北朝鮮核実験より




 北朝鮮核実験は失敗という見方が強くなっています。どうして失敗したのでしょう。そもそもあんなものは失敗するものでしょうか?考えられることは核そのものの欠陥です。ウラン型とした場合、濃縮度が不十分で、非分裂性物質が多量に混ざっていた可能性が考えられる。遠心分離器の性能に問題があったのか、それとも実験に間に合わせるために、ことを急がせたのか?どちらでも良いですが。プルトニウム型の場合、とりあえず爆発しているから、起爆装置は正常に作動したのだろう。だとすれば問題は弾体そのもので、やはり非分裂性物質が混ざっていた可能性が高い。これも単なる製造工程の問題ではなく、プルトニウムを生産する原子炉の性能そのものに、欠陥がある可能性がある。つまり黒鉛の品質が悪く、減速が十分出来なかったために、中性子がU238に十分吸収されなかったのではないか、と疑われる。この場合は根本的な欠陥なので、問題は容易に解決できない、どころか殆ど不可能と言ってよい。2回目の実験を準備中だと言うことだが、これの結果によって、その点の結論が出るのではないか?もし2回目も失敗すれば、北朝鮮核兵器はまがい物と結論付けられる。これは核だけではなく、北朝鮮先端兵器全般について言えそうだ。筆者は今回のテポドンUだけではなく、前回のテポドンTも失敗だったと考えている。そういえば、最近の北朝鮮製品・・・覚醒剤や偽札・・・は品質が低下しているそうだ。これは何年か前からの、先軍政治の副作用である。これにより、ただでさえ乏しい資源・資金・人材が軍事部門に吸収されてしまった。そもそも軍事産業というものは、広い民政技術の裾野によって支えられるものである。ところが裾野を切り崩したものだから、周辺の民政部門の生産は低下し、質が劣化する。その結果、肝心の軍事部門すら、存立が危うくなってきている。先軍政治とはそういう宿命を持っている。
 そういえば、我が大日本帝国も、先軍政治に陥った時期があった。明治以来一部の財閥に人材、資材、資金を集中し、見る見る内に世界有数の軍事大国となり、一部では世界トップクラスの兵器を保有するまでになった。つまり先軍政治である。しかしその結果、裾野産業の発展は乏しく、民政技術は欧米に比べ著しく遅れをとっていた(特に自動車、エンジン、電気、通信)。戦争が始まると、先軍政治は更に徹底された。これを当時は統制経済と呼んだ。これを押し進めたのが、当時商工大臣だった岸信介(安部シンゾーの祖父)。満州時代に東条と組んで荒稼ぎをした縁だろう。その下請けが鮎川義介などの新興財閥。その周辺であぶく銭を稼いでいたのが、児玉譽士夫などの怪しい連中。閑話休題。さて、この先軍政治(統制経済)は国力増進、戦力強化に役立ったでしょうか?事実は全く逆なのです。例えば航空機を例に採ると、大戦末期には、おかげで設計性能だけは世界トップクラスを凌駕するまでになったが、肝心の部品作りは下請けの中小企業。そういう企業では、熟練工は皆応召で戦地に行ってしまっていない。そこにやってきたのが、まるっきり素人の勤労動員中学生や女学生。見よう見まねで作っても、もとは素人だから、製品は規格外の粗悪品だらけ。そういうのを誤魔化して、何とか完成機を組み立てても、元が粗悪品だから、稼働率が低くて、まるっきり使い物にならなかった。結局儲けたのは、東条、岸らにくっついた、財閥、実業家(と称する詐欺師連中)、児玉らのヤクザだけ、と言うのが、大日本帝国の貴重な経験なのだ。どうも朝鮮人というのは(韓国も含めて)、日本の真似ばっかりして、同じ失敗をする癖があるようだ。尤も、今の日本は先軍政治ならぬ先金政治だが。
(06/10/17)

