火山災害のあれこれ


火山や温泉以外でのガス噴出については「ガスが出る地盤」を参照して下さい。


 今の日本の災害の話題は「能登半島地震」一色ですが、海の向こうのアイスランドでは溶岩の噴出が止まらず市街地にまで達している。
 写真は溶岩を噴出している大地の裂け目の一つ。このアイスランドの溶岩噴出はある伝説を作っている。9世紀頃のアイルランドのある僧院にいた13人の修道僧が、世界の果てを見ようとして大天使ミカエルの導きにより船出した。そこでは海上の岸壁に繋がれたイスカリオテのユダとか、溶岩が噴き出す地獄の劫火に包まれた島(灼熱地獄)、氷に閉ざされた極寒の大地(寒冷地獄)などを見たという伝説が伝わっている。後の二つはそれぞれアイスランド、グリーンランドのこととも考えられる。だとすると中世ケルト人はコロンブスより遥か前に、新大陸を見ていたことになる。
(24/01/15)

 噴火が懸念されるアイスランド。写真中央は俗に「ギュヨー」と呼ばれる地殻の裂け目。アイスランドは大西洋中央海嶺(MAR)の真上にあります。大西洋はこのMARを境に今も東西に拡大しています。
 ギュヨーからは溶岩・・・ハワイと同じ玄武岩質・・・が噴き出すことがあり危険。又ギュヨーからたちのぼっている煙は主に水蒸気ですが、中に硫化水素のような有毒ガスも混じっているので近寄らないほうが良い。
(23/12/12)

 昨日噴火したロシアカムチャッカのベズイミアニ火山の噴煙。手前の三角形の山が主峰のクリュチェフスカヤ山。これらの名前を見ると、ロシアでは山の名前は女性形で、ロシア人は山を女性とみなしていたことがわかる。日本でも古代では山神は女性神と考えられていたから、古代人にとって共通した感覚なのだろう。
 噴煙の色は白くこの噴火がデーサイト質のものと分かる。北海道東部の大雪・知床から千島列島、カムチャッカは一連の火山帯。北方領土の国後や択捉の衛星写真や地形図を見ると無数のカルデラ湖が続いている。これらは数万年から数10万年前には活発に活動していたが、その後氷河によって山体は削り取られ、火口だけが残った跡。しかし何故両端のカムチャッカと北海道の山だけが、生き残ったのか?。
(22/05/29)

 西ノ島新島の火山放出物(軽石、スコリア、火山灰)がとうとう相模湾までやってきました。漁業はじめいろんな面に被害を与えているようですが、この手の火山放出物はいずれ必ず海底・・・あるいは湖底・・・に沈みます。それに少々時間・・・おそらく数年・・・が掛かるだけです。その証拠は日本列島各地の海成や湖沼成地層の中に、堆積物として保存されているからです。今回の噴火で明らかになったことは、仮に地層中に火山放出物が見つかったとして、それがその場所で降下したとは限らないということだ。但しこれは外洋に連なっている海洋だけで、内陸の湖沼には適用できない。
 又デーサイト質火山放出物は海上に降下した後、海流に乗って2000qあるいはそれ以上の距離を移動するということだ。つまり海洋地殻の地層特に付加体で、酸性火山放出物を見つけても、その起源はとんでもない遠く、極端には地球を一周してやっとそこにたどり着いたものかもしれないのである。
 西南日本外帯四万十累帯には断片的に酸性凝灰岩が分布する。この起源は不明だ。四万十帯は今では白亜紀というのが定説である。ジュラ紀から白亜紀にかけての地球は、既にテチス海は消滅し、ゴンドワナ大陸の東と南には太平洋、インド洋がひろがり、その中をインド亜大陸が北上、南ではオーストラリア、スマトラが東に移動している。
 それぞれはプレートに乗って移動している。プレート境界には今の伊豆マリアナ列島と同じ火山島列が出来ているはずである。そこから発生した酸性の火山放出物が四万十帯中の凝灰岩の起源かもしれない。そう考えれば、小さな露頭で見る僅かな岩石も、結構様々な経緯をたどっていると考えられるのだ。
(21/12/15)

 インドネシアスメル山の夜景。赤い灯は溶岩です。これが崩れると大火砕流の発生です。30年ほど前の雲仙普賢岳の崩壊がそれです。富士山だって何時こんなことになるか分からない。それに比べ日本の政府や静岡県、山梨県、トヨタに富士急は鈍感。これに比べれば文通費」などどうでもよい話だ。
(21/12/08)

昨日ジャワ島最高峰のスメル山が噴火。どの程度の規模になるか未だ分かりませんが、日本の新島(玄武岩)と異なりデーサイト質の噴火だから、被害は相当広範囲に及ぶ。世界は一時的に低温化し、結果として穀物価格の上昇が懸念される。これは原油不足より深刻だ、。
 スメル山とはバラモン教で世界の中心にそびえる高山で、ヒマラヤ山のこととされる。バラモン教は後にヒンズー教に吸収されるので、この地域がかつてヒンズー文化圏だったことを示す。その他ジャワ特有の影絵だとか、踊りににもヒンズー文化が色濃く残っている。表向いてはイスラムだが、家に帰るとヒンズーの神々を祈るてな風習は今も残ってるだろう。日本でも仏教と神道が同居しているのと同じようなものだ。
 なお日本ではとんでもない計画が進行している。それはトヨタによる富士山直下の巨大IT都市計画である。富士山は今だ字熱活動が続くれっきとした活火山。何時どこで噴火しても不思議ではないということだ。富士山南部のどこかが噴火し火砕流が発生すれば、あんな人工都市など一ころだ。宝永火山のような、あんな小さな噴火でも江戸を含む大騒ぎになったのである。トヨタは何を考えているのか?誘致した静岡県は富士山の危険性をどのように認識しているのか?摩訶不思議。
(21/12/05)


