国内の地すべり・崩壊・斜面災害

技術士(応用理学) 横井和夫


 奈良県下北山村国道169号での土砂崩れ現場の写真。さては断層でもあるかと拡大してみたが、断層らしきものは見当たらない。但し崩壊斜面背後、崩壊頂部から下のバックホウを連ねる線上になんとなくそれらしきモノが見えるが、これが何ものか、写真では分からない。
 対策としては、常道として頂部カット工を先行。崩壊部上の斜面をカット。勾配から見て可能。あとは法面の様子を見て考える。こういうときにドローンを使うのだ。
 この国道上流の伯母が峰トンネルまでは改良が進んでいるが、その先が未改良。何時改良が終わるか分からない。R168の改良が済んでからでしょう。
 誰か専門家と称する学者が「崩れそうになたら立ち止まるか、よこに逃げるべきだ」なんてことを言っていたが、今ア狭い道路横によけられるわけがない。うっかりよけるとダム湖に転落だ。だから現実を知らない学者は困るのだ。
(23/2/26)

 昨夜福井市で起こった道路陥没事故。クラックの様子から見てこれは陥没ではなく地すべりです。周囲の地形から当該は谷を埋め立てた集水地形で元々水が集まりやすい。これが「素因」です。昨夜来から北陸地方は低気圧が通過し雨が降った。この雨が何らかの理由で地下に浸透し・・・これが「誘因」・・・、水圧を発生させて地すべりにいたった。
 さて”何らかの理由”ですが、下水道工事はその一つに挙げられます。例えば明かり工事であればその掘削面から、推進工法なら立て坑かその周囲から等です。画面中央の人が集まっている処に矢板が見える。この矢板が何時何のためかは分からない。施工中の矢板なら明かり工事の可能性もある。
(23/12/20)


 静岡県葵区での深層崩壊の近接写真。上の口絵よりは崩壊の実態が分かります。崩壊頂部コルの右肩から、斜め左に何やら直線状の筋が見えます。これが断層でしょうか?もしそうならこの断層に沿って地下水が集中し、それが引き金になった可能性があります。場所が四万十帯だから、そんな断層が幾らでもあって不思議ではない。リニア工事でも気を付けておいた方が良い。
(23/08/26)

 先般静岡県葵区某所で生じた大規模崩壊。始めは地すべりと云っていましたが、その後、深層崩壊と訂正。どっちでもいいですが、崩壊斜面とその後方山地の鞍部、それと手前尾根に見られる直線状の窪地を連ねると、何か断層のような感をうけます。
 場所柄から云って南アルプス南部の一角でしょう。こういうのがリアに交差する可能性がある。そういう場所では、切羽の崩壊や天端側壁の押し出し、突発湧水等が予想される。それを事前に予測するために水平ボーリングをやるのだ。
(23/08/25)


 先日の線状降水帯による豪雨で生じた、鹿児島県での河川災害。河床が大きく洗堀され、両岸に崩壊が生じています。現場は平坦な台地ですが、この台地を作っているのが、所謂「シラス」。写真は典型的なシラス台地の浸食と崩壊を物語っています。
 シラスは岩盤でも土でもありません。灰が固まっただけで、土の構造骨格を持たない。だから水が入ると簡単に崩壊してしまう。対策はないか?あるといえばあるが、短期的なもの。結局は長く付き合っていくしか方法はないでしょう。なお、この被災地、岸田は来たのか?それとも来る気はあるのか?
(23/07/28)


 昨日奈良県十津川村、国道168号上で生じたのり面崩壊事故。のり面下段は法枠工が施工されているが、その上段はプロテクトはなく、ここが崩壊したものと思われます。誘因は昨日までの低気圧通過に伴う降雨でしょう。
 この辺り、地形が急で、地山の安定勾配で切り取るとのり面が収まらなくなり、のり面が遥か遠くまで延びるので設計が出来なくなる。そこで適当なところで収めてしまうのだが、収め方が難しい。管轄は奈良県の吉野土木だが、結構乱暴なことをやってしまったのではなかろうか。
(23/04/09)

   立川ローム

Tl-1;黒色ローム

TL-2、TL-3;赤色ローム

Tg;立川礫層

f;断層?

