地下ガス(こういう地盤にガスが出る)
火山や温泉からのガスについては「火山性(温泉)ガスの危険性」を参照して下さい。
・八箇峠ガス爆発事故
・東京渋谷(シェスパ)ガス爆発事故
・南関東ガス田
八箇峠トンネルガス爆発事故について、警察は施工業者(佐藤工業)の責任者二名を逮捕したが、筆者はこの事故については疑問を持っている。果たして発注者の国土交通省に責任はないのか?背景には、最近流行の提案型入札制度があるのではないか?ゼネコン二名を起訴しただけで、問題の本質を解明出来るだろうか?などである。当に応用地質学の出番である。筆者が鑑定をすれば、真実を明らかに出来るだろう。
(14/01/16)
ガス爆発事故から1ヶ月。それでも坑内ガス濃度が下がらない。そのため国交省は、地表からガス抜きボーリングをやることになったらしい。これは地下には、まだまだ相当量のガスが賦存していることを示す。最早、只のガス溜まりではなく、ガス田と云った方が良いかもしれない。折しも、新潟県沖で大規模ガス田発見のニュース。ということは新潟県のガス資源は、まだまだ捨てた物ではということだ。今回のガス突出は、土被りがせいぜい数100mのトンネル内で生じた。もっと深く地下1000〜数1000m級では、更に大規模なガス田が見つかるかもしれない。今後新潟では、とんだ天然ガスブームが起こるかもしれない。なお、この地域はトンネル工事が行われているから、鉱区権設定は無かったかもしれない。佐藤工業は鉱区権を設定しておけば、株価が上がったかもしれないのだ、残念。
(12/06/19)
現在この事故は、新潟県警が業務上過失致死傷容疑で捜索を行っていますが、今までの客観的事実から見ると、刑事で立件するのは難しいような気がする。
1、国交省は「このトンネルはガスが出ることに注意」と、文書で警告していたと云うが、これがどれほどの拘束力を持っているか疑問である。本工事は所謂公募制で入札が行われたものと思われる。上記の一文は、入札参加通知書の中の注意書きではないか、と思われる。特記仕様であれば拘束力はあるが、「注意喚起」だけでは特記仕様には該当しない。
2、注意書きに対して落札者は、受注後それに対する回答を提出し、発注者の承認を得なければならない。どういう回答かは、受注者の任意である。例えば、観測施工で対応する、というのも一法だし、工事着工後改めて地質調査を行い、その結果で判断する、というのも一法である。佐藤工業は後者の方法を選んだのだろう。別にこれは間違いとは云えない。
3、そして佐藤工業は、ガスは出ないと判断した。事故後、佐藤工業が工事再開後、坑内のガス測定を行っていなかったことが判って、マスコミは鬼のクビを取ったかのような報道をするが、筆者はガス測定をやっていたところで、本件事故の発生は防ぎ得たかどうか、疑問と考えている。何故なら、工事再開後も当日も、ガス測定をやらなくても工事は無事に進捗している。これはガスの突発的噴出以外に、事故原因が考えられない証拠である。ガスの局所的突出の予測は果たして可能であるかどうか?過去の事例から見ると、幾ら計測を綿密に行っても可能であるとは云えない、と云うのが現実である*。地震予知が未だに出来ないのと同じである。
4、又、ガス測定は、ガス発生が事前に予測される場合に課せられる義務(労働衛生安全規則)であって、あらゆるトンネルに義務付けられるものではない。施工者がガスは出ない、と判断すれば、構わないのである。
5、ということは、本件事件を立件しようとすれば、佐藤工業の判断、就中その根拠となった地質調査が妥当であったかどうか、が検証されなければならない。但し、この種の調査の内容・数量には明確な規定があるわけではない(筆者は個人的には、背斜構造の有無**、それに着目した調査が行われていたか、がポイントのように思うが、それでも刑事立件の根拠としては迫力に欠ける。そういう法律が出来れば別だが)。
以上から、本件事故は肝心の所にいくと、曖昧になってしまうので、新潟県警にはお気の毒だが、無駄な努力のような気がしてならない。
6、ではこんな事故は防げないのか?防げますよ。それは事前の地質調査を如何に綿密に、周到に行うか、がポイントです。この種の事故が起こると、早速国交省などは一般的な安全基準や地質調査要領を作りたがる。実はこれがクセモノで、この種の基準は役人の責任逃れのためだけが目的である。実際の事故防止には何の役にもたたない。ここで重要なのは「周到」という言葉です。周到に作戦を練れる技術者・地質家が必要なのです。