 中川昭一が「日本の核保有も議論すべき」と発言(06/10/15サンプロ)。これで政府与党は大慌て。神奈川、大阪補選、沖縄知事選を前になんてことを云ってくれるんだ、というわけ。さて日本の政治家の発想法の欠点は、最終段階を見通さずに、入り口さえ開けてしまえば後はなんとかなる、という楽観主義である。これは日本人だけではなく、例えばイラク戦争を始めたブッシュ政権の楽観主義にも共通する。何故、こういう楽観主義がはびこるようになったのか?アメリカ式大学受験システムがその原因ではないか、という気がするが、よく判りません。
 今回の北朝鮮核実験での教訓は、核実験はやったやったと言うだけではダメ、核兵器も持っている持っていると言うだけでもダメだ、ということである。核保有国、つまり核クラブの正会員になろうとすれば、はっきりと目に見えた形で、核保有を証明しなければならないということなのである。だから、北朝鮮については、未だに「アレは核ではない」とか「核だが失敗した」とかいう噂が絶えず、核クラブ正会員とは認めて貰えていない。核兵器には(1)単なる抑止力、(2)実戦兵器の二面性がある。(1)は外交カードつまり政治的ハッタリの道具で、実際に使う気はない。但し、周辺諸国特に仮想敵国に対しては、何時でもこれを使うぞというポーズを取らなければならない。(2)の場合は逆で、例えばイスラエルのように、周辺諸国に対し、持っているかどうか判らないという不安感を与えることがコツである。だから決して手の内を見せてはならない。
 中川昭一がどの手段を選ぼうとするのか、俄には判らないが(2)は極めて危険な選択だから(日本自身の国際的孤立を招きかねない)、一応(1)のケースと考えておこう。この場合の核実験の目的は、単なる性能確認ではなく、核クラブ入会証を手に入れることである。そのためには、山一つを吹き飛ばす位の爆発を起こし、大気中に放射能や放射性二次物質をばらまくような、はっきりした形での核実験(ウラン型、プルトニウム型を問わず)が必要である。以前、河野太郎のようなタワケモノがTVで云っていた、(実現不可能な)シミュレーション核実験とか、核感知システムで感づかれないような小規模核実験では、実際の役には立たないのである。
 では、そのような目に見える核実験を日本の何処でやると云うのだろう。その問題が解決しない限り、幾ら核装備の必要性を議論したところで、空理空論の積み重ねに過ぎない。政治家たるものは、もっと現実に目を覚まさなければならない。
 さて、北朝鮮核実験で誰が一番勢い付いたでしょう。それは、中西輝正のような単純反共、自主防衛論者(中川昭一もその一人)でしょう。安部は彼等の支援をバックに総理になった。途端に北朝鮮核実験。そこまでは良かったのだが、中川発言で、急遽路線変更。腹にもない「非核三原則の厳守」とか、「核装備の政府内議論はしない」、などの約束をしなくてはならない羽目に陥った。うっかりすると連立解消になりかねない。そうなると、来年参院選で大敗北。衆院解散に打って出ても、公明(学会)の支援が無ければ、野党転落になりかねない。
(06/10/17)

そもそも今回の北朝鮮核実験騒ぎの始まりは何処でしょう? 何となく11月のアメリカ中間選挙に合わせ、ホワイトハウスが火のないところ(火種はあったのだ)に煙を立て、ジョンイルがそれに引っ掛かっただけ、のような気がするのである。裏でブッシュとジョンイルの間に裏取引があった。11月の中間選挙で、共和党は敗北が確実視されている。これを避けるには、新たな危機を作ることが一番である。世間の注目を極東アジアに向け、イラク・アフガンから遠ざける。その替わり、北朝鮮に核実験(でなくても構わない)を認める。それが証拠に、本日ブッシュは新たな制裁を行うが、軍事侵攻は行わないと発表した。