 世田谷崩壊地で崩壊した法枠を撤去した跡の崖面。思った通り、アンカーの跡が見当たりません。要するに、斜面に法枠を貼り付けただけ。固定もせいぜい差し筋程度でしょう。
 写真で、梯子の頂部から水平に引いた破線の上が関東(立川)ローム層。下が立川礫層。従って、地盤支持力が不足ということは考えられない。のり面背後に水圧が作用しための転倒と考えられます。水圧の原因は前日の雪でしょう。
 なおこの写真では、色々面白い地学現象が見られます。例えば旧石器時代の遺物や活断層とかです。皆さん、分かりますかあ。

上の写真の解説を行います。まずこの崖を作る地盤は、梯子の上端を境に、上部の立川ローム層と下部の立川礫層にわかれます。立川ロームは黒色化の程度でTl-1、2、3の三層に分かれます。Tl-1と2の間に白い異物を含む層があります。この異物が何かは写真だけでは分かりません。火山活動に「伴う軽石かもわからない。このような層の存在は、火山活動の一時的な休止を物語るものです。そしてこの中にしばしば旧石器が発見されることがある。もしこの白い物体の中に旧石器があれば、今から三万年ぐらい前には、世田谷にもヒトが住んでいたことになります。と思えば、この崖面を又コンクリートで埋めるのはもったいない。
 写真の中央部で、下位の立川礫層と、その上の立川ローム層Tl3の境界に若干のずれが見られます。又その左側にも、これに平行なずれが見られます。断層の可能性も考えられますが、これだけでは断定できないのでとりあえずf’としておきます。主断層の活動に伴う、雁行割れ目のようなものかもしれません。。
(23/02/19)

東京世田谷で生じたがけ崩れの写真。画面が暗くてよく判りませんが、報道では壁が崩れたとなっていましたが、崩壊部に隣接してRC法枠が映っている。何らかの理由で法枠が崩壊したのでしょう。考えられる理由は、基礎が不十分だった、アンカーによる法枠の背面への定着が不十分だったなどが考えられます。
(23/02/18)





 昨年末の山形県鶴岡市斜面崩壊に、融雪と降雨の地下浸透が崩壊の原因という説が登場。私も最初雪の影響も考えたが、ニュースの映像を見ると現地は殆ど雪はなく、本当に雪が降ったかどうかもわからないこと、現地は独立した小山塊で流域面積も小さいことから、少しどうかとペンデイング。その後数日来かつてない降雨があったという報道も出てきた。
 未だ本当のところは分からないが、少なくとも「永年の強度低下だ」とか「地下水の盈虚で風化が進んだ」などという非科学的・無責任なアホ説明が出てこなくてよかった。
(23/01/07)

 昨年末大晦日に山形県鶴岡市で生じた斜面崩壊。現場は鶴岡の海岸線に近い小規模な山塊。雪解けの所為かと思ってネットで写真を検索をしてみると、余り雪の量も多くない。或いは前日来からかつてない雨が降ったという情報もある。さてどちらでしょう。
 地山は真っ赤に風化していること、地層のような構造が見えないことから、強風化花崗岩(所謂マサ)と考えられます。かなり鉄分が多い。こういうのは砂鉄の原料になるので、古くから鋳物産業が発達することが多い。
 それは別として、昨年来より今年の冬は夏のラニーニャの影響で豪雪になります。春先から連休ころにかけて、東北・北陸地方では、地すべり・斜面崩壊のような山地災害のほか、河川の急激な増水にも要注意。鶴岡といえば、なんといっても月山山麓大日坊、田麦俣地すべりが注目。
(23/01/02)