ニーラゴンゴ山の山頂。画面中央の円形の穴が火口。そのすぐ下斜め右に溶岩が流れ出した跡が見えます。無論これが今回の噴出溶岩とは限りません。
(21/05/26)

 アフリカコンゴ、ニーラゴンゴ山とはどういう山かとGoogleEarthで眺めてみました。画面中央に小さく映っている円形の穴が火口です。ここから周辺に暗褐色の帯がアメーバ状に広がっているのが見えますが、これがこれまで噴出した溶岩です。かなり最近に活動が活発化したことが分かります。
 画面右端と火山との中間に、縦(N-S)方向に細い線が見えますが、これは現地では川か崖になっているはずです。おそらくアフリカ大地溝帯の地表面トレースでしょう。
'(21/05/25)


 アフリカコンゴ民主共和国の首都ゴマに迫った、ニーラコンゴ火山溶岩の先端部。溶岩の性質はハワイと同じ玄武岩です。アフリカのような内陸で玄武岩とは面妖な、と思い本日GoogleEarthで見てみると、この火山はアフリカ大地溝帯の端っこに位置している。つまり今まさにプレートが引き裂かれている場所。です。ハワイも同じくプレート拡大軸にあるから、同じような火山活動が起こる。
 アフリカ南部はこういう噴火を繰り返しながら、いずれ東西二つにわかれていきます。

(21/05/24)

    これはカリブ海セントビンセント島の噴火による降下火山灰。色が白く、粒子が細かいことからこの噴火はデーサイト(石英安山岩ー流紋岩)質の火山活動によるものと判定されます。日本では30年程前の雲仙普賢岳噴火ににたもので、大変危険です。住民の早期避難が必要です。
 さてこのような噴火は予知できるでしょうか?今のところ事前に十分な調査と計測を行っていれば、かなりの程度で可能です。しかしそれには多大のの経費と人員が必要です。火山にはそれぞれ個性があって、ある道具を与えれば、それで誰でも予知できるわけではない。長期にわたる人員育成が必要です。金さえ出せば直ぐに何でも出来るものではない。それを一番さぼっているのが我が日本国、特に文部科学省です。筆者自身は赤外線波長のドップラー効果を利用して、人工衛星で観測できると考えていますが、どうでしょうか。
(21/04/12)
    アイスランドで起こった溶岩の噴出。ここは大西洋中央海嶺(MAR)の真上でプレートの生産地。だからマグマの噴出が起こって不思議ではない。
 問題は大勢の見物人が溶岩流の側に集まっても安全か、ということです。安全かどうかは微妙です。海洋プレートの湧き出しだから無論溶岩は玄武岩。大陸性の安山岩や流紋岩に比べれば遥かに安全です。しかしそれは相対的なもので、例えば下流に池のような水があれば、水蒸気爆発を起こす可能性はある。この場合は安全とは言えません。
(21/04/05)
   昨日噴火したメキシコのポポカテペトル山。噴煙から見ると流紋岩〜石英安山岩質の活動。大変危険な活動です。未だ噴煙だけなので本格噴火に至っていない。噴煙が今後も続くと、一時的な寒冷化が2〜3年程続く。そうなるとウクライナやロシア、カナダ、アメリカの穀物が打撃を受け、穀物相場が値上がりする可能性がある。おそらく、世界のアグリ企業はそれを狙って動いているでしょう。これが応用火山学の一面です。
(19/10/22)
    昨日小噴火を起こした浅間山。中央噴火口の様子が非常に綺麗に映っているのでコピーしておきました。噴煙が白いのはこれが水蒸気だからでしょう。
今後の活動については、私は火山の専門家ではないのでわかりません。今のところはあまり大したことはないでしょう。しかし地下でマグマが少しずつ活動を活発化しているのは間違いなさそうだ。水蒸気爆発の可能性はゼロではないでしょう。
(19/08/08)
   先日インドネシアで起こった津波の原因とされるクラカトア島の噴火。この島は19世紀末に全島を吹きとばす大噴火を起こした。流紋石英安山岩質の噴火で、筆者が三回生の一回目の雑誌会(英語論文購読授業・・・筆者は結構この成績は良かった)の教材だった。
 噴火形態としては最強レベル。
 なお日本でこの種の火山噴火による津波災害は、18世紀末の雲仙普賢岳の噴火と火砕流による、対岸肥後の災害が有名です。今この種の災害の危険が考えられるのは、鹿児島県桜島の噴火でしょう。
(18/12/25)
 
