大阪層群とは何か     


 先で述べたように、大阪層群とはもともと、昭和30年代に大阪平野とその周辺に分布する、今から数万年〜100数10万年昔の間に堆積した地層に対して用いられた名称です。しかし、その後の研究で同様の地層が全国(だけでなく海外でも)に分布することが判りました。従って、大阪平野だけでなく全国の同様の地層に「大阪層群」という名称が使われることがあります。又、国際的にこの名前を使っても構いません。しかし典型的な大阪層群はやはり大阪平野に分布するのです。残念ながら、昭和30年代後半から急速に進んだ都市化のため、現在では、むしろ大阪平野周辺で大阪層群を見ることが難しくなっています。下の写真は現在、数少なくなった大阪層群の露頭の例です。

地層 代表的な露頭 備考
粘土層 京都府西南の長岡京付近に見られる露頭。破線の上は低位段丘礫層(淘汰の悪い礫・砂が混在する。かつての土石流堆積物)。下が大阪層群下部の粘土層(淡水性)。中間の褐色部分は砂。
 大阪層群粘土の特徴に海成粘土があります。これについては後ほど。
砂層(1) 淡路島西淡町の海岸沿いに見られる、大阪層群砂層の露頭。シルト質の砂と細礫層が不規則に互層しています。湖沼性水底土石流堆積物。
全体として写真左から右に大きく傾斜しており、この付近に一つの撓曲構造があることを示唆しています。
砂層(2) 京阪奈丘陵に見られた大阪層群の代表的な砂層。淘汰の良い綺麗な砂。斜めに入っている模様は斜交葉理。三角洲前庭層(デルタファンのフォアセットベッド)堆積物。見かけは綺麗ですが、これはそれなりに土木・建設工事に問題を抱えています。
砂礫層(1) 高槻市北部丘陵に見られた、粒子の細かい砂礫層です。これの直ぐ下に海成粘土があるので、これは三角州頂上層(トップセットベッド)の堆積物と考えられます。
砂礫層(2) 大阪層群の典型的な砂礫層。淡路島西淡町の海岸沿いの丘陵に見られます。
 丸い礫の集合で、湖沼沖合の浅い部分に堆積したもの。一見一様に見えますが、中央ハンマーの部分の白色シルト層の傾きから、この砂礫層は70〜80゜の角度で傾斜していることが判ります。


 大阪層群の地質調査や大阪層群地帯での土木・建築構造物の設計には、単に土質や粒度・強度だけでなく、その堆積環境や応力履歴を細かく吟味する必要がありますが、それには「膨大で広範囲の知識」が必要なのでここでは割愛します。


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