北朝鮮人工爆発がどの程度の規模なのか、未だもめているようです。現在報道で公になっている情報は次の2点だけです。
 1、地下340〜350m位の坑道
 2、爆発後、地表面に顕著な影響は現れていない。
 ここで、参考までに爆破工学でよく用いられるHouser公式を使って、実際の爆破が、どの程度のものだったかを検討してみましょう。
(Houser公式)
    L=C・W3
       L;爆薬点から上全体の地山を破砕するのに必要な爆薬量(s)
       W;最小抵抗線長(m)
       C;爆破係数
(パラメーターの設定)
1)W;最小抵抗線長
 これは最も近い近い自由面までの垂直距離である。大雑把に云えば地表面までの最短距離である。実験地の地形の詳細は不明で、深度も尾根からの深度なのか、斜面からの深度なのかも判らない。とりあえず、地表面からの深度とし、斜面傾斜角を仮定して次式で求める
       W=Hsin(90-θ)
         H;地表面からの鉛直土被り(350mとする)
         θ;水平からの斜面傾斜角
2) C;爆破係数
 これは爆薬の種類や装薬方式、その他の関数である。しかし、これらは北朝鮮が実験の詳細を発表していない以上、現実には判らない。一方実用的には、軟岩で0.1〜0.2、軟岩で0.2〜0.3、硬岩で0.3〜0.4が用いられている。実験地の地山を花崗岩とし、軟岩の上から硬岩と考えて、0.3〜0.4について求める
(計算結果)
 以上の仮定から最大爆薬量Lを求めると次のとおりである。

斜面傾斜角(゜) W(m) L(s) 1×106が1KT
C=0.3 C=0.4
0 350 12.9×106 17.2×106
30 300 8.1×106 10.8×106
45 250 4.7×106 6.25×106


 地形によって2〜3倍近い差が出ることが判ります。無論これだけの爆薬量を実際に使ったなら、山全体が吹っ飛んでしまう。一方、実験後の衛星写真でも、地表面には目立った変状は見られなかったようである(この点は今後の衛星写真の詳細な解析が必要)。実際の爆薬量は上記の1/10以下と考えられる。つまり、実際に使われた爆薬量は、色々な条件を考えると0.5〜1.5KT前後の範囲と考えられる。現在報道されている0.55KTはオーダーとして悪くない。但し今後の衛星写真の詳細な解析により、若干大きくなる可能性はあるが、ロシアの云うような数KT〜10KTはあり得ない。このレベルのエネルギーなら、山は吹っ飛ばないまでも、山崩れや落石、クラックの発生などの地変が生じるはずで、人工衛星から判らないはずがない。
 なお、350mという土被りは、トンネルとしては決して大きなものではない。幾ら小さい核爆発でも、それなりの衝撃を地山の岩盤に与える。その結果目に見えないような割れ目を作ったり、既にあった潜在亀裂を広げたりする。まして、この程度の小さい土被りなら、それが地表に到達してもおかしくない。一方、核分裂の二次生成物の中にラドンがある。これは常温では気体(ガス)なので、例え僅かな割れ目でも、そこから空中に漏洩する。ラドンが壊変する過程でγ線が放出される。このγ線強度とスペクトルをLANDSATやSPOTのような資源探査衛星で観測すれば、本当にこの爆発が核実験だったかどうかを検証出来る。米軍や自衛隊がやっている、空気中の塵採取より、安上がりで確実だ。
(06/10/11)