 2022年台風15号で発生した線状降水帯による豪雨で、静岡県浜松市で発生した宅地の斜面崩壊。写真右上方から狭い谷が切れ込み、それを盛土したものと思われる。但し盛土にしては斜面内に排水設備の痕跡がないのが腑に落ちない。
 開発時申請時に排水設備設置を指導しなかったとすれば行政の手落ちだし、指導があっても業者がそれを無視すれば手抜き工事だ。熱海土石流事件と根は同じになる。同じ静岡県だから、ないとは言えない。清水次郎長や白波五人男のおひざ元だから、役所より業者のほうが強い地域性があるのか。
(22/09/25)


 これは中央アルプス標高2550mの地点に発生した地表面クラック。地すべりの頂部滑落崖(テンションクラック)の初期状態です。ほぼ直線状に延びています。かなり深く広範囲の地すべりと思われます。
 斜面の末端がどうなっているかわかりませんが、今後大雨が来て全体が崩壊すると、下流に大規模な土石流が発生する恐れがあります。なおクラックに沿って、立ち入り禁止用ロープが張られていますが、下部ブロックが活動すると上部ブロックもそれに引きずられることがあるので、立ち入り禁止区域は斜面全体をよく見て決めることが肝要。
(22/08/07)



 これは今回の雨で崩壊した長崎の住宅斜面。筆者がここ数年関係してきた奈良県生駒市の住宅地擁壁崩壊とよく似ています。どちらも5mを越える、高い石積擁壁で囲まれた宅造法以前の構造物。或いは宅造法以後でも、設計者や監督官庁が法律を認識していなかった可能性がある。
 本件の場合、明らかに急傾斜地法の適用物件である。従って自治体に改善義務が生じる。何もしてこなかったのだろう。 
 地方自治体の場合、監督官庁が事業者に対しオオアマになるのは、今問題になっている熱海土石流事件とか知床沖遭難事件にも共通する病根である。宅地造成の場合、最も造成が盛んだった昭和30年代から40年代にかけての構造物が老朽化し、さらに今後の気候変動を考えれば、この種の事故は増えても減ることはない。
 そもそも石積みやブロック積みのような不安定な構造物で、斜面の崩壊を抑止しようというのが間違いの素。背面の土に間隙水圧が発生すれば、石積みなどたちまち不安定化するのは当たり前。これを防ぐためには1)石積み、ブロック積みは切土のり面に限定する。2)盛土のり面については背面盛土を何らかの補強材で補強し、自立性を確保した上で、表面化粧にのみ使用する(下図参照)。

(石積み擁壁補強案)

 それでは戦国時代の城郭などはアウトではないか、と思われるでしょう。その通り、お城の石垣などは現在の宅造法や土砂災害防止法基準では、みんな不法建築になります。只文化財という特例で見逃されているだけです。だから観光でお城に行った時でも、石垣は何時壊れるか分からないという点だけは忘れないように。

(22/05/14)

 先日の連続降雨で通行止めになった、上高地線ののり面崩壊。この道路しょっちゅうこの種の崩壊を繰り返す。長野県もいい加減に抜本的対策をやったほうが良い。例えば道路を対岸に付け替えるとか、トンネルでクリアーするとかだ。アンカー補強もとりあえずは良いが、この辺りの地質は所謂付加体で、第四期地殻変動量も大きく、岩盤も見た目はカチカチでも、中ではガサガサ。落石の状態から見て、大滝ダムの白屋のようじゃないか?あれはどうにもならない。表面だけ抑えても、そのうちアンカー如持っていかれる。結構長いアンカーが必要。それでも大丈夫かと云われると、自信は持てない。
(22/05/02)


  昨夜金沢で起こったのり面崩壊。手前の道路は北陸道でしょうか?雨のない真冬になんでのり面崩壊が、と思うでしょう。原因は昨年来の雪が解けて、地下に浸透したためと考えられます。3年前にも大分県耶馬渓で似たような崩壊がおこっていま。これも強度低下の所為というのでしょうか?
(22/02/01)

