またも失敗か?それとも?北朝鮮核実験(2)      技術士 横井和夫


 鳴り物入りの北朝鮮核実験場爆破。実際は世間が期待したほど大したものじゃない。それよりあれは本当に実験場か?という疑いさえ残る。出てくる映像が動画ばっかりで、おまけに木や崩壊土砂が邪魔をして、詳しいことは読み取れないが、まず坑道断面が小さいことが挙げられる。
 現在のトンネル(鉱山も土木も)工事は、ズリ搬出はダンプによることが普通である。しかし映像ではとてもダンプが進入できるほど大きな断面ではない。その場合レール搬出になるが、坑門の外にレールどころかその跡も見えない。爆破されたのは実験坑道(本坑)ではなく避難抗の疑いも残る。
 また、爆破したのは坑口だけである。仮に避難抗であっても、奥に辿れば本坑に到達できる。今回坑口を破壊しても、その奥は手付かずだから、少し横から斜坑を入れれば、簡単に本坑に到達できる。但し本坑も過去の核実験で破壊され、更に放射能で汚染されているから使い物にならない。では何故今回、こんなパフォーマンスをやったのか?一つは既に核爆弾はもっているので、もうこれ以上核実験をやる必要はなくなった。もう一つは、何時までも坑口を開けておくと汚染物質が流出して環境被害をだしたり、何も知らない農民が勝手に入って放射能障害を起こすのを防ぐため、などの理由が考えられます。
 プルトニウム(Pt)型爆弾は、ウラン(U)型と違って、起爆装置を外しておけば、勝手に核分裂を起こすことはない。多分そういう形にして、あちこちに分散しているのでしょう。こうしておけば国際査察団が来ても、その一部さえ見せておけば、後は手付かずで保存できる。今回の実験場破壊の中途半端さから見て、仮にジョンウンが本気で核廃棄に移行したいと思っても、軍部や労働党保守派の抵抗が強く、なかなか思ったとおりに行かないのが現状ではないか?
(18/05/28
)

 ジョンウンが廃止と発表した北朝鮮核実験場の様子(CNN)。赤破線で囲んだ部分が周囲の地形と不調和で、これが過去の核実験場と思われます。写真左に斜めの直線が入っています。これが何か写真ではよく分からない。鉄道線路かもしれない。
(18/05/13)

本日未明また北朝鮮核実験場付近で地震が発生。韓国気象庁はM2.7(USGSはM2.9、深度3q)で自然地震と発表。そんなところと思います。前にも云っていますが、豊渓里の核実験場付近には、活断層の可能性があるリニアメントがあります。このところ、この付近で地震が連続しているのが気になります。今のところ、M3以下の小規模なものですが、その内M5級以上に発展すると、只では済まない。ピョンヤンやソウルでも相当の揺れが発生します。特にジョンウン政権以降、ピョンヤンは高層建築が立ち並んでいる。これらがまともな耐震構造を持っているとは考えられないので、相当被害が出るでしょう。
 それ以上に厄介なのが、核施設のダメージによる汚染物質の流出です。ニョンピョンの原子炉は既に廃止されていると思われますが、汚染物質は未だ大量に残っている。これをプルトニウムに転換する再処理施設が何処かにあるはずだがよくわからない。更に核弾頭組み立て施設はなお分からない。
 核弾頭が地震ぐらいで臨界に達するなど考えられないので、それは心配する必要はないが、再処理過程の物質や、これまでの核実験で汚染された地下の物質が、外部環境に流出する危険はあるので、今後とも北朝鮮北部の地震監視は重要なのである。
(17/10/13)

面白い情報があります。06/04にアメリカ国務省は、北朝鮮上空で核分裂に伴う放射性のチリを未だに確認出来ていないと発表した。日本政府も放射性チリ確認情報を出していないので、多分これは本当でしょう。ここから今回の核実験もホンモノだったか?という疑問が出てくるのです。
1、爆発規模について
 これも当初からいろんな数値が出ています。筆者は地震マグニチュードから、おおよそ1.3キロトンという数字を出しています。その後アメリカは数キロトン、オバマは4キロトンという数字を示しました。この根拠としては、実験による地震波観測の結果が挙げられます。
 下の図は中国牡丹江観測所による地震波形の一部(UD成分のみ)をピックアップしています(詳しくは気象庁HP参照)。P波初動の振幅は、H18年で約6×103μ、今回約2.5×104μで、約4.2倍になっている。これが、今回の爆破エネルギーが前回のそれの4倍、4キロトン という数字の根拠になっていると考えられます。と言うことは、アメリカは前回の爆発エネルギーを1キロトン相当と判断したということです。

