断層とは
活断層とは

 断層とは、地殻の中に生じた、割れ目の内、地層・岩盤に何らかの変位を与えているものです。しかし、どんな変位でも構わないわけではありません。ある程度の大きさを持つことが必要です。どのくらいの大きさなら、断層と云うのでしょうか。これには、特に明確な規定はありません。地質家の判定に任されるのです。しかし、それはあんまりにも勝手な話です。一般的には、地質図の作成に使う地形図で”マッパブル(表現可能)”と言うのが、一つの目安になります。

 地殻内に働く力のパターンによって、断層は大きく、次の3パターンに分類されます。 

種類 パターン 備考
横から見た状態 正断層
神戸層群の例
ここをクリック
引っ張り応力場で形成される。非常に希。
同上 逆断層 中央構造線
ここをクリック
圧縮応力場で形成される。
上から見た状態 横ずれ断層 根尾谷断層
ここをクリック
剪断応力場で形成される。場所によって、引っ張り応力と圧縮応力が作用する。日本、特に西日本の新しい断層は殆ど、このタイプ。

活断層とは 

4、活断層の範囲を40万年以前まで広げる。
 これはいきなり出てきた話しである。40万年の根拠は何か?丁寧な説明が必要である。言い出した規制委員会の嶋崎は、人間活動の高まり云々と訳の判らないことを云うが、全く説明になっていない。活断層が原発で問題になるのは、地震の発生確率である。これは地殻変動の活発さに関係する。地殻変動は人間活動とは何の関係もない。何の関係もないことを無理矢理くっつけることを「牽強付会或いはこじつけ」という。本来活断層の定義は、中新世以降のネオテクトニクスという時代における”その地域”の、地殻変動の状況から決められるべきである。 ここで”その地域”と地域を限定しているのは、地球は広い、従って地殻変動の状況も場所によって大きく異なっても当然だからである。例えばアフリカで起こっている現象を、そのまま日本に持ってきてもナンセンスである。
 地殻変動量は地盤隆起量で表すことが出来る。日本及び世界各地のネオテク時代の地殻変動量が求められている(下図の左)。これによると、アジア各地では100万年ぐらい前から隆起を始め、50〜60万年前ぐらいから活発化していることが判る。これを活断層期の始まりとしても良いのだが、これも曖昧である。近畿地方での地殻変動の様子を、もう少し詳しく表したのが右の図である。

 右の図を見ると、如何にも地殻変動はゆっくりと定常的に進んでいるように見える。もしそうなら兵庫県南部地震とか、東北太平洋沖地震など起きる筈がない。実際は地殻変動が活発な活動期と、安定な休止期が繰り返す。つまり、地殻変動は階段状に進む。その階段も等間隔にあるのではなく、間隔が短い時期(活動期)と長い時期(安定期)とが繰り返す。この変化がイベントである。右の図によると、大きく三つのイベントが読みとれる。第一は基盤岩の隆起が始まった時期で、これは大阪層群の層準ではアズキ火山灰の時代であり、約70〜80万年BP、第二は丘陵面の隆起が始まるMa8〜10イベントである。これは30〜40万年前BPである。第三は高位段丘面の始まりで、おおよそ20万年BPである。このイベントの前後が活動期で、その中間は休止期と考えられる。但し休止期と云っても、ズーット安定な訳ではなく、地震の発生間隔が活動期に比べ少ないということに過ぎない。
 さて、活断層の定義の中に「最近の時代に活動し、今後も再活動のおそれがある断層」というものがある。上の図で云えば、少なくとも近畿地方では最も新しい活動期とは約20万年BPとなり、従来の活断層の定義(17万年BP)とほぼ一致する。「いや、2O万年BPというのは、それほど精度の高い数字ではない、又他地域に共通するとは云えない。従って安全側に見て、倍の40万年を暫定値として採用する」というのであれば、それはそれなりに筋が通っているし、反対派を説得もできる。しかし、いきなりの副委員長判断で40万年BPとするのは、極めて乱暴であり非科学的である。又、活断層問題は単に原発だけでなく、一般都市開発にも関係する。例えば近畿地方の自治体では、活断層上の建築を規制する動きがある。また、事前の活断層の認定について訴訟に至ったケースもある。活断層問題は最早原子力規制委員会の独占物ではない。一方、原発規制は社会的影響力が大きい。上述の自治体規制で原子力規制委員会の決定を踏襲する可能性は大きい。従ってこの問題は原子力規制委員会だけでなく、関係学会(地質学会、応用地質学会、地形学連合、第四紀学会、土木学会、建築学会等)による十分な討議を経た上で、関係者(原子力ムラ住人の学者・企業だけでなく、国交省関連 一般実務エンジニアの意味)の納得了解を得る必要があると考える。
 