 
  昨日から始まった大西洋ガラパゴス島の噴火。ハワイキラウエア火山と同じ玄武岩質の活動です。大陸を挟んで、ほぼ同時に地球の表と裏で、火山活動が始まったことが興味深い。これは筆者が唱える地球膨張説の証拠です。誕生以来45億年、地球はまだまだ若いということです。
(18/06/29)
    グアテマラ、フェゴ火山の噴火。噴煙からデーサイト質噴火と思われます。標高は3763mで、マグマの性質も、山体規模も富士山によく似ている。富士山噴火対策のためには、この噴火をよく研究する必要があるでしょう。(18/6/04)
    海にそそぐキラウェア火山溶岩。白い噴煙は水蒸気。海水と反応して有毒ガスを出すと云われますが、どんなガスでしょうか?海水中のHClが急速に1000数100゜まで加熱されると、塩素ガスを出す可能性はあります。
 この下でハイアロクラスタイトや枕状溶岩などの急冷火山岩が生産されているわけです。
   これはハワイキラウェア火山の噴火で生じた、直線状亀裂からの溶岩の噴出です。火成岩脈の形成過程を知る上で興味深い。

 では何故直線状の亀裂が出来るのでしょうか?これはマグマの上昇に伴う下からの圧力と、マグマの熱による地殻の熱膨張・・・地殻が拡大しようとする・・・から発生する、水平方向の引っ張り応力によるものと考えられます。
(18/05/05)


昨日火砕流を発生した新燃岳。火砕流が発生したことや、噴煙の色(大部分は水蒸気と思われます)から見て、活動は次第に沈静化していくのではないか」思います。
(18/03/25)


 更に噴火が拡大する霧島連峰新燃岳(時事通信)。中央の噴煙下に溶岩ドームが盛り上がっているのが分かります。ドーム中心部からやや左下に白くなっているところが溶岩の中心部。色から判断すると表面温度は少なくとも1300℃以上、内部では1500〜2000℃ぐらいにはなっていると思われます。正確には赤外線センサーかなにかが必要。
(18/03/10)

 霧島連峰新燃岳で、本日生じた噴火(毎日新聞)。火山噴火を直上から捉えた写真は珍しいので保存しておきました。噴煙の直下、火口のほぼ中心に赤く見えるのが溶岩。色から見ると表面温度は800℃ぐらいか。なお大変危険な噴火なので、例えヘリでも近づかない方がよい。何時大爆発を起こすか分からない。噴火を起こすと、熱で猛烈な上昇気流が発生する。それに巻き込まれるとヘリぐらいではイチコロだ。
(18/03/09)

 白根山の噴火騒ぎで、すっかり影が薄くなったアラスカ沖M8.2の地震。それ以後の報道がないので、日本に達するようなつなみはなかったようだ。しかし先月に日本の地震予知連絡会は千島沖からアリューシャン沖にかけての地震発生域を示し、警戒を呼び掛けている。その矢先の地震だから、予知連もびっくりだろう。
 それはともかく白根山の噴火。但し規模は小さくあの程度では噴火とは言えない。噴煙の状態から見ると安山岩質の活動と思われます(これがデーサイト質なら、あの程度では済まない)。安山岩の場合、噴煙は重くデーサイトのように上空高くに舞い上がらないから、地表を這って下るようになる。これがいわゆる火山サージである。玄武岩はもっと重く、大量の溶岩を伴う。その代わり噴石の量は少ない。このように火山マグマの性質によって爆発の仕方が異なるから、避難や対処方法も変わってくる。登山者や近郊自治体は、この性質の違い*をよく認識すべきだ。
 日本には百何十という活火山があり、それは火山情報として公開されている(「火山情報」で検索すれば出てくる)。皆さんも火山地帯に観光に行くときは、是非ともこれを参考いしてください。
 これは中学の理科、高校地学で教えておくべきである。
(18/01/25)

昨日噴火したバリ島アグン山。噴煙の状況から察すると石英安山岩質の活動と考えられます。日本では雲仙普賢岳のようなもの。日本の火山はかなり老朽化が進んでいますが(だから温泉が多い)、インドネシアやフィリピンの火山は若いので、大爆発を起こすことがある。そうなると地球は数年にわたって寒冷化するので農産物の値上がりが期待できます。おそらくシカゴでは値動きが始まっているでしょう。北朝鮮農業は大打撃を受けますから半島情勢の緊張は高まるでしょう。
(17/11/27)


 桜島噴火の危険度がレベル4まで上がっています。昔々、三回生の地質調査法実習(フィールドは有馬層群だった)で、担当の教官が「何故か火山の噴火は東斜面で起こるのだよ、ワッハッハ」と云っていたのを思い出します。。そういえば雲仙普賢岳も東斜面だった。 何故東斜面になるのかは判りませんが、老後を地方で過ごそうと、火山の傍に土地や家を買ったりするときは、ちょっと気をつけておいたほうが良いでしょう。この説に従えば、川内原発は、火山活動には安全と云えます。
(15/08/18)