 北朝鮮核実験*1で、早速日本のマスコミは上を下への大騒ぎ。今にもジョンイルが、核をテポドンに載せて、日本に打ち込まんばかりの騒ぎである。ここで登場するのが、例の軍事評論家とか、危機管理評論家とかいう素人集団。素人がいい加減なことを、TVや週刊誌で喋りまくるから、更に素人のマスコミがそれに挑発されて、騒ぎを大きくする。これを陰で睨んでほくそ笑んでいるのが、日米軍需産業とそれに連なる商社・政治家なのである。
馬鹿その1、一発の核で100万人位死ぬ。北朝鮮は7〜8発もっているから、合計800万人死ぬ、と言ったタワケモノ。
馬鹿その2、核爆弾はミサイルだけではない。船に積んで東京湾で爆発させるかもしれない、といった馬鹿者。東京湾で核を爆発させて何になるというのかね。東京湾の水が蒸発してそれで終わり。ついでにハマコー(千葉)もコイズミ(横須賀)も消えて貰えれば大助かり。無論、その後には放射性物質が海底に貯まるが、これは埋め立ててしまう。但し、あと50〜100年間は立ち入り禁止になりますが。
馬鹿その3、山手線の内側が真っ平らになると云った、お調子者。
馬鹿その4、北朝鮮にはソ連崩壊後、旧ソ連の核技術者が核技術を持ち込んでいるから、核実験なしでも実戦用核兵器が作れると言った馬鹿。この場合はプルトニウム型ですが、プルトニウム型爆弾の製造には極めて高い精度が要求される。単に設計図が書けるだけでは作れない。設計図だけなら、高校生でも書ける。設計図通りに作れる技術と高精度の設備が必要。漫画と実物の区別がついていない。
 では、現在報道されている、0.55KTという核爆弾とは、具体的にはどの程度の威力なのでしょうか?この程度の核はいわゆる戦術核で、昔ならオネストジョンとか、コーポラスミサイルに搭載して、敵前線突破あるいは後方戦術拠点破壊に使うレベルのものである。とてもじゃないが戦略的脅威には成り得ない。朝鮮戦争の後、アメリカは177o加農砲から発射出来る、原子弾というのを作ったことがあったが、その後姿を消してしまった。中途半端なものは、結局役にたたないことが判ったのだろう。こんなものを、高いテポドンに載せて日本に打ち込むなど、通常は考えられない。つまり軍事学的常識では、これはせいぜいスカッドに載せて使う、韓国軍前線突破用兵器なのである。とはいうものの、あの国は常識外のことをやるから、本気で打ち込んで来るかも知れない。爆破工学によれば、爆発物の破壊力は、爆破エネルギーの立方根に比例する。これから、今回の実験核の破壊力の、広島型(15KT)に対する比を求めると3√(0.55/15)=0.332となり、広島型の約1/3となる。仮に標的を東京としたとき(北朝鮮にとって、これ以外の標的*2は考えられないでしょう)、昭和20年の広島と21世紀の東京とでは、都市の耐久性に格段の差がある。直接被害は広島の10数分の1以下、政府の対応、行政の避難誘導が適切であれば、更に被害を減らすことも可能である。実はこれが一番の問題なのだ。今回の実験でも、北京の安部晋三には10時30分には、中国側から実験強行の連絡があったにも拘わらず、日本で報道されたのは、実験がとっくに終わった正午過ぎ。この鈍感さが命取りになるだろう。
*1なお、今回の実験はいまだに、成功だ失敗だと言った意見が錯綜しています。それどころか、本当に核実験かどうかという疑いも残っている(筆者も当初その疑いは持っていたし、今も持っていますがね)。それというのも、観測値からの爆破エネルギー推測値が01〜10KTまで、各国でバラバラだからです。従って、まともな話しが出来るのは、未だ当分先になるでしょう。
*2前大戦で原爆の標的が、何故、東京でなくて、広島・長崎になったか、と言うと、原爆が完成するまでに、東京、大阪、名古屋、福岡と言った主要都市は、既に通常の戦略爆撃であらかた破壊されていた。トルーマンはローズヴェルトの死を受けて、副大統領から昇格したばかりだから、特に議会には気を使わなければならない。東京を目標にすると、瓦礫の山に原爆を落としても無駄ではないか、と議会から批判を食うおそれがある。そこで残っていた日本の都市は何処か、と探したところ、広島・長崎・柏崎の名前が浮かんだだけ。大した理屈はありません。奈良・京都は美術品に目が眩んだ某財団からの圧力でパス。ジョンイルにはそんな遠慮はない。破れかぶれで、いきなり敵の中心部を狙ってきておかしくはない。
(06/10/10)