 しかし、何故嶋崎がいきなり根拠不明の40万年説を出したのか?何となく裏に東大内の理学系(地震研、物理)vs工学系(原子力、資源)の、予算人事を巡る対立・怨念があるように思われる。永年予算を牛耳ってきた工学系に対する理学系のまきかえしか?馬鹿馬鹿しいだろうが、これまで日本で国論を二分するような対立の陰には、しばしば東大内の抗争が関係していることが多い。原子炉を廃炉にする前に、東大を廃校にした方が良いかもしれない。
(13/01/25)


 兵庫県南部地震以来、「活断層」という言葉がおなじみになり、各種メデイアを通じてお茶の間にも入り込んできます。「断層」は地殻表層に於ける物理的実態ですが、「活断層」はあくまで学問上の概念です。概念は社会通念を反映して変化します。従って、「活断層」の意味も捉え方も、昔と今とではかなり変わってきています。「活断層」という概念が、始めて日本に登場したのは、確か1960何年かのロスアンゼルス地震以来ではなかったか、と思います。1965年に地震予知計画が発足し、その一環として活断層研究が全国規模で始まったわけです。その最初の成果が「日本の活断層(1970 東大出版会)」です。
1、活断層の定義
 元々の活断層の定義は「最近の時代に活動し、今後も活動の可能性のある断層」というものです。実は、これは同じことを云っています。我々は神様ではないから、過去に起こった出来事を調べることは出来る。しかし、将来の事など、判るわけはない。しかし、そう云ってしまうと身も蓋もないので、「最近活動した断層は」、「今後も活動する可能性が高いだろう」と読み替えるわけです。では、最近の時代とは、一体何時までのことでしょうか?活断層研究の当初では、「最近の時代」とは「人類が活動を始めた時代」で、いわゆる第四紀(現在では「人類紀」)という時代とされました。活断層研究が始まった1960年代では、それはおおよそ100万年前になります。だから活断層は、ざっと100万年以降に活動した形跡のある断層と云えます。ところが、その後人類学の進歩により、人類の起源は更に古くなり、1980年代には400万年前、今では700〜1000万年前というデータさえ出て来ています。これをそのまま使えば、活断層の幅は幾らでも広くなり、実際問題として非現実的になります。何故なら、活断層は人間活動が造ったものではないからです。
2、より現実的な定義
 筆者自身は、活断層とは次のように定義すれば良い、と考えています。即ち「活断層とは、現在の地形の形成に、直接に影響を与えている断層である」。実は、活断層の研究・調査は何よりも地形の分類のファクターが大きいのです。そもそも、日本では「活断層」という言葉自身、地形学者が造った言葉です。活断層とは、当に今活動している断層ですから、それが現在の地形に影響を及ぼしていないわけがない。なお、地質屋が使う”今”とは、概ね数万〜数10万年単位と思っていて下さい。従って、結局定義はもとに戻って、100万年前以降に活動した形跡のある断層、と言うことになります。
3、もっと現実的な定義
 過去数10万年以内に動いた形跡のある断層、と云われても普通の人にはピンと来ません。また、上で挙げた「現在の地形に直接的影響を与えた・・・」といっても、その判定基準はどうしても曖昧になり、個人差が出てくるのはやむを得ない。この際、疑わしきは罰す、という原則で判定すると、活断層の数はもの凄く沢山になってしまうのです。これらの断層を一々監視していられない。処で、活断層の何が問題になるかというと、今我々が住んでいる都市や住空間、都市インフラに対する影響です。これらの設備が出来たのはせいぜい過去数100年。将来考えても大したことはない。つまり、活断層の幅をそんなに広げても現実的意味はない、という発想が生まれてきます。2で定義された断層の中で、更に緊急度の高い断層を集中的に監視しておけばよい(言い換えれば地震対策予算を集中させればよい)、と言うわけです。この考え方で作成されたのが、阪神大震災後、出版された「大都市周辺活断層図」です。これについても色々異論があり(主に地質屋の方から)ますが、一般的にはこれをベースに考えて良いでしょう。


活断層と地盤


断層の調査法

温泉・地下水・地質構造探査をクリック


     温泉へ     TOPへ