昨日噴火したインドネシアスマトラ島のシナブン火山。噴煙の色から見て、昨年御岳や本年口の伊良部島と同じ石英安山岩質の噴火と判ります。左の斜面を流下する噴煙は火砕流でしょう。
 スマトラといえば、昔ある会社に入社したところ、社内があまりにも乱雑なので大掃除。不必要な図面書類は全て捨てろと命令した。ところがその中にあるダムの地質断面図があった。ワタクシはそれを一目見て「こんなダムは水は貯まらん。誰がこんなダムを計画したのだ」とつぶやいたところ、ある社員に「それはチラタです」とササヤカラれた。チラタとは関電が政府融資を受けてスマトラに作ろうとしたダム。その後あれこれあってチラタは出来たが、本当に水は貯まったでしょうか?
(15/06/07)

日本列島とそれを取り巻く環太平洋地域の火山活動は、おおよそ2000万〜3000万年サイクルで活発化する。現在日本の火山活動が活発化したと云われるが、最も最近では数10万年前から活発化し、1〜2万年前にひとつのピークを向かえた。これは主に安山岩〜石英安山岩質の活動である。2000万年前の中新世という時代では、主に西日本を中心に安山岩質の活動が大きかった。
 更にその3000万年前の古第三紀(5000万年前)では、これも西日本を中心に流紋岩質の活動があった。これは兵庫県中部から岡山県南部にかけて顕著だが、広島県でも山陽自動車道沿いに流紋岩脈がおよそ数qに渉って白亜紀花崗岩に貫入している。これは少なくとも中国地方には莫大な火山活動があった証拠である。
 更にそれから2000万年前の白亜紀後期には環太平洋地域全体に莫大な流紋石英安山岩質の活動があった。これは西日本では濃飛流紋岩、湖東流紋岩、有馬層群という名で呼ばれる酸性火山岩類である。現在話題になっている噴火など、そういう超長期周期お火山活動の中の短周期活動の一つに過ぎない。
 最近マスコミ筋でよく言われるのは日本列島の火山活動の活発化である。これに対して、火山学者からはそうではないという意見が表明される。問題は一般人の感覚だ。福島第一原発事故でも、専門家達はこれは大丈夫だコントロールされている、と楽観論を述べていた。ところが現実は未だに汚染水の流出は止まらない。火山も同じで、幾ら専門家が「これが常態だ」と云っても、一般ピープルはなかなか納得しないし、不安感に付け込んで売り上げを伸ばそうというマスコミや、怪しい宗教団体は引けもきらない。
 大事なことは、日本列島が上に述べた環太平洋地域での超長期的火山活動サイクルの上で、どういう位置にあるかを認識すべきことでである。これらの超長期的火山活動サイクルでの火山活動期はおそらく数10万〜100数10万年単位で活動が継続するから、今後もっとシビアな火山活動が、これまでの火山地帯とは異なる地域で起こる可能性がある。大体判りそうな気がするが止めて置きましょう。
(15/05/30)

 連日続く箱根大涌谷噴気現象。面白いのはマスコミが調査官が「蒸気が増えている。音も大きくなっていると語った」と報道している点。この調査官は今度の事件で東京からやってきただけで、普段から大涌谷の噴気を見ているのでしょうか?おそらく県や地元の説明を、そのまま鸚鵡返しに云っているだけではなかろうか?たいして根拠はない。
 今のところ客観的データとしては、地震発生回数と地盤隆起だけという測地学的データのみ。地下のダイレクトな情報はない。噴気孔でのガス圧や温度測定は、それほど難しいことではない。これに広域的地下比抵抗観測を組み合わせれば、より具体的な火山動態観測が可能なのである。これぐらいのこと、何故これまでやってこなかったのか?御岳のケースもそうだが、日本火山学はマダマダ発展途上段階だ。技術の進歩に学者が追いついていってないのだろう。
(15/05/10)

 箱根火山の警戒度が1ランク上がってレベル2になったので、箱根の観光客は激減、旅館キャンセルが続出。これに関連してか、防災相の山谷とか国交相の太田が旅行業界に対し「冷静な対応を」を呼びかけ,、しかも業界にはわざわざ「正確な情報を提供するよう」と文書で要請した。と言うことは、旅行業者が発信した情報は不正確だということか?
 冷静な対応とか正確な情報とはどういうことでしょうか?業界には政府(=気象庁)が発表した以上の情報はない。業界は政府発表を正確な情報と思う。つまり情報の正確さは政府が責任を持たなくてはならない。それとも政府発表情報に不正確なものがあるとでも云うのでしょうか?
 ドッチミチキャンセル増大で商売上がったりになった地元観光業者が、政府与党に何とかしてくれとねじ込んだ結果だ。自民支持圧力団体の要求にはなんでもハイハイのアベ内閣は、早速関係閣僚に指示する。「上手くやったれや」だ。これの言わんとすることは、顧客から相談を受けたとき、「大丈夫ですよ、安心してお泊りください」と返事せよということだ。しかし何かもしものことが起こって被害がでれば、一番先に・・・マスコミによって・・・攻撃されるのは旅行業者だ。最悪訴訟に巻き込まれかねない。と言うことで宿泊客を断る旅行業者の方が冷静なのである。
 それに引き換え、地元観光業者の要求にうろたえて、いい加減なことを云う政府の方が冷静さを欠いている。山谷も太田も顔を見ればいかに馬鹿かがよく判る。政府は気象庁による正確な情報を流せばよい。更に「それによって箱根に宿泊するかどうかは観光客自身の自己責任*だ」と言うべきだ。
*自己責任という言葉にはアメリカと日本とでは若干ニュアンスが異なると思われる。アメリカの場合、中間に契約という概念が入る。宿泊中に噴火が生じたとき、それに対する契約がなければ自己責任にはならない。
(15/05/08