 昨日土石流を発生した静岡県熱海市伊豆町の衛星写真。Google Earthのコピーだから画質は悪い。図の中央が土石流を生じた逢初川。黒線はその後の報道から推定される土石流ルート。この川、ニュース映像を見ただけで土石流河川ということは分かる。しかし砂防河川ではなく、流域も砂防指定地*ではなかったようだ。この点が結構致命的。
 川の右岸の尾根に何やら茶色の帯が見えます。画面を拡大して見ると、尾根を開削して何やらを作ろうとしているようだ。写真撮影時と今では時間差があるので、何かは判りませんが、場所柄から云ってメガソーラー基地造成の疑いがあります。事故責任を巡って、今後住民、県(市)、開発業者が三つ巴になって揉めますよ。
 直接の原因は率直に言うと、盛土の下の防災管(一般にヒューム管、仮設用で大したものではない)が折れたか、目詰まりしていた事。これはよくあることで珍しくはない。
*多分今後砂防指定地に指定されるでしょう。しかしこれも一筋縄ではいかない。
(21/07/04)

   ①上町断層
②古い崩壊面
③上町断層の地表突出部
④今回の崩壊面
⑤上町段丘面

上の図は今回の西成崩壊事故のメカニズムを模式的に表したものです。ポイントは「上町断層」です。崩壊は次のようなプロセスで発生したと考えられます。
1)この地域は少なくとも数10万年前までは平坦な河原だったと考えられます。
2)ある時期から上町断層が活発化し・・・ ①上町断層・・・、断層の府が市側が隆起し段丘面を形成します。図の⑤上町段丘面。
3)この時隆起部は地表に突出します・・・③上町断層の地表突出部。
4)しかしこの突出部は安定せず、その後の雨や地震で崩壊し、ある安定角を持つ斜面・・・②古い崩壊面・・・に落ち着きます。
5)その後、文明時代になると人が住み着き、居住空間を広げるために斜面の前に盛土をし、更に石積み擁壁で表面を覆ってとりあえず安定にする。
6)そして今回擁壁の下を掘削したために擁壁と盛土が、一体となって崩壊した。この時擁壁基礎下の地盤が断層の影響で緩んでいたかどうかは、今のところわかりません。

 なお、大阪市中央を南北に走る「上町断層」の周辺では、似たようなことになっていますから、今後もご注意を。
(21/07/01)

 昨日崩壊した大阪市西成の住宅現場。住居が立っていた崖は、「上町断層」の地表トレースです。つまりこの住居は上町断層の真上に立っていたわけです。それは別にして、崩壊面には石積みの背面土が現れていますが、これは断層で出来た斜面に貼りつけた盛土で、その前を石積みで覆っただけです。何らかの理由で石積み擁壁が崩壊し、それに伴って背面の盛土、住居が倒壊したと考えられます。”何らかの理由”が重要です。
(21/06/26)

 昨日新潟県で発生した地すべり。撮影者(あるいは投稿者)は、中央の蛇行する黒い帯を地すべりと思っているのでしょう。実際の地すべりは、多分画面中央奥にある斜面で発生した。その末端が泥流化したのが、この黒い帯です。
 原因は昨年末から2月にかけての豪雪と、この処の気温の急上昇です。これも日本海の水温上昇が原因ですから、全体としては、地球温暖化が背景にあると考えて良いでしょう。
 なおこの地すべり、新潟は糸魚川で発生したらしい。昔北陸道のある業務で道路公団の糸魚川工事事務所に出張した帰り、駅前の食堂で昼飯を食っていたら、突然テレビで「神戸で地すべりが発生しました」というニュース」。すると側にいたオッサンが「あんなもん、こっちも負けてない」と妙な自慢。
(21/03/04)

