からの「ちきゅう」。手前のガントリークレーンが邪魔になって、よく見えませんが、隣の笠を持って立っている二人ずれと比較して、大きさを想像して下さい。
ややピンぼけですが、ブリッジの状況。写真中央にふんぞり返っている白服のデブがいますが、こいつがとんでもない太い無礼な奴。私が何か、質問しようか、とすると私を無視。目的は横にいた二人ずれのお姉ちゃん(写真では後ろの白スカートとその連れ)。オンナと見れば、ペコペコ、でれでれ、目尻下げっぱなし。他に興味を持つことはない無いのか!こんな奴はクビにしろ。大阪のオンナはこんなブタ野郎に引っ掛かるほど甘くはないぞ。
 「ちきゅう」で最も大事な掘削システム。デリックは正規位置より右へ後退した状態。掘削システムはロータリーではなく、電動モータードライブのチェーンフイード式。だから、TV画面などでよく登場するターンテーブルは掘削用ではなく、ドリルツールの固定用と考えた方が良いかも知れない。但し、多分両方兼用なのだろう。如何にも利根的だから、側にいた説明員にその点を糺し、「お前も利根の回しモンだろ」と詰問したら「えへへ」と曖昧な返事。
 電動式の場合、途中で固い部分に遭遇すれば、過電流が流れてモーターが焼き付く恐れがある。無論ブレーカーが作動して、電流を切るのだろうが、その時モーターも止まるので、泥水の流れが異常になり、ジャーミングの危険が大きくなる。その場合はどうするんでしょう。モーター回転数は60〜200rpmらしい。こんな低速回転が電動モーターに適するのでしょうか?
 なお、ここには同業者らしい連中が集まり、説明員に質問の集中砲火。見学ルート内では一番ホットなコーナーでした。
 左手前の構造物は、ドリルパイプやツール運搬のための台車。
 
 
先端ビット。これまでマスコミ報道なんかでは、ダイヤモンドビット使用となっていました。まさかと思っていましたが、本当だった。ダイヤでもせいぜいインプリだと思っていましたが、サーフェスです。一番左のなど、一個2000万位するのではないでしょうか(うっかり値段を聞くのをわすれました)?そこで、説明員に「海底の軟泥や玄武岩掘るのに、なんでダイヤがいるんだ!」と詰問すると、「いや、固いのもありますよ」とまたまた、曖昧返答。60〜200rpm程度の低速回転で、こんな上等のビットが必要なんでしょうか?将来の会計検査対象になるでしょう。
 暴噴防止装置。これをライザーパイプの先端に取り付け、海底に設置して暴噴を防ごうというわけ。
 
掘削ユニットの内部。要するに、船上のデリック他を、こういう構造物で支えている訳です。
船橋後部パイプヤード。青い鉄骨構造物内にある、白い円筒がライザーパイプ。

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