 さて最近の話題は箱根大涌谷の噴気地震現象。連日テレビのニュースショーでやっている。テレビでは「大涌谷の噴気が次第に大きくなっている様子が見えます」なんてやっているが、私にはどう違っているのかさっぱり判らない。これなど、かつてのNHKやらせ疑惑と同じ過剰演出。しかし、自然の噴気に演技指導も出来ずヤラセも出来ないから、アナウンサーがそれらしく演技し、出演者もウンウンとうなずかなくてはならないのだ。
 山勘的に云うと、箱根の噴気は数ヶ月続いてそのうち終わり。マスコミ関係者は今年の秋にはみんな忘れているだろう。
(15/05/07)

 蔵王火口湖の白濁とか、吾妻山頂での硫化水素濃度上昇で、観光客キャンセルが相次いだので、地元観光業者の要請で、山形県知事が安全宣伝に努めると宣言。大丈夫ですか?蔵王・吾妻山は山形県のものではなく、宮城県・福島県とも県境を接している。両県との根回しは大丈夫ですか?
 要点は安全宣言ではなく、安全宣伝だ。これにウカウカ乗るアホがどれだけいるでしょうか?乗ってもも構わないが、もし何らかの災害が発生すれば、山形県には莫大な訴訟債務が発生します。業者(=選挙支持者)の要求に負けたあまりにも安易な決定。所詮東北人とはこの程度だよ。
(15/05/03)

   昨日チリで噴火したチリ南部のカルプコ火山。噴煙の色は赤く見えますが、これは噴火が夕方で夕日があたっているため。噴火の様子からは、安山岩〜石英安山岩質タイプの噴火と思われます。大変危険な噴火です。昨年の御岳噴火といい、日本を含む環太平洋火山帯の火山活動が活発化している可能性が考えられます。
(15/04/23)
   昼間のカルブコ火山。噴煙は白くなっており、ワタクシが云ったとおりデーサイト(石英安山岩)質の噴火ということが判ります。
(15/04/24)

[秋田県乳頭温泉の場合]
秋田乳頭温泉事故についてもう一言。本日の報道によれば、事故現場は雪を掘った窪地。作業員はガスマスクは装着していなかった。但しガスマスクやガス検知器は、事務所の机や車の中に置いてあった。と言うことは作業員は防備装置を持って現場まで行ったが、状況が何時もと変わらないと判断して、装着せずに窪地に入ったところ、ガス中毒死したと考えられる。
 このガスが硫化水素なら強い異臭を感じるので、ガスマスクを装着しないはずはない。しかし2酸化炭素なら臭いがないから、滞留していても気がつかない。何時もどおりの作業をした。こういう場合の措置をマニュアルに、どう書いてあったかは判らない。つまり作業員が必ずしもマニュアルに違反していたかどうかは判らない。ポイントはこの温泉関係者が火山性ガスに関する知識がやや乏しかったということだ。この点は裁判になったときに問題になる。つまり死因が硫化水素中毒であれば、作業員の過失となり遺族は賠償請求権を失う。逆に2酸化炭素中毒死でこれの対策がマニュアルに無ければ、温泉管理者に対し損害賠償請求が出来るし、業務上過失致死で立件できる。以上。
(15/03/20)

本日いきなり秋田県乳頭温泉でで従業員二人が倒れ更に調査に入った県職員も倒れた。筆者の勘では間違いなく二酸化炭素中毒です。その後の報道では硫化水素中毒が有力視されているが、未だ本当のところは判らない。筆者もニュースで知った時硫化水素を疑ったが、状況から二酸化炭素の可能性が大と判断した。
 死亡したのは温泉関係者3名。まず二人が倒れそれを救援に行った一人も倒れた。硫化水素なら強い異臭がするので、温泉関係者なら近づかないか、防毒マスクを着用するはずである。又酸欠死だから死に至るまでに時間が懸かる。一方二酸化炭素は無色無臭だから、滞留しているかどうかは判らない。濃度が16%以上になれば2秒で死に到る。殆ど即死だ。事故の状況をからは二酸化炭素中毒の可能性の方が高いのです。
 一般には火山では硫黄の析出があったり、独特の温泉臭から、観光客や関係者は硫化水素の方を重視しがちだが、二酸化炭素にも注意を払うべきである。火山での二酸化炭素中毒死といえば、10数年前の自衛隊八甲田山演習場での二酸化炭素中毒死事故があります。
(15/03/18)

 

珍しく私のHPに美人が登場しましたが、目的はそれではなく、背後の桜島噴火(08/17)です。これを三年前の東北太平洋沖地震とか、次の南海トラフ地震と関連付けたがる人がいますが、それは間違いです。三年前には霧島火山で噴火が起きています。それとの関連のほうが大きいでしょう。この次は奄美、トカラ列島当たりの海底噴火でしょうか?
 なお日本の活火山は老朽化が進んでいるので、フィリピンやインドネシアの様な爆発的な噴火をする可能性は低い(富士山は別)。その替わり雲仙普賢岳の時のように、長期間に渉ってダラダラ動く。また、マグマが石英安山岩質なので、噴火規模は小さいと云っても油断は禁物。近づいてはならない。(13/08/19) 