 では核実験でどのような現象が起こるかを見てみましょう。下の図はアメリカネバダ州ラスベガス北西の地下核実験場の跡地です。

 爆薬を地下で爆発させると、爆発点から頂角おおよそ45゜の円錐状爆破漏斗が形成されます。これが地表に達すると、クレーターを作ります。図の右に破線で囲った凹部があります(タイプA)。これは火山の噴火ではなく、地下核爆発によるクレーターです。平原部に沢山のあばたのような円丘が見えますが、これもクレーターです。但し、陥没したのではなく、地下の爆発により地山が盛り上がった状態が残っているだけです(タイプB)。
 これらから地下核実験が地表に及ぼす影響のレベルを検討してみましょう。
 地表から深さW(最小抵抗線長)の地点で、地表までの岩石を破砕するのに必要な爆発力はHouser公式により次式で与えられます。
        L=CW3
           L;必要爆薬量
           C;発破係数
 タイプAのクレーターは完全に崩壊しているので、上式が適用出来る。タイプAクレーターの直径は平均800m、従ってW=800/2=400mとなる。又、北朝鮮核実験地点の土被りは350m前後といわれているので、その意味でも北朝鮮核実験規模を推定するのに都合がよい。地山の岩盤を軟岩〜硬岩とすると、C=0.3〜0.4となる。従ってタイプAのクレーターを作るのに必要な爆発力は
        L=(0.3〜0.4)×4003=19.2〜25.6キロトン
 おおよそ20〜25キロトンの核爆発が必要だったと言うことになります。
 さて、破壊力は爆発力の立方根に比例します。これまで出てきた数値を使って、上のクレーター形成に要した破壊力との割合Aを求めて見ましょう。
 @爆発力を4キロトンとしたとき
   C=0.3の時  A=(4/19.2)1/3=0.593   C=0.4の時  A=(4/25.6)1/3=0.538
 A爆発力を1.3キロトンとしたとき  C=0.3の時  A=(1.3/19.2)1/3=0.407  C=0.4の時  A=(1.3/25.6)1/3=0.370
 B爆発力をAの1/4として0.35キロトンとしたとき  C=0.3の時  A=(0.35/19.2)1/3=0.26  C=0.4の時  A=(0.35/25.6)1/3=0.24
 ネバダ実験(タイプA)に比べ破壊力は@で約6割、Aで約4割、Bで約2割5分という傾向です。これはそれぞれの割合のクレーターが出来るという意味ではなく、その割合の領域の岩盤が影響を受けるという意味です。しかし、@ではかなりの領域の岩盤が影響を受け、地表に何らかの変状が現れてもおかしくないと思われます。Aもそこそこの変状が出てきても不思議ではない。Bになると、見かけ上全く変状が出なくてもおかしくないかもしれません。
 下の写真に示したように、この地域はNNE-SSW方向の節理系が発達しています。これは第四紀に於けるプレート運動による新しい構造です。つまり、この節理系は地表だけでなく地下深部まで及んでいます。但し深くなると地圧によって割れ目は密着し、更に再固結します。従って、地下400mでは見かけ上殆ど割れ目は見えないかもしれません。しかし、核爆発のような強烈な衝撃が走れば当然岩盤はゆるみ、節理が開口する筈です。@のケースではその影響が地表まで及んでも不思議ではない。従って、爆発直後この割れ目を通って放射性ガスが噴き出す筈なのです。ところが、未だに放射性チリが検出されていない。これは何故でしょうか?世界は再びキムジョンイルの目くらましに合っているのではないか、という疑惑が出てくるのです。では、これはどのようにすれば検証できるのでしょうか?
1)爆発規模と地表の変状
 爆発規模の推定は今のところ、どの機関も地震マグニチュードという、いい加減で曖昧な物差しで計っている。こんなことだからいろんな数値が出てきてしまって結局は爆発規模を特定出来ない。そこのところをジョンイルに見透かされてしまっているのである。これに対しては、@地震観測で使われているレーダー干渉法を使って変状範囲と変状規模を決定し、Aそれを説明出来る爆破力を、例えばPICSESのような動的破壊解析プログラムを使ってシミュレーションする。
2)放射性ガスが漏出すれば、その周辺の放射能強度が高くなる。その中にγ-線を出す物質があるので、これを掴まえれば確実に核実験かどうかを実証出来る。
 ジョンイルの意図がどうとかこうとか、そんな馬鹿馬鹿しい議論をする前に、せめて、これぐらいの事をやらなくては駄目なのではないでしょうか?なお、この程度の事は1)については多成分アクテブセンサー、2)については同パッシブセンサー付きの資源探査衛星で可能です。
(09/06/10)


