斜面災害の問題

技術士(応用理学) 横井和夫


(逗子市斜面崩壊)

 本崩壊の原因は斜面内の盛土と大型車が発生する長周期振動としました。しかしその後写真をよく見ていると、別の考えも出てきました。崩壊した斜面の下には実は断層、それも新しい断層があり、斜面はその破砕帯ではなかったかという疑いです。写真から伺えるこの地域の開発経緯から見て、写真右の台地と左の宅地との境界が直線的すぎる。
通常民地開発は旧地形に沿って行われる。ということは両者の境界は元々このような直線状の崖だったということだ。直線状の崖を作る地質的要因、その最大のものは断層、それも新しい「活断層」である。つまり問題の斜面は活断層の破砕帯だった可能性が高い。そんな地盤に、写真のような急斜面を作れば、何かの拍子に潰れても不思議じゃない。そう考えれば斜面崩壊メカニズムも違った視点が出てくる。こんな話を聞けば、この斜面に建っているマンションの住民は気が気じゃないでしょう。
(20/02/19)

 逗子市崖面崩壊事故で、昨日国交省の木っ端役人が現地を見て原因は岩盤の風化だと説明した。筆者はこの役人を敢えて無知無能とは言わない。何故なら逗子市が国交省に泣きついていて、担当者としては言いたくても上から口止めされているかもしれないからだ。
 こういう事故は最後は行政訴訟となって、行政が責任を問われることになる。逗子市も国交省も、公務員互助会の一員だ。仲間を犠牲にするわけにはいかない。そこで一番簡単なことは、地盤や地下水を犯人に仕立てることだ。何故なら、土や水に手錠をかけられないからである。
 特に土木屋は、知的発達段階が野蛮なのか自分達が攻撃されると返って結束力が強くなる。自分達の安定と利権を護るためなら、住民の一人や二人の命などどうでも良い。その結果この事故原因は有耶無耶となり、犠牲者は死に損。そしてまた同じことを繰り返す。「さくらを観る会」と同じだ。
(20/02/08)

 同じく逗子市斜面崩壊現場の写真。崩落土砂はこの崖面、あるいはそれに接続する台地を構成する地層だろう。これらの地層は最新~中新世で、第四紀以降は陸化し、風化が進んでいた。それなら黄~褐色を呈するのが普通。しかし実際の土砂は暗灰色の不均質な礫・砂の雑多な集合体。つまり、空気に触れた形跡がないということで、やっぱり筆者が前回予見した通り盛土であった可能性が高い。
 のり面下段のブロック積とか70゜近い勾配を見ると、この斜面は宅造法以前、おそらく昭和40年前後の作品と思われる。写真で道路より右が台地で、左が低地。昭和30年代後半から低地の開発が進み、40年代に入ると台地の方にも開発の波が押し寄せた。その両者の境界に道路が作られた。
 この時代の土木はいい加減で、測量などろくにやらない。だから実際に施工すると設計図面と合わないことが当たり前。仮に法面に窪地が残ったとしても、現場は適当に盛土をして辻馬をあわせる。そんなことがまかり通っていた時代だ。今も大して変わりないが。
 なおこの事故で筆者が感じたのは道路管理者(逗子市か神奈川県か?)の無能・ボンクラぶりです。何もやらなかった土木部長を怒鳴りつけた明石市長を見習うべきだ。
(20/02/07)

 本日朝神奈川県逗子市で起こった土砂崩壊。はっきりとは言えませんが、崩壊形状・・・斜面からのすっぽ抜け的・・・から、なんとなく斜面の腹つけ盛土のような気がします。いわゆる小規模盛土崩壊です。この斜面は、全体の土地利用から見ると相当の無理が感じられます。
 多分、マンションが立っているところは地山(第三紀三浦層群の岩盤)。その脇を削って道路を作ったが、元々の斜面の中に浅い谷が残り、それを盛土して面合わせしただけでしょう。事業者、施工者、許認可官庁のセンスが疑われます。
 誘因は先日の南岸低気圧に伴う降雨が挙げられますが、これは直ちに排水されます。但しいくらかが残留水圧として残っていた可能性も捨てきれない。
 もう一つ筆者が注目するのが自動車振動です。この盛土は幹線道路に面している。つまり自動車振動の影響をもろに受けやすい。最近特にアベノミクス時代に入って目立つのがトレーラーなど大型車の増加です。大型車が出す振動は周波数が低く、盛土が持つ低い固有周期と重なると大きな振動を起こす。これが盛土を揺すって不安定化をもたらす。いわばアベノミクス災害です。但し今これに着目している人は殆どいません。
 対策はとりあえずならEPS(発泡スチロール)盛土ですかね。
(20/02/05)

 武漢発新型肺炎ウイルス、これの脅威の一つに無症状感染というものが注目されています。つまり感染はしているが・・・潜伏期間が長いため・・・症状が発生しないまま検査をスルーし、他者に感染させてしまうというものです。
 これでワタクシが思い浮かべたのが、小規模盛土の安全性です。これはH10東北太平洋沖地震以来、各地で起きた小規模盛土崩壊対策に関するもので、今回の予算にも従来の二倍の予算計上が認められた。
 というとやっと国も地方の実情に目を向けたのか、などと頭の古い人はそう思うだろが、さにあらず。これはオリンピック後の公共事業削減で仕事がなくなる地方業者向け、国交省が仕掛けた罠。というよりその上には、国土強靭化を掲げる自民二階、次の総選挙を睨んだアベ側近の思惑が見え見え。
 実は盛土というのは規模が小さくなるほど面倒になるのである。トンネルも同じで短いトンネルほど地山の変化が大きくなるから工夫が必要。リニアのような長いトンネルほど大したたことはない。
 H07兵庫県南部地震の後、国交省河川局から堤防の簡易安全判定法が示された。これが実につまらないもので全く役に立たない。その理由は堤防の安定を堤体の規模形状だけできめており、基礎地盤の特性を考慮したものではないからである。
 今回の予算措置で、多分国交省から判定基準が出てくるだろうが、まずこれは役に立たない。新型肺炎に対する初期診断と同じで自覚症状が無ければスルーしてしまう。つまり目立った変状が無ければ安全と診断されるのである。しかし実態は地下では目に見えない形で、ジワジワと危険度が高まっているのである。
(20/02/01)