麹町クレーン倒壊事故・・・・この原因はコイズミ・竹中カイカクにあり

 東京麹町で09/04/14で起こった建設事故。メデイアではクレーン車の倒壊になっていますが、正確にはカルウェルドアースドリルの倒壊。今のところ、オペレーターの操作ミスでまとまりそうですが、本当にそれだけでしょうか?少し吟味してみましょう。
1、事故発生のタイミング
 事故はケーシング引き抜き時に発生しています。そもそもカルウェルドクイはノンケーシングタイプだから、アースドリル機にはケーシングの挿入・引き抜き機構は備わっていない。従って、施工業者はアースドリルのクレーン機構を使って、引き抜きを行おうとしたと考えられる。
2、引き抜きに対する検討
 (クレーン機構の最大釣り上げ能力P1)
   これはアームの展開長によって異なるが、最大13.0t、最小5.5tとされる。
 (最大必要引き抜き力P2)
   最大必要引き抜き力P2は次式で表される。
        P2=W+U・fi・L
            W;ケーシング自重(10.5t)
            U;ケーシング周長(D=2.5mとして7.85m)
            fi;ケーシング周地盤付着力(t/u)
            L;ケーシング長(7m)
        クイ周地盤は不詳だが、仮に関東ロームとすると、3〜5t/u位になるが、施工時の攪乱により1/10程度に低下していたとして0.3t/uを見込む。
        P2=10.5+7.85×0.3×7.0=27.0t>13.0t     ・・・・・・OUT
   となり、施工能力不足である。施工業者の云う、最大引き抜き力13t/uは、ケーシング周地盤付着力を0としたときの値であり、現実を無視している。
3、転倒に対する検討
 施工時の機械や施工諸元が不明なので、明確に云えないが、要するに機械重量と引き抜き力との合力の作用点が、ミドルサードを外れておれば転倒に対し不安定と言える。機械軸が施工センターに対しずれておれば、接地幅が小さくなるので、転倒に関しては不利になる。
4、工法選定の問題
 カルウェルドクイを採用している点から見ると、設計者は拡底クイを意図していたと思われる。それはそれで問題はない。耐震性を考慮して拡底クイを採用するなら、今のところ、実用工法としてはこれしかないからである。事故写真を見ると、ケーシングの挿入・引き抜きにアースドリル機しか使っていないと見られる。先に述べたように本工法はケーシングの挿入・引き抜き機能は持っていない。そこで、ケーシング外径よりやや大きい径で掘削し、そこにケーシングを挿入したのだろう。
 そこには、一旦掘削した穴は、その後も変形せず、ケーシング外周には付着力が働かないという思いこみがあったと思われる。しかし現実には、時間が経つと地圧が作用して、地山がケーシングに付着する。そうなれば、地山とケーシングがピッタリくっついてしまうため、引き抜きは容易ではない。これを防ぐためには、ケーシングを振動させて付着力を切ってしまう工法がある。これが揺動ケーシングという手法で、油圧ジャッキでケーシングを揺らして、周面付着力を切ってしまう。但し、重心位置は変わらないから、全体としての安定性は問題はない。古くはベノト工法、最近ではCD(ケーシングドライバー)工法に用いられる。CDを使えば、ケーシングの挿入・引き抜きは全て油圧ドライバーで操作されるから、クレーン作業は必要ではなくなる。現場状況から見て、CD工法を併用しているようには思われない。
 今回の事故を見ると、単に資材の運搬移動にしか使わないクレーン機構と、ケーシング引き抜きという特殊な作業を、混同してしまったことに根本的な問題があるように感じられる。筆者の記憶では、大径(概ねD>1.5m)のアースドリルに対しては、概ねCD工法を併用していたように思われる(但し関西地区のみ)。しかし、まともな施工業者ならCD工法を知らない筈がない。何故それを省いたのか?それが疑問である。発注者からの値引き要請があったのか?過度な価格競争があったのか?過度なコストダウンが要求されたのか?それぞれが作用しているでしょう。要するに、工法選定に問題があったと思われる。
 今回の事故を契機に、市内工事の規制が更に強化されるでしょう。何故そうなったかというと、本来設計者が行うべき検討を設計者がさぼり、それを下に下に押しつけたために、誰も責任を取らなくなったからです。これもコイズミカイカクの一環。麹町クレーン倒壊事故の原因はコイズミ・竹中が負うべき代物です。
(09/04/15)


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