熊本で除霊と称する滝行死亡事件。ひょっとして、これは殺人ではなく、炭酸ガス中毒死の可能性もある。
(11/09/27)

  八甲田山系酸ヶ湯温泉近くで、中学生を含む住民が死亡。火山性ガス中毒が疑われている。今のところ硫黄臭が強かったため硫化水素ガス中毒の可能性が高いようですが、八甲田では同時に二酸化炭素も噴出する。数年前、自衛隊員が演習中に二酸化炭素中毒死する事故が起こっている。何れかは剖検で解明される。血液が変色していれば硫化水素中毒、何の異常も無ければ二酸化炭素中毒です。
 硫化水素も二酸化炭素も温室効果ガスです。日本に於ける地熱発電は、決して環境に問題が無いとは云えないのです。
(10/06/20)

 ついでに同日神奈川県の某交番に、ポリ容器に収めた、なにやら不可思議な2種類の液体と硫化水素発生の脅迫状が置いてあった。下手すると大惨事とマスコミは大騒ぎ。
 液体の中身は顕かにされていないが、一つは硫酸カルシウムのような硫化物の水溶液、もう一つは何らかの酸化剤だろう。酸化剤として一般に用いられるのは、塩酸か過酸化水素だが、いずれも腐食性が強いのでポリ容器では無理,。通常はガラス瓶に封入する。過酸化水素は常温で気化し爆発の危険が大きい。だからどちらも水で薄めたものと考えられる。従って両者を混合しても、硫化水素は発生しないか、しても極少量。せいぜいプクプクと泡が出る程度。そんなもの団扇で扇げばイチコロだ。それに反応にもの凄く時間がかかる。ヒーターで加熱して水分を跳ばして反応を加速する方法もあるが、これも時間が懸かって、テロにはならない。
 犯人はそんなことも知らない化学のシロートか、マスコミが騒ぐのを見て喜ぶ愉快犯。
 マスコミも騒ぐだけでなく、何処かで反応のプロセスをキチンと説明した方がよい。
(09/11/07)


 東京の中学校で、硫化水素をつくるため、鉄と硫黄と塩酸を混ぜる理科の実験で、生徒の気分が悪くなったと大騒ぎ。随分大胆な実験をヤルじゃないか。これぐらいのことをやらなくては理科の実験とは云えない。地質調査だって命の保障はないのだから。
 さてこの実験、地下に何故硫化水素泉が出来るか(実はワタクシが今抱えているプロジェクトにも関わりがある)、というより地球の太古の大気を再現するという実験でもある。大変重要な実験なのだ。但し自然界では、酸化剤として塩酸は無いので別のファクターが必要。それが何かが課題。
(09/11/06)

 温泉から出るのは何も熱水だけではありません。同時にガスも出てきます。このガスというのが結構危険で、場合によっては死に至ることもあり得ます。温泉から出てくるガスにはどういう種類があるかというと
 1)水蒸気(H20)
 2)硫化水素(H2S)
 3)2酸化炭素(CO2)
 4)窒素(N2)
 5)メタン(CH4)
 そしてまれに水銀やラドンガスがあります。これらの内2)から4)は全て致死性有毒ガスです。又、これらはみんな火山性ガスと共通しています。1)2)は比較的若い火山、3)4)は老朽化した火山に現れます。しかし、3)は火山とは全く関係のない非火山性温泉にも現れます。有馬温泉はその典型ですが、実は最近西日本で掘削された新しい温泉の大部分もこのタイプに属するのです。
 ではこれらのガスがどのように危険なのか、2)3)を例にして説明してみましょう。
〇硫化水素(H2S)
 硫化水素を吸引すると、肺の中の血液中ヘモグロビン(酸化第2鉄 Fe2O3)と反応し、硫化鉄(Fe2S)を作る。このとき、血液中の酸素を消費する。硫化水素による死は急激な血液中の酸素消費による酸欠死である。硫化鉄は還元鉄なので色が黒くなる。血液がどす黒く変色するため硫化水素中毒死と判別出来る。
 東北、北海道、九州などの活火山に伴う著名な温泉は概ねこれを伴う。自噴泉は特に危険だが、動力泉でもガスの管理を怠ればガスの滞留→中毒死という事故が全く無いわけではない。くれぐれもガスが噴出している火口付近には近づかないように。なお、著名な火山ではガス噴出情報を流し、危険個所には観光客の立ち入りも制限しているので、その指示に従っておれば問題はありません。
〇2酸化炭素(CO2)
 2酸化炭素は呼吸中枢に直接作用する。これによる中毒死は呼吸麻痺による窒息死である。2酸化炭素は不活性だから硫化水素と異なり血液成分の変化を伴わない。従って、見かけでは普通の心臓麻痺や疲労凍死と全く区別がつかない。
 2酸化炭素中毒の危険性を示すある例を紹介しておきましょう。
 今から30年ほど前、中部アフリカはカメルーンのある村で、住民400人ほどが一斉に死亡しているという事故が発生した。時期が時期だけに「すわ国際的陰謀か?」などという噂も飛んだが、その後国連が調査に入り、次のような結論を発表した。
(1)村の背後に数万年前に活動を停止した死火山があった。村はこの死火山の中腹にあった。
(2)死火山の山頂は火口湖となっている。この火口湖は水深は1000数100mという深さで、数100m以深では0゜C近い低温になっていた。
(3)湖水の2酸化炭素濃度が高く、低水温域ではハイドレート化している。湖水の2酸化炭素濃度が高いと言うことは、この火山が老朽化していた死火山であることと密接に関係している。おそらくこの湖水は周囲から常時2酸化炭素の供給を受けていたと考えられる。
(4)何らかの偶然で突如湖水の水温が上がり、ハイドレート化していた2酸化炭素が水面上に吹き出す。
(5)その後二つの不幸が重なり合った。
 @当夜は無風状態だった。
 A2酸化炭素ガスは空気より重いから、山腹に沿って這い下る。この炭酸ガス塊の流下経路にくだんの村があった。
 この現象は何も特別不思議なことではありません。深い火口湖を有する老朽化した死火山では、何処でも起こりうることなのです。日本では十和田湖、田沢湖、洞爺湖など候補は幾らでもあります。