 一昨日大分県中津市で起きた落石事故。直径数mあまりの安山岩の巨岩です。ここ数日、西日本でも断続的に雨はありましたが大きなものではなく、山地崩壊などは起きていません。従ってこの落石原因は雨は無関係と考えられます。
 このように地震や降雨と無関係に、偶然落石が起こることはよくあります*。原因は不明です。筆者は何らかの原因による低周波振動の影響を考えていますが証拠はない。海岸に見られる落石は、打ち寄せる波が作る低周波振動が原因と考えられます.。前掲の逗子海岸の土砂崩壊などそれによるものでしょう。しかし内陸ではそれに該当するものがない。謎です。
 候補として地下深部(概ね数10㎞)のマグマの膨張とか、プレート境界断層のずれを考えるのも面白いでしょう。そうだとしたら、この種の落石は将来の火山活動や地震予知現象に利用できるかもしれません。
*逆に何時落ちてもおかしくないと思っていたのが一向に落ちないケースもある。
(20/05/06)

 これは山形県の何処か(新聞でははっきり云ってないが月山のあたりか?)の道路で起こった盛土の地すべり。雪解けで盛土内の地下水位が上がり動き出したもの。山形県ではしょっちゅうあるので別に珍しくはありません。
 画面中央右端に見えるのは調査ボーリング。なんであんなところでやるのかよく分からない。やるならまず画面左の雪が残っている個所。ここで盛土背面地下水位の分布を調べるのが基本。なお地表変状を見ると、道路は画面の奥の方が沈下し手前が盛り上がっている。これは辷りの方向が、道路センターに対し直角ではなく、画面左上から右下方向にあるということだ。こういう現象は盛土の基礎である地山に谷があり、その谷の方向が道路に対し斜交しているということを意味する。これは結構よくある現象なのだが、常に道路横断しか見ない土木屋には、なかなか理解しづらいことかもしれない。しかし対策工の計画では重要になる。力の方向を無視して施工のしやすさだけを考えた対策工では、過大設計になったりその逆のケースもありうる。
 こういう事故を如何に事前に抑え込むかが、本当の危機対応。この地すべり事故は今の日本政府コロナ対策とよく似ている。
(20/04/


 本崩壊の原因は斜面内の盛土と大型車が発生する長周期振動としました。しかしその後写真をよく見ていると、別の考えも出てきました。崩壊した斜面の下には実は断層、それも新しい断層があり、斜面はその破砕帯ではなかったかという疑いです。写真から伺えるこの地域の開発経緯から見て、写真右の台地と左の宅地との境界が直線的すぎる。
通常民地開発は旧地形に沿って行われる。ということは両者の境界は元々このような直線状の崖だったということだ。直線状の崖を作る地質的要因、その最大のものは断層、それも新しい「活断層」である。つまり問題の斜面は活断層の破砕帯だった可能性が高い。そんな地盤に、写真のような急斜面を作れば、何かの拍子に潰れても不思議じゃない。そう考えれば斜面崩壊メカニズムも違った視点が出てくる。こんな話を聞けば、この斜面に建っているマンションの住民は気が気じゃないでしょう。
(20/02/19)

 逗子市崖面崩壊事故で、昨日国交省の木っ端役人が現地を見て原因は岩盤の風化だと説明した。筆者はこの役人を敢えて無知無能とは言わない。何故なら逗子市が国交省に泣きついていて、担当者としては言いたくても上から口止めされているかもしれないからだ。
 こういう事故は最後は行政訴訟となって、行政が責任を問われることになる。逗子市も国交省も、公務員互助会の一員だ。仲間を犠牲にするわけにはいかない。そこで一番簡単なことは、地盤や地下水を犯人に仕立てることだ。何故なら、土や水に手錠をかけられないからである。
 特に土木屋は、知的発達段階が野蛮なのか自分達が攻撃されると返って結束力が強くなる。自分達の安定と利権を護るためなら、住民の一人や二人の命などどうでも良い。その結果この事故原因は有耶無耶となり、犠牲者は死に損。そしてまた同じことを繰り返す。「さくらを観る会」と同じだ。
(20/02/08)