もしも東京に原爆が墜ちたら

 とうとう北朝鮮が核実験を強行したらしいですね。らしいというのは、これを書いている時点では、どの国も核実験の成功を確認していないし、第一あの国は出来もしないことを、やったやったと誇大宣伝する癖があるからです。従って、ここは慌てず騒がず、今後の推移を見守ることが得策です。とはいうものの、やっぱりやっていた、と言うことになれば、そうのんびりもしておられない。実際に原爆がやってきたらどうなるか、を予め予測しておいて損はありません。そこで、今回は次の条件で、某国の核ミサイルが東京に、落下爆発したらどうなるか、を考えてみます。
(条件)
1、爆発位置     JR新宿駅上空300m
2、爆発規模     広島型と同等としてTNT換算15KT
3、日時        連休明けウイークデー正午

 核爆発は、その破壊効果を最大限に発揮するため、地上300〜500m上空での、空中爆発とするのが原則です。このとき、どのような現象が起きるかそのシナリオは理論的に判っているし、その後の核実験で検証されています。別に不思議なことでも、なんでもありません。核分裂により発生するエネルギーは、理論的にはE=mc2という莫大なものです。このエネルギーは、光と熱、爆風と衝撃波、電磁波、放射線に変化しますが、大部分は光と熱です。核分裂が起こると、(1)最初の1/数1000秒後に、200万度ぐらいの光球が出来ます。これがピカッです。但しこの熱は直ぐに減衰します。(2)この熱で周囲の空気は急速に熱せられ、猛烈な速度で膨張します。これによって、地上にある物体の大概は吹き飛ばされます。これの膨張速度は音速の数倍になるので、当然衝撃波が発生します。これがドンです。これにより、爆風でも残っている物件はダメージを受ける。(3)その次に電磁波パルスが発生するが、これはβ線なので、爆心地から離れておれば、大したことはない。理屈の上ではアルミフォイルで遮蔽出来る。それからγ線が放出されます。これはエネルギーが大きい粒子線なので、アルミや鉄なんかでは防げない。生命体に対する影響は大きい。爆心地近くでは、これの直接照射によっても生命が失われます。以上が直接被害です。
(注)光球の発生と衝撃波の発生は、爆心点では事実上同時です。だからピカもドンも区別出来ないはずです。それにも拘わらず、何故ピカドンと分かれて認識されたのでしょうか?爆心地付近の・・・ピカとドンの区別が出来ない距離にいる・・・人達はみんな死んでしまっていて、爆発の記憶が残っていない。記憶を残している人は、大部分爆心から2〜3q以上離れた処にいました。ピカは光速(30万q/sec)で伝わりますが、ドンは音速(340m/sec)で伝わります。この速度差が、ピカドンという言葉を産んだのです。
 爆心地では大量の熱のため、強い上昇気流が発生し、瓦礫や土を巻き上げます。上空の冷たい空気層に達すると、対流が起こります。これがキノコ雲です。上空に巻き上げられた瓦礫も、当然放射能で汚染されていますから、これも放射線の発生源になります。又、キノコ雲の熱で、上空の水分が集まってきます。これが冷却すると雨になる。これが「黒い雨」です。無論これも放射能で汚染されています。核分裂により、二次生成物が出来、周囲に散乱します。これが「死の灰」です。この中には、長期間に渉って強い放射線を出す物質が含まれています。従って、原爆の影響は、最初の核爆発だけで済むのではなく、長期的に続くのです。以上が一次被爆現象です。
 一時的現象が収まっても、被爆地帯には大量の汚染物質が堆積しています。うっかりこれに近づいて被爆するのが二次被爆です。