 日本では他に有馬温泉に「鳥地獄」・「虫地獄」という名所があります。鳥や虫がここに近づくと死んでしまうから、こういう名前がついたのでしょう。有馬温泉の外れの道沿い斜面で浅い窪地になっており、岩石は白く変色し炭酸カルシウムの沈着が見られます。かつてはここから高濃度の2酸化炭素が噴出し、それが窪地に滞留し、その中に入った鳥や虫が急性2酸化炭素中毒で死んでしまったのでしょう。江戸時代有馬温泉を舞台にした山東京伝作「怪談有馬の湯」という話がある。ここでは最後に悪女有明が有馬の毒水に墜ちて死んでしまう、これが「有明湯」の語源であるという話です。有馬の毒水とは「鳥地獄」・「虫地獄」をヒントにしたアイデアでしょう。かつては有馬町内のあちこちでガスが吹き出していたのかもしれません。今では開発が進み、温泉の周りには道路が整備され、バブル期は温泉ブームでホテル・マンションの増設ラッシュ、更に温泉を掘りまくるから、町中隙間だらけ孔だらけ。ガスが滞留するどころかみんな空中に拡散してしまうので、有馬の名物は無くなってしまった。従って、ガス中毒に対する安全性は高くなりましたが、地下のガス圧が低下したため、温泉湧出量減少という二次被害がでています。
 そういえば、数年前八甲田山で訓練中の陸上自衛隊員が、2酸化炭素中毒で死亡したという事故がありました。これも山腹の窪地に隊員が待機していたところ、窪地に滞留していた2酸化炭素に巻き込まれたためと考えられます。従来、凍死・疲労死とされていた死亡事故にも、本当は2酸化炭素中毒が紛れこんでいたかもしれません。火山の近くに行くときは、出来るだけ尾根に登山路をとり(尾根なら風の通り道になっている)、窪地・凹地・狭い谷底を避けることが賢明です。

 では死んだ村民に苦痛があったでしょうか?全く無かったと言っていいでしょう。硫化水素中毒の場合は酸欠死だから、死にいたるまで意識があります。従って苦痛・苦悶が発生します・・・・インターネット中のある記事では、苦痛は無いとしていますが、そんなことはない。ところが、2酸化炭素はいきなり脳の呼吸中枢を麻痺させるから苦痛など発生しません。
 このような事故は防げないでしょうか?簡単に防げます。硫化水素も2酸化炭素も窒素も、空気に流れ・・・つまり風・・・があれば直ぐに拡散してしまう。つまり常時風が発生する条件を作っておけば問題は無くなる。逆に風を通さない条件・・・密閉環境・・・を作ってそれを長時間放置すれば、ガスの滞留が起こりガス中毒事故を起こすのです。昨年起こった渋谷シエスパ天然ガス爆発事故は、中毒ではないがメカニズムとしては似たようなものです。

硫化水素による自殺;
 最近話題になっている事件に、硫化水素中毒による自殺があります。これはある種の温泉入浴剤と、特定の洗剤を混ぜ硫化水素を作るものです。温泉入浴剤には、大きく(1)硫酸カルシウム(CaSO4)系と、(2)炭酸カルシウム(CaCO3)系の2種類があります。(1)から硫化水素を作るのはそれほど難しくはなく、高校1・2年生程度の化学の知識があれば可能でしょう。材料も極ありふれたもので十分です。但し硫化水素を効率良く作るためのテクニックは必要。商品としては「草津の湯」とか東北・北海道・九州の著名温泉の名を持つものは概ねこのタイプと考えられます。
 (2)の場合でも同じ様な反応で2酸化炭素ガスが作れます。但し反応剤は違う。どちらが危険かというと、上で述べた事例から2酸化炭素ガスの方が遙かに危険と云えます。硫化水素は臭いがあるから、臭いがすれば直ぐに窓を開け換気扇を回せば大丈夫です。しかし、2酸化炭素ガスは臭いも何もないので、全く気づくことができない。なお、硫化水素も2酸化炭素も比重は空気より大きいので、反応地点より必ず下に降りてくる。ホテルやマンションでは下の階ほど危険になる。行政や警察はこの点に気をつけて対策すべきである。
 対策としてはこれらの入浴剤の製造販売を禁止し、一刻も早く店頭から回収することが望まれるが、硫化水素や2酸化炭素ガスを作る材料は何も特別なものではない。その気になれば幾らでも他から調達出来ることが厄介なのである。本人が死ぬのは勝手だが周りが迷惑する。対象ガス用のセンサー(酸素濃度計でも良い)があるから、それを室内に設置し酸素濃度が一定値以下になれば警告音をだすとか、強制換気するようなシステムを導入する事によってガスの流動を防ぐことは可能です。但しコストの問題はあります。一番良いのは一晩中窓を開けておくとか、換気扇を回しっぱなしにしておくことでしょう。