*昭和49か48年頃だと思ったが、農林水産省月山トンネルでは、ガス検知システムを作り、坑夫はカナリアまで持って入ったのに、ガス爆発を起こして死傷者を出している。その頃、三井三池三河坑とか、その前は北炭夕張坑でガス爆発や炭塵爆発を起こしている。これらの原因はいずれもメタンの突出である。
**当該地域に背斜構造があるかどうかは、別途地質図で確認して下さい。
(12/06/03)
前の所見では、長期の切り羽停止で坑内に滞留したガスが、引火爆発したのではないか?という所見を述べましたが、その後の情報から見ると、そうではなく突発性ガス噴出の可能性が高いと思われます。情報を整理してみます。
1、爆発時トンネル切り羽は、坑口から1.4qだった。
2、4人の作業員の遺体が確認されたのは、1.3qの位置で、100mのズレがある。
3、工事中止前は毎日ガス検知を行っていたが、異常は検出されなかった。
4、事故前日も切り羽迄点検しているが異常はなかった。
5、事故が発生したのは5/24午後8時頃。通常トンネルは二方交替で作業するが、死亡した作業員は2番方と思われる。
6、番方交替が何時かは知らないが、一般には昼前後。ということは1番方は問題なく施工出来た。2番方も問題無く切り羽に入っている。
7、つまり番方交替から事故発生までの数時間の間に、切り羽に何らかの異常が発生し、作業員は慌てて退避し100mほど走った時点でガスが引火爆発した。何らかの異常とはガス突出に他ならない。
では、ガス突出は何故発生したのか?地山が魚沼層群ということで、おそらく先受けボルトを入れた。通常のNATMなら精々4m程度だが、最近は施工効率を上げるために長尺ロックボルト(AGF)を使うことが多い。大体、10m位だが、中には20mというのもある。こういうロックボルトの場合、穿孔によって、奥にある地下水や天然ガス溜まりを貫くケースがある。無論これにより、水圧やガス圧を軽減出来るので、補助工法にも利用できる。今回のケースは、AGFの穿孔が坑奥部にある天然ガス埋蔵層を抜いてしまったのではないかと思われる。通常、天然ガスは背斜構造の周辺に貯留される。魚沼層群は向斜・背斜を繰り返す複背斜構造が特徴である。事故区間が背斜構造に掛かっていた可能性もある。又、事故直後の報道では、事故発生地点周辺の地形は、急に標高が高くなっている・・・トンネル土被りが大きくなる・・・という印象だった。こういう場所は、地質的には背斜構造の可能性が高く、ガス圧も高くなる。
無論これは仮説であって、事実と違うかもしれないが、事故原因を明らかにするためには
1、当日の工事内容の詳細
2、事故発生区間の地質構造の詳細
を顕にする必要がある。
てなことぐらいは、アホな世間知らずの学者でも云えること。技術士はそれで満足してはならない。多分この事件は刑事・民事で争われる。原告は被害者家族と警察、被告は元請けの佐藤工業と国土交通省である。原告は被告の設計・施工計画・施行管理の瑕疵を立証しなくてはならない。上で挙げた情報から見ると、これは極めて困難と云わざるを得ない。筆者が被告側鑑定人なら、少々のことは論破してみせる。従って、被害者家族は出来るだけ有利な条件で、民事調停を目指した方が得ではないか。
(12/05/27)
新潟県南魚沼郡八箇峠トンネルの爆発事故。当初の報道では、爆薬が爆発したような印象だった。今時暴発するような火薬を使う訳が無いし、魚沼層群で爆薬を使うこともまずない。大抵は機械掘削なので不思議だなあと思っていたら、どうもこの事件、メタンガス爆発の可能性が大。地山が魚沼層群だから十分可能性があります。(12/05/24)
事故発生当初の映像ではトンネル坑口に換気ダクトが無いので、ダクト無しで2.8qも掘るのか?と思ったらそうじゃなくて、昨年10月から今年5月まで、約7ヶ月間工事を停止していて、事故発生日は工事再開初日だったらしい。切り羽は坑口から1.2q程入った位置なので、それまでは何の別状もなく掘削出来た訳だ。おそらくメタンの漏出もあったが、量が少ないので換気で排出出来たのだろう。
今回の事故原因は7ヶ月間の鏡止めで、坑内にジワジワと漏出滞留したメタンが、何らかの原因で引火爆発したものと推定されている。冬季は積雪で坑口も閉ざされるから、坑内は密閉環境にある。それはそうだと思うが、ではガスはどういう経路で漏出したのでしょうか?切り羽からか?佐藤工業ともあろうものが、7ヶ月間の鏡止めを無普請でやるとは思えない。必ず切り羽吹きつけ+補強はやっているはずである。そうすると、灯台下暗しで、踏まえからか?通常踏まえは吹きつけの対象にしない。しかし、ダンプの走行で路面は泥土化するので、それ自身吹き付け効果もある。意外に、普段気が付かないようなところから、という可能性もあります。
(12/05/16)