 では具体的にはどうなるのでしょうか?この場合、過去に起こった事例と比較するのが一番判りやすい。過去、原爆で破壊された都市には広島、長崎の2例があります。ここでは広島を例にしましょう。原爆投下後の広島の状況は、既に新聞、雑誌、TV等で散々紹介されているので、改めて述べる必要は無いでしょう。建物は全ては破壊され、一面に瓦礫が広がっています。昭和20年8月の広島市の建物は、大部分が木造又は煉瓦造だったと考えられます。この中で唯一のRC造近代建築が、旧広島県産業記念館、いわゆる原爆ドームです。これは殆ど破壊されているが、全壊ではない。天蓋コンクリートは全壊しているが、鉄骨はなんとか形を残し、建物は全壊を免れている。又、遠くには破壊を免れた4〜5F位のRCビルがある。つまり、鉄筋コンクリートと言うのは、意外に破壊に対し強いのである。しかも、これは70年近く前の建築である。現在の建築はその後の建築基準法の制定、度重なる改訂により、原爆ドームよりは遙かに頑丈に出来ている。つまり、広島型程度の原爆では、簡単には壊れないだろう、という予測が成り立つのである。
 まず、爆心地付近で地表にいる人や車は、最初のピカでイチコロです。跡形も残りません。このピカと次のドン(爆風と衝撃波)で、ビルの外壁は概ね破壊されるでしょう。しかし、構造鉄骨はどうでしょう。爆心地近くでは、高温のため鉄の強度が低下し、それによって構造が破壊されるビルも出てくるかもしれませんが、高層でも爆心を少し離れたり、爆心地でも背の低い中低層ビルは、建築基準法改正以前の古い建物や、基準法違反のインチキ物件を除けば、意外にしぶとく生き残るでしょう。しかし、最近流行の細長い超高層マンションが、爆風と衝撃波に耐えられるかは、正直判らない。
 地下街はどうでしょう。日本の地下街は大抵、不必要なほど分厚いコンクリートに囲まれ、しかも非常に深い処まで作られています。地下ですから、爆風・衝撃波は問題はありません。熱線、放射線に対しても、地下水や分厚いコンクリートが、エネルギーの減衰効果を発揮するでしょう。
 つまり、某国ミサイルが落下するという情報が入れば、まずビルの高層階にいる人は、速やかに低層階、なるべく地階に避難する。路上にいる人は直ちに付近のビルの地下か、地下街・地下鉄入り口から地下に避難する。電車は時間が許せば、ターミナル又は最寄りの駅に停車し、乗客を地下に避難させる。間に合わなければ、ホームの下に避難させる。避難しても爆風・衝撃波の通過まで、必ずうつ伏せになって、衝撃を避けること。付近に地下への出入り口が無い場合は、水路、河川、池などの窪地、あるいはビルの壁に身を寄せて、熱線・爆風・衝撃波の通過までじっとしておく。この場合も必ずうつ伏せになり、絶対にピカを見ないこと。
 最初のピカドンが終わったからと言って、これで安心してはいけません。この後、自衛隊や消防による放射能除去作業が行われます。これが済んで、大気中の放射能レベルが許容値以下に下がるまで、地下で待機しておくべきです。又、帰宅する場合でも、濡れたハンカチで鼻・口を覆い、空気中の放射性塵を吸引しないことを心がけるべきです。帰宅後も直ちに衣服は洗濯し、塵を洗い落とすこと。無論、行政の許可が出るまで、爆心地に入ってはいけません。
 以上のことを心がけると、原爆による人的被害は、相当部分防げると考えられます。上手くいけば、広島の数分の1以下に抑えられるでしょう。特に重要なことは、情報を速やかに流し、適切な避難誘導を行うことです。年に一度ぐらいは、防空演習ぐらいやったらどうですかね。但し、以上は不燃化、地下化が進んだ先進都市の話しで、郊外や地方の中途半端都市では、こう上手くいかないのは当たり前です。
 なお、これはそっくり北朝鮮に対しても言えます。現在、北朝鮮は全土要塞化ということで、地下化が進み、いざとなると全国民(と言っても出身成分が上で、党・国家・金正日に対する忠誠度が高いものだけ)は地下に潜ってしまう。だから、幾ら爆撃を繰り返しても、核攻撃を行っても、殆ど傷付けることはないだろう。下手に核攻撃をすると、放射性二次砕片が、偏西風に乗って日本にやってくるから、被害を受けるのは日本だけということにになりかねない。なお、アメリカ開発のバンカーバスターというのは、北朝鮮の花崗岩には、全く役に立たない。
(06/10/09)


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