硫化水素如きにおそれるな!】
 硫化水素騒ぎもとうとう自殺から強盗にまで発展しました。こんなインチキ強盗に驚いて金を払う人間がいるから頭に乗るのである。硫化水素などサリンに比べれば毒性は全く違う。まして素人が作った安物だ。純度も低く量も大したことはない。少々吸ったところで気分が悪くなる程度。相当長時間吸い続けなければ死ぬことはない。まず犯人が硫化水素をばらまいたとしよう。常温で気化するから*1硫化水素ガスが発生する。そのときは(出来れば濡れた)ハンカチか花粉症マスクで口や鼻を押さえ、団扇でも上着でも何でも良いから、手近にある風を起こせる物で犯人に向けて扇ぎかえせばよい。犯人の方が反対に硫化水素を吸って、目を回してひっくり返ってしまう。そのあと窓を開け、換気扇を回し、犯人のケツをひっぱたいて警察に突き出せば問題解決。液体硫化水素が残っておれば、石灰をまいて中和するか、水で洗えばよい。但しあとで眼をよく洗っておくこと。
  
^ *1この点について注釈
 新聞やテレビ報道によると、犯人はポリ容器に入れた液体状の硫化水素を振りかざして脅した、と云われる。筆者は一瞬、硫化水素は普通は気体だったはずだがそれは記憶違いで、常温で液体だったかなあ、と勘違いしてしまったのである。そこで後日理科年表で確認してみると、やはり硫化水素の沸点は-60.19゜C。記憶違いではなかった。もしこれが純粋の液化硫化水素なら、ポリ容器ではなく高圧ガス容器で運搬しなければならない(ポリ容器など簡単に爆発してしまう)。と言うことはこれはそんな上等の物ではなく、製造時に出来たガスを水に通して水に溶かした物か、反応剤によっては(例えばOH基を持つ物)製造時に水を作る物もあるから、それに溶けているかのどちらかである。いずれにしても、ポリ容器の蓋を開けても、常温ならぶくぶくと泡が立つ程度。もっと短時間に大量にガスを作りたければ別容器で加熱しなければならない(ポリ容器を直接加熱すると燃え出す。そうすると塩素ガスとダイオキシンをだすからこの方がよっぽど危険)。そんな悠長なことで強盗なんて出来ると思いますか?どのみちろくでもない安物なのだ。こんなものにおびえてどうするのかね。但し、硫化水素ガスは引火性があるから、うっかりタバコを吸ったりすると爆発するかもしれないが、まあ大したことはない。
 それよりも滑稽なのは警察の対応。昨日の新聞に、大阪府警が硫化水素強盗対策訓練の様子が報道されていたが、これがなんと全身防備服着用。サリンやVXガスなら、呼吸だけでなく皮膚からも吸収されるから、全身防護タイプも必要だが、硫化水素はそのようなことはない。致死量近くの濃度でも通常の防毒マスクで構わない。ましてこのようなインチキまがい物に対しては花粉用マスクでも十分だ。警察がこのような大げさな対応をとるから、マスコミが騒ぎ、一般ピープルが不必要におびえるのである。
(08/05/13)

 そもそも毒ガスの効果は風向きで正反対になる。第一次世界大戦で、1916年か7年。第何次かのイープルの会戦。イギリス軍は毒ガス攻撃を仕掛けてドイツ軍防衛戦を突破し、ドイツ軍の背後に回ろうという作戦をたてた。時期は6月頃、ドーバー海峡方面からベルギー方面に季節風が吹く季節である。作戦前夜、軍の気象部長も間違いなしと太鼓判。総司令官のヘイグ大将は自信満々で作戦開始を発令した。ところが作戦開始後まもなく、なんと突然風向きが変わり、東から吹き付けてくるではないか。ドイツ軍に向かって放出していた毒ガスが、自分の方に向かった来たのである。イギリス軍部隊のほうが返って大混乱。おまけにドイツ軍の逆襲にあって、作戦はあえなく失敗。
 このように毒ガスというものは、風向き加減で攻守処を返るのである。それを利用すれが逆襲は十分可能。風向きさえコントロールすればなんらおそれることはないのだ。ホテルで硫化水素自殺に遭遇したときも同様の手順で問題はない。行政も警察もマスコミも、危険性を強調するだけでなく、@硫化水素など簡単に防げるということ、A正しい防御方法を一般に広めるべきである。(08/05/08) 

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