これは近々三回目の核実験が噂される、北朝鮮豊渓洞(図中◎印)付近の衛星写真。NNEーSSW方向のリニアメント(図中実線)が発達することが判ります。これは朝鮮半島北部の地勢を形成する重要な構造です。これが活断層かどうかは不明ですが、一部のリニアメントには分離小丘や対頂谷のような、地形上の活断層要素が見られます。豊渓洞はその内の一つの真上にあります。
 それに斜交して、NE-SW方向の構造(図中破線)が見えますが、これは基盤岩中の何らかの地質構造を現すケスタでしょう。
(10/10/23)

 これは今回核実験を行った、北朝鮮吉州郡、豊渓里付近の衛星写真です。気象庁データによると、爆発地点はほぼ画面の中央になります。画面やや左側に右上(NNE)から左下(SSW)に延びる破線は、かなりはっきりしたリニアメント。これに平行する多数割れ目系(節理系)が発達しています。北朝鮮北東部にはこの方向のリニアメントが非常に多い。中には筆者が昔から注目している確実に活断層と認定出来る構造もある。実はそれは、この場所の直ぐ近くにあるのだが。周辺を見ていると、花崗岩山地を乱開発した跡が一杯見られる。核実験場を作るために、あれこれ物色した跡でしょうか?なお、この写真の左下に大規模な露天掘りの跡が見られる。ひょっとしてこの辺りは昔の鉱山跡地で、核実験坑道もそれを利用したのかもしれない。そしてその鉱山開発が日本植民地時代に行われていたとすれば、やや複雑な感情になるでしょう。

 北朝鮮核実験に付いては、未だにいろんな情報が飛び交っており、どれ一つ信用できるものはありません。もう少し時間が必要です。いずれ、じっくり検討してみたいと思います。
(09/05/27)

 本日(09/05/25)、北朝鮮が2回目の核実験を行いました。さて、この実験がどの程度の規模の物かを検討してみます。実験の規模については、今のところいろんな数字が出ています。マグニチュード換算ではM=4.5(韓国地震庁)、4.7(USGS)、5.3(JMR)の3種類が出ています。とりあえず、この三つを使って計算してみましょう。

 マグニチュードと地震エネルギーの間には次のような関係式があります。
          logE=4.8+1.5M   (J)
 核爆弾規模をTNT爆薬に換算すると1キロトン(kt)当たり4.184×1012Jになります。つまりTNT換算値は
          W=E/4.184×1012 kt
 で求められます。
1)地震エネルギーの計算
 ○M=4.5 の時    logE=4.8+1.5×4.5=11.55    E=1011.55 =0.355×1012J
 ○M=4.7 の時    logE=4.8+1.5×4.7=11.85    E=1011.85 =0.71×1012J
 ○M=5.3 の時    logE=4.8+1.5×5.3=12.75    E=1012.75 =5.62×1012J

2)爆発力(TNT換算)の計算
 ○M=4.5 の時    W=0.355/4.184=0.085kt
 ○M=4.7 の時    W=0.71/4.184=0.17kt
 ○M=5.3 の時    W=5.62/4.184=1.34kt

 観測値によって随分差がありますが、これはいずれ詳細な値に収束するでしょう。但し爆発力は1キロトンのオーダーで、これは前回の実験のそれと大差はない。この程度の爆発力なら戦略的脅威にはなり得ない。爆発力だけなら、前回から大きくは進歩していないでしょう。只の脅しか、南進時の韓国軍防衛陣突破程度にしか役に立たない。もう一つ考えられるのはミサイル搭載用のための弾頭小型化予備実験と言うことです。


 ロシアが震源を地下10q、爆発力20ktと発表していますが、これはあり得ませんねえ。ロシア的妄想でしょう。
(09/05/25)

 防衛省調査では、テポドンの材料・部品には第三国の技術が使われている由。第三国とは何処か?日本だったりして。テポドン部品の8割は日本製、それもアキバ調達という説もある。
(09/05/16)

 韓国が近々、ロケットを打ち上げる。その軌道は日本上空を通る。しかし日本政府は不問にする由。PAC3も展開しない。北朝鮮テポドンは落下するおそれがあると言い、韓国ロケットはそのおそれはないらしい。どういう基準でしょうか?韓国が日本の友好国と思っている人がいれば、それはとんでもないトーヘンボク、重大な錯覚です。将来、北朝鮮に政変が起こり、北朝鮮と韓国が一体化すれば、どうなるか?想像したことがあるのでしょうか?(09/04/26)

 第一回核実験についてはここをクリック


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