 同じく逗子市斜面崩壊現場の写真。崩落土砂はこの崖面、あるいはそれに接続する台地を構成する地層だろう。これらの地層は最新~中新世で、第四紀以降は陸化し、風化が進んでいた。それなら黄~褐色を呈するのが普通。しかし実際の土砂は暗灰色の不均質な礫・砂の雑多な集合体。つまり、空気に触れた形跡がないということで、やっぱり筆者が前回予見した通り盛土であった可能性が高い。
 のり面下段のブロック積とか70゜近い勾配を見ると、この斜面は宅造法以前、おそらく昭和40年前後の作品と思われる。写真で道路より右が台地で、左が低地。昭和30年代後半から低地の開発が進み、40年代に入ると台地の方にも開発の波が押し寄せた。その両者の境界に道路が作られた。
 この時代の土木はいい加減で、測量などろくにやらない。だから実際に施工すると設計図面と合わないことが当たり前。仮に法面に窪地が残ったとしても、現場は適当に盛土をして辻馬をあわせる。そんなことがまかり通っていた時代だ。今も大して変わりないが。
 なおこの事故で筆者が感じたのは道路管理者(逗子市か神奈川県か?)の無能・ボンクラぶりです。何もやらなかった土木部長を怒鳴りつけた明石市長を見習うべきだ。
(20/02/07)

 本日朝神奈川県逗子市で起こった土砂崩壊。はっきりとは言えませんが、崩壊形状・・・斜面からのすっぽ抜け的・・・から、なんとなく斜面の腹つけ盛土のような気がします。いわゆる小規模盛土崩壊です。この斜面は、全体の土地利用から見ると相当の無理が感じられます。
 多分、マンションが立っているところは地山(第三紀三浦層群の岩盤)。その脇を削って道路を作ったが、元々の斜面の中に浅い谷が残り、それを盛土して面合わせしただけでしょう。事業者、施工者、許認可官庁のセンスが疑われます誘因は先日の南岸低気圧に伴う降雨が挙げられますが、これは直ちに排水されます。但しいくらかが残留水圧として残っていた可能性も捨てきれない。
 もう一つ筆者が注目するのが自動車振動です。この盛土は幹線道路に面している。つまり自動車振動の影響をもろに受けやすい。最近特にアベノミクス時代に入って目立つのがトレーラーなど大型車の増加です。大型車が出す振動は周波数が低く、盛土が持つ低い固有周期と重なると大きな振動を起こす。これが盛土を揺すって不安定化をもたらす。いわばアベノミクス災害です。但し今これに着目している人は殆どいません。
 対策はとりあえずならEPS(発泡スチロール)盛土ですかね。
(20/02/05)

 武漢発新型肺炎ウイルス、これの脅威の一つに無症状感染というものが注目されています。つまり感染はしているが・・・潜伏期間が長いため・・・症状が発生しないまま検査をスルーし、他者に感染させてしまうというものです。
 これでワタクシが思い浮かべたのが、小規模盛土の安全性です。これはH10東北太平洋沖地震以来、各地で起きた小規模盛土崩壊対策に関するもので、今回の予算にも従来の二倍の予算計上が認められた。
 というとやっと国も地方の実情に目を向けたのか、などと頭の古い人はそう思うだろが、さにあらず。これはオリンピック後の公共事業削減で仕事がなくなる地方業者向け、国交省が仕掛けた罠。というよりその上には、国土強靭化を掲げる自民二階、次の総選挙を睨んだアベ側近の思惑が見え見え。
 実は盛土というのは規模が小さくなるほど面倒になるのである。トンネルも同じで短いトンネルほど地山の変化が大きくなるから工夫が必要。リニアのような長いトンネルほど大したたことはない。
 H07兵庫県南部地震の後、国交省河川局から堤防の簡易安全判定法が示された。これが実につまらないもので全く役に立たない。その理由は堤防の安定を堤体の規模形状だけできめており、基礎地盤の特性を考慮したものではないからである。
 今回の予算措置で、多分国交省から判定基準が出てくるだろうが、まずこれは役に立たない。新型肺炎に対する初期診断と同じで自覚症状が無ければスルーしてしまう。つまり目立った変状が無ければ安全と診断されるのである。しかし実態は地下では目に見えない形で、ジワジワと危険度が高まっているのである。
(20/02/01)